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建築好きカメラマンが撮る、「2026年 京都モダン建築祭」の名建築5

  • 2026.11.2
YOSHIHARU HARADA

建築を愛するカメラマン・原田義治が、「2026年 京都モダン建築祭」に参加する名建築を独自の視点で撮り下ろし。なぜその場所に惹かれたのか、撮って何を感じたのか、そしてインスタグラムではどこを切り取るのか。写真家の視点から、建築の新たな魅力と“撮り方”のヒントを探る。


YOSHIHARU HARADA

京都市京セラ美術館/岡崎

1933年、1928年に京都で行われた即位の大礼を記念し、「大礼記念京都美術館」として開館。設計は公募で選ばれた建築家・前田健二郎。現存する日本最古の公立美術館建築で、洋風建築に和風の屋根を冠した「帝冠様式」を代表する建物だ。2018年に青木淳・西澤徹夫設計共同体のもと改修・増築に着手し、歴史的な本館を保存しながら、地下へ続くスロープや現代美術を中心とする新館「東山キューブ」などを整備。和風の意匠にアールデコやライト式が交わる空間に、歴史と現代が共存している。2019年に竣工し、2020年5月にリニューアルオープンした。

YOSHIHARU HARADA

Q1. この建築のどこに惹かれましたか?

「『現存する日本の公立美術館建築として最古』と『リノベーション』という言葉の組み合わせに興味を持ちました。住宅のリノベーションや美術館の修復・保存はよく聞きますが、『美術館をリノベーションする』というのはあまり聞いたことがなく、一体どんな空間になっているんだろうと気になって、行ってみたくなりました」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「当時のまま残されている場所、きれいに修復された場所、新たにリノベーションされた場所が、すごくいいバランスで共存しているなと思いました。シンボリックなファサードの『ガラス・リボン』と建物を見たときは、重厚な建物が宙に浮いているように見えて、とても不思議で印象的でした」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「今回公開される貴賓室など、当時のまま残る場所や復元されたパーツと、新たにリノベーションされた部分。その『新旧の対比』が伝わるように切り取ってみると、面白いかなと思います」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

<写真>中央ホールに設けられた、アイコニックならせん階段も撮影したいポイントのひとつ。各フロアをつなぐ動線でありながら、空間のアクセントにもなっている。

京都市京セラ美術館
京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124

YOSHIHARU HARADA

五龍閣(旧松風嘉定邸)/東山

大正期、清水焼の窯元から事業を広げた実業家・松風嘉定の邸宅として建設。設計は、京都帝国大学建築学科の創設者としても知られる建築家・武田五一。木造3階建てに塔屋を備えた洋館で、セセッション様式を基調としながら、幾重にも重なる和風の瓦屋根や鴟尾(しび)を取り入れた折衷的な外観が特徴だ。内部は大きな階段室を中心に部屋を配し、洋風を基調としながら日本の伝統意匠を巧みに組み込む。実業家と建築家が手掛けた住宅建築として価値が高く、国の登録有形文化財に登録されている。現在はカフェとして活用されている。

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Q1. この建築のどこに惹かれましたか?

「和洋折衷の独特な外観と、一歩中に入ると広がる大正ロマン漂う空間。そのギャップに惹かれました」(原田さん)


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Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「ステンドグラスやタイルの模様、木や石など、さまざまな素材や質感がひとつの建物の中に凝縮されていて、とても面白いと感じました。それぞれに異なる表情を持つ素材が響き合い、空間に豊かな奥行きを生み出しているのが印象に残っています」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「和洋折衷の外観や、内部の模様、素材に注目して撮りたいです。建物全体を捉える引きと、ディテールに迫る寄りの両方を撮り、視点や角度を変えて切り取ることで、さまざまな表情を捉えた面白い写真になると思います」(原田さん)

五龍閣(旧松風嘉定邸)
京都府京都市東山区清水2-239

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茂庵/吉田・北白川

大正10年(1921年)から土地の購入が始まり、同15年(1926年)までに整えられた、実業家で数寄者の谷川茂次郎による茶苑。吉田山の山上に点心席(食堂)や茶室、待合などを配し、現在は旧点心席、田舎席、静閑亭、待合が残る。木造2階建ての旧点心席は、東側の壁面を後退させて懸造のように見せる特徴的な構造で、2階には眺望を意識した大きな窓が設けられ、窓越しに大文字や京都の街並みを望むことができる。今回特別に公開される「静閑亭」は、当初、立礼席として設けられた茶室。大正後期の茶の湯の場を伝える建築群として国登録有形文化財に登録され、旧点心席は現在カフェとして活用されている。

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Q1. この建築のどこに惹かれましたか?

