1. トップ
  2. 2026年11月公開の注目映画|描き尽くさず、観客に委ねる。イマジネーションを刺激する3作

2026年11月公開の注目映画|描き尽くさず、観客に委ねる。イマジネーションを刺激する3作

  • 2026.11.1

映画評論家、エッセイストの秦 早穗子(はたさほこ)さんが担当する『婦人画報』の映画コーナー「世界への窓」。今回は「余白を愉しむ」をテーマに、2026年11月に公開される注目の新作映画に加え、併せて観たい映画をご紹介します。

今回ご紹介する映画はこちら

『ファーザー マザー シスター ブラザー』

©2024 Vague Notion Inc. All Rights Reserved. 配給:NOROSHI ギャガ Hearst Owned

2026年11月20日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

『マルセル&ムッシュ・パニョル』

©2025 WHAT THE PROD - MEDIAWAN KIDS & FAMILY CINÉMA - BIDIBUL PRODUCTIONS - WALKING THE DOG 配給:クロックワークス Hearst Owned

2026年11月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

『ムクドリと人生とレモンパスタ』

© Copyright 2025 Cattleya S.r.l. unipersonale, Ruvido Produzioni S.r.l. unipersonale, Bartlebyfilm S.r.l., Vision Distribution S.p.A, Buena Pinta Media S.L.U., Bteam Prods S.L., Perdición Films S.L., Apaches Entertainment S.L., Tres Cuencos A.I.E. Tutti i diritti riservati. 配給:チャイルド・フィルム Hearst Owned

2026年11月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

描き尽くさず、観客に委ねる。イマジネーションを刺激する3作

『ファーザー マザー シスター ブラザー』

久しぶりのジム・ジャームッシュの新作『ファーザー マザー シスター ブラザー』は、期待に応えて、余白の部分を観客のイマジネーションに委ねる。2025年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。

第一話。ニュージャージーに住む父(トム・ウェイツ)を訪ねる息子(アダム・ドライバー)と、娘(メイム・ビアリク)。嚙み合わない親子の会話の中に、父の孤独が浮かび上がる。

第二話はダブリン。作家の母(シャーロット・ランプリング)が催すアフタヌーン・ティーの集い。娘たち(ケイト・ブランシェットとヴィッキー・クリープス)がやって来る。母娘の仕草、話し方から、彼女たちの環境、仕事、考えの違いが、透けて見えてくる。母は娘ふたりの暮らしを的確に推測しながら、追及はしない。互いに距離を置き、それでも、取り決めた茶会は続けるのだろう。

第三話はパリ。両親の遺品を整理して、ガランとなったアパルトマンで寄り添う双子の兄(ルカ・サバト)、妹(インディア・ムーア)。彼らの隠された感情が一瞬、噴き出すのだが……。ごてごて料理に似た説明過多な映画にうんざりした方に、お薦めしよう。

『マルセル&ムッシュ・パニョル』

2003年、シルヴァン・ショメが発表した初の長編アニメ『ベルヴィル・ランデブー』。監督・脚本・キャラクターと、ショメがひとりで創り上げる独自の世界は、国境を超え、人々の記憶に残った。2025年に発表された『マルセル&ムッシュ・パニョル』は、彼の最新作である。

フランスで国民的人気のあったマルセル・パニョル(1895~1974)は、作家・映画監督であり、映画人として初のアカデミー・フランセーズ会員に選ばれ、一時は、撮影所まで持った存在であった。1955年には、カンヌ国際映画祭の審査委員長を務める。

本作でショメが探し続けるのは、パニョルの少年時代の記憶と彼の人生であり、常に親子の関係性を追求するパニョル自身と、ショメのテーマが通底して引き合っていく。日本人にはあまり馴染みがないパニョルの存在かもしれないが、独特な田舎なまりと、辛辣な笑いを含めた彼の作品を知るのも、無駄ではあるまい。

『ムクドリと人生とレモンパスタ』

イタリアの『ムクドリと人生とレモンパスタ』は、監督・脚本イザベル・コイシェ。おいしそうな題名で、食欲がそそられる。観客が探しているすべてを、全部表現しているからだ。

マルタ(アルバ・ロルヴァケル)は、些細な事から、料理人の彼と別れた。意気消沈し、やがて生きる力を取り戻すまでをそっと描き出す。

この映画も、すべてを描き尽くすのではなく、白い部分を残し、いや、失われた日常のさりげない場面を取り上げることで、見る側が、自分の人生を重ね合わせていく。成熟していく女の、男の、心の内が垣間見える時、自分自身の人生を発見し、勇気づけられるかもしれない。

こちらはおうちで……配信&Blu-ray&DVD

『ベルヴィル・ランデブー』

©Les Armateurs / Production Champion / Vivi Film / France 3 Cinéma / RGP France / Sylvain Chomet

シルヴァン・ショメのアニメを知らない方のために、もう一度『ベルヴィル・ランデブー』を取り上げた。孫の男の子シャンピオンが、マフィアに誘拐されてしまった。愛犬を連れ、おばあちゃんは世界を旅していく。三つ子の姉妹の存在も独特で、いわゆる可愛いアニメではなく、ひねった味がたまらない。

はたさほこ●1931年東京都生まれ。映画評論家、エッセイスト。58年フランスに渡り『勝手にしやがれ』『太陽がいっぱい』などの映画輸入に携わる。映画評論、エッセイ、翻訳を手掛け、シャネルなどのファッションも紹介。現在も映画紹介に努め、執筆活動を行う。

文=秦 早穗子 編集=須田秀子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年12月号より

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