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「ここは私だけの場所なの」家族に内緒でアパートを借りていた母。部屋の棚に並んでいた物を見て、背筋が凍った

  • 2026.11.5
「ここは私だけの場所なの」家族に内緒でアパートを借りていた母。部屋の棚に並んでいた物を見て、背筋が凍った

たまっていた家賃

20年ほど前のことです。

ある日、叔父から電話がありました。

「実は、お母さんがアパートを借りていてね。家賃が何か月分もたまっているんだ」

話を聞くと、母は家族に内緒でアパートを借りており、叔父がその保証人になっていたそうです。

滞納した家賃の支払いについて叔父に連絡が来たというのです。

「えっ、お母さんがアパートを借りてるんですか?」

「そうなんだよ。悪いけど、家賃の半分だけ負担してもらえないかな」

父も私も、そんな部屋があることさえ知りませんでした。

突然の話に戸惑いましたが、叔父も困っているようで、私はたまった家賃の半分を立て替えることにしました。

母にそのことを伝えると、「そうだったの。ありがとうね」と、いつものように笑っていました。

しかし、そのお金が返ってくることはありませんでした。

しばらくすると、母にはほかにも借金があることが分かりました。

しかも、今度は私にお金を貸してほしいと言ってきたのです。

「少しお金を貸してくれない?」

「この前の家賃だって、まだ返してもらってないよ」

「分かってる。今度はちゃんと返すから。家族なんだし、助けてほしいの」

正直、迷いました。家賃も返してもらっていないのに、また貸していいのだろうかと思ったのです。

それでも母の頼みを断りきれず、私は100万円を貸しました。

ところが、そのお金も返ってきませんでした。

母はどうして家族に黙ってアパートを借りたのでしょうか。

何のために使っているのかも分かりません。

せめて一度、自分の目で確かめようと思い、私は母に場所を聞いて訪ねることにしました。

壁ぎわの棚

昼過ぎ、教えられた場所へ行くと、そこには古いアパートがありました。

部屋のチャイムを押すと、母がドアを開けました。

私の顔を見ると、いつもと変わらない笑顔を浮かべます。

「ここは私だけの場所なの」

母はそう言って、うれしそうに笑いました。

「でも、お母さん。叔父さん、家賃のことでずいぶん困ってたんだよ」

「ああ、そのことね。もう払ってもらえたんでしょう?」

「私も半分払ったんだよ。まだ返してもらってないし…」

「そうだったわね」

母はそれ以上何も言わず、部屋に入るよう私を手招きしました。

あまり気にしていないような母の態度に、私は何とも言えない気持ちになりました。

部屋の中は思ったよりも片づいていました。壁ぎわには木の棚がひとつ置かれています。

その棚を見た瞬間、私は思わず足を止めました。

子どものころ、いつのまにか見当たらなくなった私のアルバム。

小学生のときに描いた家族の絵。

そして、父が昔、なくしたと言っていた腕時計。

どれもほこりひとつなく、きれいに並べられていたのです。

「これ、私のアルバムだよね?」

「そうよ。懐かしいでしょう」

「ずっとなくしたと思ってたんだけど…。お父さんの時計まであるし」

母は棚の前に立ち、アルバムの背をそっとなでました。

「家族の物は、私が持っていたほうが安心でしょ」

「でも、何も聞いてないよ。ずっと探してたんだよ?」

「だって、みんなすぐなくすんだもの」

母は悪気のない様子で、そう言いました。

私はそれ以上、何も言えませんでした。

家族がなくしたと思っていた物を、母はこうして大切に並べていたのです。なぜ黙って持ってきたのか、私には理解できませんでした。

その後、両親は離婚しました。

私が立て替えた家賃も、母に貸した100万円も、結局返ってくることはありませんでした。母とは、もう長いこと会っていません。

それでも今、家の中で物が見つからないたびに、私はあの部屋の棚を思い出してしまいます。

きれいに並んだアルバムの横には、まだ空いた場所があったのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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