「森の中にひっそりと佇み、周囲の景観に溶け込んでいるような姿に惹かれました」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「撮影とは少し離れますが、自然の中にある和の空間に身を置くと、気持ちがすっと落ち着くのを感じました。普段の忙しさを忘れて、こういう場所で過ごす時間を持つことは、自分を整えるためにも大切だなと思いました」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「この空間ならではの『静けさ』を切り取りたいです。森の緑の中に建物がひっそりと佇む様子を写真に収め、街の喧騒を忘れさせてくれるような空気感まで伝えられたらと思います」(原田さん)

茂庵
京都府京都市左京区吉田神楽岡町8

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京都コンサートホール/北山・松ヶ崎

1995年、平安建都1200年記念事業の一環として、京都市が建設した音楽専用ホール。設計は磯崎新。大ホール、アンサンブルホール ムラタ、ホワイエの3つを組み合わせ、平安京の条里、北山通、賀茂川という京都固有の軸線に沿って配置している。外観は、いぶし銀を思わせる落ち着いた色調。黒い円筒形の上部にアンサンブルホールを配し、ホワイエには立方体格子の意匠を取り入れるなど、異なる形態と素材が響き合う。大編成のオーケストラに対応する1833席の大ホールと、室内楽などに適した510席のアンサンブルホールを備え、京都市交響楽団の本拠地として、音楽文化を支えている。「天の川」と呼ばれる大ホールの照明や、「UFO」を思わせるアンサンブルホールムラタの舞台照明など、磯崎新の遊び心が光るディテールにも注目したい。

YOSHIHARU HARADA

Q1. この建築のどこに惹かれましたか?

「以前、北九州を訪れた際に磯崎新さんの建築を初めて見て、その印象が強く残っていました。『京都コンサートホール』も磯崎さんの設計だと知り、実際に訪れてみたいと思いました。まず惹かれたのは、複数の幾何学的な形が組み合わさった、存在感のある外観です。建物の中にどんな空間が広がっているのか、興味が膨らみました」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「普段は外観をきっかけに建築に興味を持つことが多いのですが、機会があれば内部にも足を運んでみるべきだと改めて感じました。コンサートにあまり馴染みのない私にとって、今回の機会がなければ訪れることもなかったかもしれません。実際に中に入ると、大ホールの雄大さ、そして堂々たるパイプオルガンに圧倒され、一気に引き込まれました。もうひとつのホール、アンサンブルホールムラタや、磯崎さんらしい意匠が感じられるホワイエも見逃せません」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

<写真>十二支を表す12本の円柱が並ぶエントランスホールからスロープを進み、アンサンブルホールムラタへ。星座が描かれた天井と、演出に合わせて昇降するUFOのような舞台照明が目を引く。

YOSHIHARU HARADA

Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「水平・垂直・直角といった直線的な構成だけでなく、円筒やらせん、斜線など、さまざまな幾何学的な形が見られます。どこに注目するかで印象も変わるので、自分なりの視点で自由に切り取るのが面白いと思います」(原田さん)

京都コンサートホール
京都府京都市左京区下鴨半木町1-26

※アンサンブルホールムラタとスロープは、パスポート公開ではご覧いただけません。通常公演時にぜひチェックして。

YOSHIHARU HARADA

京都市役所本庁舎/中京

「京都市役所本庁舎」は、三代目の市庁舎として1927年(昭和2年)に東館が竣工し、1931年(昭和6年)に西館が完成した。設計は京都市営繕課が行い、中野進一が意匠を担当。武田五一が顧問として監修した。左右対称の構成や中央の塔にネオ・バロックの骨格を備えつつ、外観や内部には日本・中国・インド・イスラムなど東洋の意匠を取り入れている。イスラム風のアーチが見られる階段ホールや、装飾豊かな市会議場も見どころだ。2021年に改修を終え、現在も市庁舎として使われている。昭和初期の公共建築の意匠をよく伝える建物として、2025年に国の登録有形文化財となった。

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Q1. この建築のどこに惹かれましたか?

「ネオ・バロックの骨格を感じさせる、堂々とした佇まいに惹かれました。歴史を感じさせる重厚な存在感があり、建築としてとてもかっこいいなと思いました」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「外観にも内観にも、アーチをはじめとする装飾が随所に施されていて、細部を見ていくほど、当時の意匠や職人の仕事へのこだわりが伝わってきました。建物全体の重厚さに加え、近くで見て初めて気づく装飾の豊かさも印象に残りました」(原田さん)

YOSHIHARU HARADA

Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「建築祭で特別公開される『市会議場』や『正庁の間』など、普段はなかなか入る機会のない華やかな空間を切り取りたいです。装飾の細部だけでなく、空間全体の広がりや格式も伝わるように撮影できたらと思います。建築祭だからこそ出合える特別な場所なので、ぜひ写真に収めてほしいです」(原田さん)


YOSHIHARU HARADA

<写真>昭和2年の完成から約100年にわたり使われてきた市会議場。幾何学模様のステンドグラスが彩る天井や、インド建築の影響を受けた正面のアーチなど、創建時の意匠が改修後も受け継がれている。

京都市役所本庁舎
京都府京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488

原田義治(Yoshiharu Harada)

北海道札幌市出身。長山一樹氏に師事し、2025年に独立。ファッションや広告撮影に携わる傍ら、ライフワークとして日常の風景や建築のスナップを撮り続けている。建築を「日常において最も身近な芸術」と捉え、時間や光によって変化する表情を独自の視点で切り取る。無機質な空間の中に潜むわずかな色彩や温度をすくい上げる、静かで緊張感のある表現を得意とする。

2026年 京都モダン建築祭
会期/前期:2026年10月31日(土)~11月1日(日) 後期:2026年11月7日(土)〜11月8日(日)
開催エリア/北山・松ヶ崎、北大路、衣笠・北野、西陣、御所西、御所東、御所北、吉田・北白川、中京、岡崎、東山、河原町・五条、京都駅・七条

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