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綴る、わがままな部屋。登山家・服部文祥の居住空間学

  • 2026.11.3
Anr i Yamada イラスト

化石燃料に依存せずに循環する生活の場を求めて

横浜の住宅街にある築六〇年の中古住宅を「自宅」と呼び、関東近郊の廃山村にある築一二〇年以上の小さな民家を「百之助」と屋号で呼んでいる。最近はひと月の半分を百之助で過ごし、残りの半分を登山と自宅で分け合っているので、百之助の滞在が一番長い。

物心ついたときから古民家や骨董が好きだった。その感覚は生得的なものだと思っていた。大人になってから調べると、懐かしさはオキシトシン(快楽物質)を分泌すると知った。ただ、幼かった私はもっと本質的な「格好良さ」を古民家に感じていたのだと思う。

百之助は現代風にリフォームをしていない。里山という環境の中で生活が循環するには、土間、カマド、水舟がよいからだ。

古民家とは、人間社会が化石燃料で維持されるようになる以前に、機械力なしで建てられたものである。百之助もまだ車道が村まで延びていなかった時代に、周辺の樹と土と草を材にして建てられた。幼かった私は、現代文明に漂う嘘くささが、化石燃料に依存しているゆえだとは気がついていなかったが、古民家のたたずまいと機能に、生物的に自立した格好良さを感じていた、と今では思う。

Anr i Yamada イラスト

横浜の自宅も自立させようとして、薪ストーブを入れ、庭に菜園を作った。だが基礎設計が現代インフラ用になっているので、うまくいかなかった。燃料や食料を調達する土地も足りない。私の居住空間は石油依存からの脱却がテーマである。ただ「帰る家」というときイメージするのは横浜の自宅だ。まだまだ現代文明人なのかもしれない。

profile

服部文祥(登山家、作家)

はっとり・ぶんしょう/1969年神奈川県生まれ。アルプスやヒマラヤ、冬季の北アルプス剱岳の登山を経て、自給自足の登山であるサバイバル登山を提唱、実践する。近年は廃山村で自給自足の生活を試みている。

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