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「次に何をするか予想できないブランドになりたい」 ジュリー・ケーゲルスが見据える未来

  • 2026.10.30

若手デザイナーの登竜門ともいわれるLVMH プライズで、今年グランプリを獲得した「ジュリー ケーゲルス」のデザイナー、ジュリー・ケーゲルス。シャープでありながらユーモラス、そしてモダンなひねりを利かせたコレクションで今、世界から一番注目される彼女が語ることとは。ブランド設立、わずか2年あまりで輝いた栄光の直後に、率直に話を聞いた。

ジュリー・ケーゲルス(Julie Kegels)。先日開催されたBoF 500 ガラにて。 Aurore Marechal / Getty Images

――LVMHプライズ、グランプリを獲得しました。受賞後の今の率直な気持ちをお聞かせいただけますか?

「今でも少し現実とは思えない気持ちです。ブランドを運営し、コレクションを築く日々はとても濃密で、振り返る余裕がありませんでした。常に次のコレクション、次のフィッティング、次に解決すべき問題のことを考えているからです。そんな中で突然、自分が生み出したものを、心から尊敬する方々に認めていただいたのです。深く感謝すると同時に、新たな責任も感じています。この賞によって、私たちにはさらに成長する余地が与えられました。それは若いブランドにとって、何よりの贅沢(ぜいたく)かもしれません。ただ、評価されたことで、ものづくりが慎重になりすぎるのは避けたいと思っています。私たちをここまで導いてくれた自由さと、無謀なところは守っていきたいのです」

「ジュリー ケーゲルス」2026-27年秋冬コレクションより。 LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

――2026秋冬コレクションは“Face Value”と名付けられました。コレクションにはどんな思いが込められていますか?

「“Face Value”は、人に見せるもの、自分の中で守るものとの間にある緊張感から始まりました。現代はあらゆるものが撮影され、投稿され、解釈される、とても開かれた時代です。ただ、多くの人目に触れることが、その人の本質を知ってもらうことにつながるとは限りません。そこで私は、服をある種の“盾”としてとらえることに興味をもったのです。

服は自分をさらけ出すことも、隠すことも、もう一人の自分のような影を作ることもできます。今回のコレクションでは、透け感やレイヤードに加え、視覚的な錯覚を使い、目に映るものを簡単にはとらえきれないようにしています。ドラマチックに思える一方で、ごく日常的でもあります。私たちは誰もが毎日、さまざまな自分を演じています。遊び心から生まれることもあれば、必要に迫られてそうすることもあります」

個性的なアイマスク、アイウエアも目を引いた2026-27年秋冬コレクション。 LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

――「自分な好きなもの、こと」をクリエーションの核として、常に制作を続けていますね。その「好きなもの、こと」に共通するものはなんですか?

「『相反する要素』だと思います。エレガントでありながらぎこちないもの、華やかでありながらありふれたもの、整っているようで少し混沌としているものに惹かれます。完璧すぎたり、簡単すぎるものにはすぐに興味を失ってしまいます。人が何かになろうとする瞬間も好き。ある場に向けて装ったり、整えたり、部屋に入ったり、役割を引き受けたりする瞬間です。その変化には、努力や無防備さ、そしてユーモアがあります。そうした小さな緊張感から人物像が生まれ、やがて服へとつながっていくのです」

ガーメントを持ちながら歩くモデルが登場した2027年春夏コレクション。 LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

――あなたが最も心を寄せる、創作の源はなんでしょうか。

「現実の女性たち、とりわけ女性たちが実際にどう服を着こなしているかということです。ストラップを直したり、ポケットに何かを隠したり、姿勢を変えたり。服を通してより力強い気持ちになったり、反対に目立たなくなったりする。そういう姿に惹かれるのです。

そうしたしぐさを切り取って見せてくれる映画や写真も大切です。でも、しぐさが生まれるのは日常生活の中。外から見える姿と内面の感情が少しだけ食い違う、そんな一瞬に最も心を動かされます。私の創作は、その2つの間から始まります」

2027年春夏コレクションのフィナーレにて。 Virgil Claisse / Getty Images

――さらなる飛躍を期待される今後、どんなブランドになっていきたいですか。

「ひと目でそれと分かる一方で、次に何をするか予想できないブランドになりたいです。コレクションごとに異なる物語を語るとしても、そこには共通の言語があってほしい。シルエットや構造、感情の緊張感から、ラベルを見る前に私たちの服だと気づいてもらえるようなものです。成長することは大切です。強いチームをつくり、ものづくりをさらに深め、アイデアに必要な時間をかけられるようになるから。ただ、規模が大きくなっても、親密さやユーモアは失いたくありません。女性らしさも、自分たち自身も、深刻にとらえすぎない。そんな本格的なメゾンを築くことが、私の目標です」

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