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【開創700年記念 大徳寺展】これは必ず見るべき!「禅」と「茶の湯」の美の至宝9選

  • 2026.11.1
Yasuo Kubota

臨済宗大徳寺派大本山大徳寺。京都の洛北・紫野に位置する古刹は、宗派を代表する禅寺として存在するだけでなく、千利休が深く帰依したことを発端として、表千家、裏千家、武者小路千家の茶道三千家の代々家元の精神的な拠り所となっています。

数々の国宝や重要文化財をはじめ、前期・後期に展示替えされる作品を合わせて、150点以上の至宝が展示される今回の『開創700年記念 特別展 大徳寺』。なかには、これまで限られた人しか見ることのできなかった作品が史上初公開されるという、開創700年を記念した特別展ならではの試みもあります。

ここでは、これだけは必ず見るべきという、至宝中の至宝とも呼ぶにふさわしい作品を、「茶の美」「禅の美」「匠の美」の3つに分けて紹介します。実物はさらに素晴らしく、存在感があることは、いうまでもありません。ぜひ会場で、美の真骨頂と向き合ってください。

大徳寺仏殿の前に建つ三門「金毛閣」。応仁の乱で焼失し、下層部分再建の後に千利休が上層を再建。楼上に安置された利休等身大木像が豊臣秀吉の怒りを買い利休切腹につながったともいわれている。三門前を往く大徳寺の修行僧たち。その姿は700年前と変わらない。 Yasuo Kubota

【茶の美】


史上初めて金毛閣から下りた等身大の千利休像

「千利休立像 (せんのりきゅうりつぞう) 」

頭部:天保11(1840)年、体部:田中浄慶作 明治2(1869)年|大徳寺蔵(三門安置)【通期展示】 Tokyo National Museum

豊臣秀吉の逆鱗に触れた利休像は利休切腹とともに戻り橋で磔にされたと伝わる。その後、裏千家11代玄々斎に師事した茶人・伊木忠澄の遺族が明治半ばに寄進した等身大の利休像が金毛閣楼上に安置されるようになった。特別展ではその像が初公開される。

銀河系を思わせる、無数に輝く銀色の斑点

重要文化財「油滴天目 (ゆてきてんもく) 附 (つけたり) 螺鈿唐草文天目台 (らでんからくさもんてんもくだい) 」

中国北方 金時代・12~13世紀|京都・龍光院蔵 【11月25日~12月6日展示】 Tokyo National Museum


江戸時代初期の茶人としても名高い大徳寺第156世、江月宗玩(こうげつそうがん)が所蔵した名品。一般的な天目茶碗と異なり、金時代に中国北方で作られた。見事なまでの螺鈿細工の唐草模様天目台とともに伝わる。

多くの茶人を魅了した、名碗中の名碗

国宝「大井戸茶碗 (おおいどちゃわん) 喜左衛門井戸 (きざえもんいど) 」

韓国慶尚南道 朝鮮時代・16世紀|京都・孤篷庵蔵 【通期展示】 Tokyo National Museum


庶民が使う日常の器として作られた16世紀朝鮮時代の器に「わび・さび」を見いだした日本の茶人たちが「井戸茶碗」と称し、茶道具として珍重。数ある井戸茶碗のなかでも、この茶碗が唯一国宝に指定されている。

【禅の美】


大徳寺開山の高僧が遺した気宇壮大な筆致

国宝「看読真詮榜 (かんどくしんせんぼう) 」(部分) 宗峰妙超 (しゅうほうみょうちょう) 筆

南北朝時代・14世紀|京都・真珠庵蔵 【半期で巻替え】 Tokyo National Museum


大徳寺の開山である宗峰妙超(大燈国師)の墨蹟。禅寺における重要な法要の際に僧侶が読むお経の分担を示したもの。肉厚で力強い筆致が、高僧として名高い宗峰妙超の強靭な精神性を表す。

弟子が描き、師匠が賛を寄せた二人三脚の名品

重要文化財「達磨図 (だるまず) 」 墨谿 (ぼっけい) 筆、一休宗純賛 (いっきゅうそうじゅんさん)

