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親子で“芸術の秋”を堪能できる「アートな絵本」3選 プレゼントにも◎![絵本の専門家が選出]

  • 2026.10.29
cocrecoイメージ写真:yamasan/イメージマート

絵本は、子どもへの贈りものに最適なアイテム。とはいえ、ぴったりな1冊を選ぶのは、なかなか難しいもの。連載【子どもの本のプロが選ぶギフト絵本】では、絵本の専門家が、プレゼントにふさわしい絵本をセレクトします。

第28回は、絵本コーディネーターの東條知美(とうじょう・ともみ)さんが、おすすめの“アートな絵本”をご紹介。

青色のグラデーションに圧倒される一冊

秋といえば、「食欲の秋」「読書の秋」、そして「芸術の秋」。

「子どもを芸術に触れさせたいけれど、さわぐから美術館はハードルが高い……」と思っていませんか? そんなときこそ、親子で「アートな絵本」がおすすめです。

すべての絵本は、絵と言葉で作られた「アート」ではありますが、なかでも、芸術の秋に特におすすめしたい3冊をご紹介します。

最初にご紹介するのは、『あおのじかん』(岩波書店)。作者はフランス生まれの絵本作家で、アーティスティックな美しい世界を紡ぎ出す名手、イザベル・シムレールです。

イラストレーターでもある彼女の洗練された絵に、絵本作家で詩人の石津ちひろさんが言葉を添えています。

cocreco『あおのじかん』(文・絵:イザベル・シムレール、訳:石津ちひろ/岩波書店)

物語が描くのは、太陽が沈んで、暗闇に包まれるまでのひととき。これこそが“あおのじかん”です。

空の色が水色から濃紺へ刻一刻と深まり、あたりも青く染まっていきます。同時にさまざまな“青い生きもの”が夜を迎える準備をしています。

“あおのじかん”の始まりを告げるのは、美しいブルーの羽を持つ鳥・アオカケス。同じころ、青灰色のホッキョクギツネは雪の中をとことこと歩き、スイレンの池では鮮やかな青い体のコバルトヤドクガエルが秘密の会議を開いています。

モルフォチョウはメタリックブルーの羽を振るわせ、シロナガスクジラは青のベールに覆われた海で、ほわーっと大きく深呼吸──。

地球にはこんなにもたくさんの青色があり、ほんのわずかな時間に“青い生きもの”たちが無数のドラマを繰り広げている。そんな神秘の世界を美しい画で感じ取ることができます。

アートには、何を感じるかの気づきの楽しさもあります。親子で読むときは、「この動物は今、何をしているのかな?」「どんな話をしているのかな?」などとお子さんに問いかけて、対話しながらドラマを膨らませるのもいいですね。

見返しには32種類の青の色見本が並んだ、芸術性の高い構成も魅力。一枚の絵のようにずっと部屋に飾っておきたい、プレゼントにぴったりの一冊です。

*読み聞かせ 2さいくらいから

*ひとり読み 5さいくらいから

家が宿す“光と影”100年の時を紡いだ一冊

次にご紹介するのは、『百年の家』(講談社)。全64ページの長編で、家と人が織りなす100年の歳月を描いた物語です。

一軒の家が建ち、そこに人々が集い、喜びや悲しみを重ね、やがて時代の波にのまれながらも、家は静かに佇み続ける──。

この絵本を開くとき、単にストーリーを追うのではなく、“100年という果てしない時間”を手もとにたぐり寄せるような、特別な感覚に包まれます。

cocreco『百年の家』(作:J.パトリック・ルイス、絵:ロベルト・インノチェンティ、訳:長田弘/講談社)

本書の真骨頂は、なんといってもロベルト・インノチェンティの圧倒的な画力です。

家の歴史を定点観測するように見開きいっぱいに描かれた絵は、17世紀のオランダ絵画や建築画を思わせるほど細密であり、静かで落ち着いた雰囲気です。

石畳の質感、屋根瓦の陰影、季節ごとに変化する光の角度と、すみずみまで情熱が宿っています。

特徴的なのが、物語の語り手は、人間ではなく「家」であること。過度な感情移入はせずに、戦争など歴史の残酷さも、人々のささやかな日常の営みも、ひとしく同じアングルから描き切っています。

この重厚なアートワークと見事に響き合っているのが、詩人・長田弘さんの訳。静かな表現で、密度の高い絵に「余白」を生み出します。

ページ数も多く、小さいお子さんには少々難しいテーマかもしれませんが、大人になってからも何度も読み返したい“特別な一冊”になり得る名作です。大人が読めば、これまでの人生に想いをはせずにはいられないでしょう。

絵本という小さな劇場の美しいアートを、ぜひ贈ってみてはいかがでしょうか。

*読み聞かせ 5・6さいくらいから

*ひとり読み 小学校中学年くらいから

ミッフィーと世界のアートをめぐる旅へ!

最後は、アートに触れる入り口になるような絵本をご紹介します。

『ミッフィーとはじめてのアート』(河出書房新社)は、ディック・ブルーナが描くミッフィーと一緒にアートを楽しめる、子どものためのアート入門書です。

cocreco『ミッフィーとはじめてのアート』(絵:ディック・ブルーナ/河出書房新社)

本書に登場するのは、マティス、フェルメール、草間彌生、モネ、ピカソなど、24名の有名アーティストのアート作品。それぞれの作品の背景が、ミッフィーのやさしい言葉で語られています。

例えば、マティスの名作『束』について、マティスは晩年、筆がうまく持てなくなり、筆をはさみに持ち替えて切り絵を始めたと教えてくれるミッフィー。

そして、「どんな かたちを きりぬいてみたい?」と読者に問いかけます。

アート作品とミッフィーの絵を見開きで並べた構成もユニークです。2つを見比べて共通点や違いを探すことで、絵を見る楽しさやさまざま発見が得られます。

こうした呼びかけや鑑賞のヒントを与えながら、「何を思ってもいい」「どんなふうに感じてもいい」と、読者に委ねているのが素晴らしいところ。高尚なイメージのあるアートが、ぐっと身近に感じられるでしょう。

巻末には、ディック・ブルーナの絵本づくりの様子も紹介されています。世界中で愛される絵本の制作プロセスがわかると、絵本の見え方も変わってくるかもしれませんね。

古典から現代まで、バラエティ豊かなアート作品と気軽に親しめて、子どもの想像力や創造力の芽がぐんぐん育まれる一冊。

本に登場するアーティストの紹介ページもあり、大人の知識欲も高めてくれます。芸術の秋に、ぜひ親子で楽しんでいただきたいです。

*読み聞かせ 2・3さいくらいから

*ひとり読み 5さいくらいから

取材・文/星野早百合

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