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「偏差値47なら塾なんてムダだろ」 息子の夢を夫が一蹴した夏

  • 2026.11.2
cocrecoイラスト:べるこ

17歳の男の子を子育て中のママ(45歳)です。

子どもの成長はうれしいものですが、進路選択などの大きな決断を迫られると、家族それぞれの考え方の違いが見えてくることがあります。

特に子育てに対する夫婦の価値観は、こうした節目で浮き彫りになるものかもしれません。これは、私たち夫婦と当時中学3年生だった息子が経験した「受験の夏」の記録です。

※本記事はママの実体験を取材し、プライバシーに配慮して構成したものです。

勉強が苦手な息子に受験生の自覚が芽生えた

「お母さん、俺、行きたい高校がある」

中学3年の春。部活を引退したばかりの息子が、そう切り出してきたとき、私は耳を疑いました。これまで息子は、勉強や成績の話になるとサッと部屋へ逃げていくような子だったのです。

学校での成績は「2」と「3」が半分ずつで、特に英語は定期テストで20点台を取ることもあるほど苦戦していました。学校の先生からも「このままだと、進路の選択肢が狭まりますよ」と心配されるような状況。

そんな息子も、中学3年生になり、すでに受験に向けて準備を始めている友人たちを見て、さすがに焦り始めたようです。息子が自分から「勉強したい」と言い出したことなど、今まで一度もなかったので、私は驚きながらも、嬉しさがこみ上げてくるのを感じていました。

塾に行きたい息子をどうサポートすればいいの?

いざ、息子が口にした高校は、今の成績から考えると決して簡単に目指せる学校ではありませんでした。

目標を持ってくれたことを嬉しいと思う反面、「本当に間に合うのだろうか」「私は何から始めればいいのだろうか」という不安が押し寄せてきます。

わが家はこれまで子どもを塾に通わせた経験がなく、受験に関する知識はほとんどありません。私は息子の気持ちを応援したいのに、親として何をしてやればいいのか、まったく見当がつかなかったのです。

夫は普段から「子どもの人生は子どものものだから」と言って、子どもたちの勉強や進路について積極的に関わることはなく、基本的には本人に任せるというスタンスでした。

ところが、息子の受験について相談をすると「俺の受験のときはこうだった」と、数十年前の自分の経験をもとに意見してきたのです。子どもの意思を尊重しているようでいて、どこか「自分の歩んできた道こそ正しく、尊重されるべきだ」と考えているようにも見える──。

時代錯誤な夫の姿に、私は小さなモヤモヤを感じていたのです。

「塾なんて行く意味がない」夫の真意は?

cocrecoイラスト:べるこ

わが家では、家計の管理は夫がしています。塾に通うとなれば、毎月それなりの費用がかかります。そこで、意を決して、私は夫に塾代について相談することにしました。

「○○(息子)が塾に行きたいって言ってるんだけど……」すると夫は「志望校はどこだ?」と聞いてきました。私は息子から聞いていたとおり、「偏差値47のA高校」と伝えました。

すると、夫は冷ややかな声でこう言ったのです。「偏差値が47? 平均以下じゃないか。平均以下の高校を目指すなら、塾なんて行かなくてもいいんじゃないか? 意味ないだろ」

塾に行く意味がない? 夫の考え方ではそうなのかもしれません。けれどこの人は息子の頑張りたい気持ちを応援する気持ちはないんだろうか……。

私と夫とのやりとりは、少し離れたところにいた息子の耳にも届いていました。息子の表情が、みるみる曇っていくのがわかりました。傷ついた息子の様子を感じながらも、私は夫に言い返すことができませんでした。

「偏差値が平均以下の学校を受験するなら、塾に行く意味はない」という夫の言葉にショックを受けながらも、私は息子の「志望校へ合格するために、塾に行って頑張りたい」という気持ちを大切にしたいと思いました。夫の承諾を得て、家計から塾代が出せないなら、自分のパート代をやりくりして塾代を出すからと夫を説得しました。夫も「それなら……」と渋々同意。こうして、息子は塾に通うことができたのです。

しかし蓋を開けてみれば、息子は塾では最下位のクラス。基本の勉強すらも怪しいようで、模試を受けたところ、志望校はD判定が出てしまいました。それでも塾の先生からは「夏休みに頑張って成績を伸ばそう」と励ましてもらい、本人もそのつもりで努力を重ねていました。

「夏休みは家族で旅行に行こう」という夫

夏休みを目前に控えたある日のこと。夫が突然「今年の夏休みは、みんなで旅行に行こう」と言い出しました。

「え? 息子が受験生なのに?」夏期講習や模試など、夏休みは受験生にとっていちばん大切な時期のはずです。夫にそう伝えましたがまったく気にする様子がなく、それどころか「俺は中3のときの夏は旅行に行ったぞ。高校生になれば今よりもっと忙しくなるんだから、家族の思い出づくりも大事だろ」と言うのです。

さらには「数日勉強しないくらいで、人生が変わるわけない。もし数日休んだくらいで成績が落ちるなら、今までの積み重ねが足りなかったってことだ」とここでも持論を展開します。

「家族の夏の思い出を作りたい」夫なりの、家族を想う気持ちであることはわかります。けれど、私は「志望校に受かるために、今は勉強を優先すべき時期だ」と考えていました。息子の将来を思う気持ちは同じでも、何を優先するかという価値観には大きな隔たりがあるように感じたのです。

身勝手な夫からの家族旅行の誘いに対し、息子はどんな返事をするのだろう──。私は気が気ではありませんでした。

文/構成・橘サチ

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