室町時代・寛正6(1465)年|京都・真珠庵蔵 【後期展示】 Tokyo National Museum

一休宗純の弟子であった墨谿が描いた、禅宗の開祖とされる達磨大師の画に一休が賛を寄せた。賛は達磨大師が放つ鋭い眼光とは対照的に、達磨大師にも感傷や望郷の念があったはずと、一休和尚らしい温かみのある内容となっている。

嗣法(しほう)の証しに、師から弟子に授ける尊き肖像画

国宝「宗峰妙超像 (しゅうほうみょうちょうぞう) 」 自賛

南北朝時代・建武元(1334)年|大徳寺蔵 【前期展示】 Tokyo National Museum

禅僧の肖像画は「頂相(ちんそう)」と呼ばれ、修行を終えた弟子に、法を嗣いだことの証明として、師が賛を書き入れて授ける、極めて尊いもの。手前を鋭く睨み据える威厳に満ちた姿は、宗峰妙超の峻烈な禅風を物語る。南北朝期の頂相の最高傑作とされている。

【匠の美】


日本画の変遷に絶大なる影響を与えた最高傑作

国宝「観音猿鶴図 (かんのんえんかくず) 」 牧谿 (もっけい) 筆

中国 南宋時代・13世紀|大徳寺蔵 【前期展示】 Tokyo National Museum

長谷川等伯、狩野探幽、伊藤若冲、あるいは横山大観など後世の日本画家に多大な影響を及ぼし、この作品が渡来しなければ日本画の歴史は異なる道をたどっただろう、とまで評される水墨画の最高傑作。

天才絵師、狩野永徳が20代で完成させた傑作

国宝「琴棋書画図襖 (きんきしょがずふすま) 」(部分) 狩野永徳 (かのうえいとく) 筆

室町時代・16世紀|京都・聚光院蔵 【後期展示】 Tokyo National Museum

中国の文人が身につけるべき4つの嗜みである、琴、囲碁、書、画を題材とした障壁画。狩野永徳が20代の若年時に手掛け、後の「桃山絵画様式」の先鞭となる、美術史的にも極めて貴重な作品。

縦6メートルを超える大作を覆い尽くすリアリティ

重要文化財「仏涅槃図 (ぶつねはんず) 」 狩野松栄 (かのうしょうえい) 筆

室町時代・永禄6(1563)年|大徳寺蔵 【前期展示】 Tokyo National Museum

息を引き取る釈迦の周囲で、弟子や動物が深い悲しみに浸るさまを描いた涅槃図。涅槃図は仏画として数多くあるが、狩野松栄によるこの作品は、戦乱の時代を生き抜いた絵師ならではの、死を間近にしたリアルな悲哀の感情表現が際立つ。

平和があってこそ、守れるもの大本山 大徳寺 宗務総長 福代洋道 (ふくしろようどう)

大徳寺塔頭興臨院の住職でもある福代洋道和尚は、非公開だった重要文化財「経蔵」の特別公開に踏み切るなど、新たな発信にも精力的に取り組んでいる。 Yasuo Kubota


今回の特別展のお話をいただいたのは7年ほど前のことでした。それ以来、山内の各塔頭の方々との幾度もの打ち合わせを経て、ようやく実現を迎えることとなりました。特別展にお越しになる方々には、数々の貴重な寺宝をご覧いただくのと同時に、大徳寺が積み重ねてきた700年という歴史を、肌で感じていただければと思います。

とりわけ私が注目してほしいのは、一休宗純和尚です。応仁の乱で荒廃してしまった大徳寺を復興するのに大きな尽力を果たしたのが一休和尚です。一休和尚というと、「一休さん」の名前で「とんち一休」として知られていますが、じつは大変な禅僧で、彼に帰依したのが、多くの富をもった堺の豪商たちでした。

こうした豪商を通じて復興の資金が集まり、大徳寺は再生の道へと進みます。大徳寺と茶の湯との深い関係には一休和尚が深く関わっています。一休和尚は、わび茶の祖、村田珠光(むらたしゅこう)を見い出し、やがて武野紹鷗(たけのじょうおう)、千利休へと続いていきます。

戦国武将の多くも茶の湯を嗜みました。彼らの多くは、没後も茶の湯と縁の深い大徳寺山内に墓所をもつことを望みました。また豊臣秀吉が織田信長の葬儀を大徳寺で執り行ったことも影響し、織田信長の総見院(そうけんいん)、浅野幸長(あさのよしなが)や石田三成ゆかりの三玄院(さんげんいん)、小早川隆景(こばやかわたかかげ)や蒲生氏郷(がもううじさと)が眠る黄梅院(おうばいいん)など、戦国武将の墓所を設けた菩提寺として、小さな寺院が境内に数多く生まれました。これが現在にいたる塔頭寺院を形成しています。

また、室町幕府と対立し、官位による寺院格付けに反発して自ら官制の序列から離れ、在野の禅寺としての存在を歩む、あるいは江戸幕府の定めに沢庵宗彭(たくあんそうほう)が抗議したために、流刑の憂き目に遭うなど、大徳寺には反骨の精神が流れています。こうした大徳寺の歴史を踏まえて、ひとつひとつの展示作品をご覧になると、また違った思いが浮かび上がってくるのではないでしょうか。

応仁の乱で大半が焼失し、一休和尚の尽力で復興した大徳寺は、その後の戦乱では無事でした。蛤御門(はまぐりごもん)の変でも被害はありません。500年以上にわたって戦乱を免れたゆえに、寺宝が守り継がれてきました。世界各地で紛争や戦争が生じている今日、日本でこうした特別展を開催できるのは、いまの日本が平和だからです。平和が続いたからこそ、寺宝が守られ、それを展覧会にすることができる。会場ではそんなことも念頭においていただければ、と思います。

「本朝無双之禅苑」と讃えた

“個性派”天皇 後醍醐天皇

<strong>重要文化財「後醍醐天皇像」</strong> 鎌倉~南北朝時代・14世紀|大徳寺蔵 【前期展示】 Tokyo National Museum


倒幕を企てた罪のために流された隠岐から脱出し、やがて鎌倉幕府を倒して、天皇による親政を行うも失敗。その後、足利尊氏と対立して吉野へ逃れて南朝を興し、京都の北朝を相手に生涯にわたって抗戦を続ける。そんな強烈な個性と行動力をもった天皇として、その名を歴史に残しているのが後醍醐天皇です。

自身にも権力を集中させた「建武の新政」が長続きしなかったことが示すように、独善的な支配者として見られがちな後醍醐天皇ですが、一方では能筆家として、あるいは琵琶や笙(しょう)の名手としても知られ、さらに朱子学を精力的に導入するなど、学問を好み自らも嗜む、時代を代表する一級の文化人でもありました。

「本朝無双之禅苑」という、後醍醐天皇らしい直截的な表現は、大徳寺開山の宗峰妙超の厳しい禅風に惹かれ、宗峰妙超に帰依した後醍醐天皇が大徳寺に与えた直筆文書『後醍醐天皇宸翰置文(ごだいごてんのうしんかんおきぶん)』の中に書かれた一節です(下図参照)。

<strong>国宝「後醍醐天皇宸翰置文(ごだいごてんのうしんかんおきぶん)」 </strong>南北朝時代・元弘3(1333)年|大徳寺蔵 【後期展示】 Tokyo National Museum

開創700年記念 特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』

[東京国立博物館 平成館]
特別展の一角では金毛閣の楼上内が再現され、本尊として安置されている「釈迦如来坐像」も公開される。(画像は展示イメージのパース図) Tokyo National Museum

DATA
会期/開催中~2026年12月6日
【前期展示】開催中~11月8日
【後期展示】11月10日~12月6日
開館時間/9時30分~17時(金・土曜、11月1日、2日、22日は20時まで開館)※入館は閉館の30分前まで。
休館日/月曜(11月2日、23日、30日は開館)、11月24日 ※11月30日は大徳寺展のみ開館(東博コレクション展は休館日のため観覧不可)
料金/一般2,300円ほか
tel.050-5541-8600
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東京都台東区上野公園13-9

東京国立博物館

撮影=久保田康夫 写真提供=東京国立博物館 取材・文=櫻井正朗 編集=吉岡尚美、大坪千夏(ともに婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年12月号より

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■特集 「禅と茶|大徳寺開創700年」

・【大徳寺展】これは必ず見るべき!「禅」と「茶の湯」の美の至宝9選(この記事)
・表千家第十五代家元が語る、禅と茶の湯(11/11公開予定)
・裏千家第十六代家元が語る、禅と茶の湯(11/13公開予定)
・武者小路千家第十五代家元後嗣が語る、禅と茶の湯(11/15公開予定)

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