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これが学校? 「IKEAルーム」に「ピラティス」… 不登校の子が笑顔を取り戻す「新しい学校」は担任なし・校則なし

  • 2026.10.29
cocreco木のぬくもりを感じるテーブルや、ソファーベッドが置かれたIKEAルーム。 写真提供:心和中学校

不登校の子どもたちが自分のペースで学びや人とのかかわりを取り戻していく場として「学びの多様化学校」が全国に広がっています。2026年度には25校が新設され、総計84校になりました。

今回紹介する「心和中学校」は、2024年度に大阪市で初めて開校した夜間部を併設する「学びの多様化学校」です。

「学校」という概念をなくし、どの子にとっても居心地の良い環境や集団を作るための取り組みを取材しました。

大阪市が直面した不登校率の高さ

── まずは、心和中学校が設立に至った経緯をお聞かせください。

盛岡栄市校長先生(以下、盛岡先生):大阪市の中学校の不登校率が、全国と大阪府平均と比べて非常に高かったこと。また、市内の夜間学級4校のうち2校が、校舎の老朽化と生徒の減少という2つの課題を抱えていました。

この課題を同時に解決する策を考えていろいろ調べたとき、京都府にある「京都市立洛友中学校」が、「学びの多様化学校」と「夜間部」の両方を持つ学校として大変評価されていることを知りました。そこで洛友中学校をモデルにさせていただきました。

そうして、2024年度に大阪市で初めて開校した夜間部を併設した「学びの多様化学校」として「心和中学校」を開校することになりました。

生徒の学びを取り戻すための試行錯誤

──心和中学校の教育課程における特徴は何ですか?

盛岡先生:5教科については、他校より週1時間ずつ少なく設定しています。逆に言うと、総合的な学習の時間を増やしています。

子どもによって不登校になった時期はそれぞれです。小学校の低学年という子もいるし、中学2年生になってから不登校になったという子もいる。そのため、学力でいうと相当な差があります。それを補うために学習時間を設けて、学び直しの中で学力を取り戻していこうという試みです。

──総合的な学習では、具体的にどのような授業を行っているのでしょうか。

盛岡先生:最初は自由進度での自学自習を試したのですが、学ぶ習慣のない生徒にはなかなか難しく。次に教師が設定した講座から、生徒が選ぶ形式に切り替えましたが、学力向上への直結は難しいと感じました。

現在は、探求学習に力を入れています。教科を横断的に学習することによって、学習に向かう姿勢が良くなり、学習の仕方を覚えるという意味では、一定の効果がでているように思います。

cocrecoストレッチポールを使ったピラティスの授業風景。子どもたちの姿勢改善に役立っています。 写真提供:心和中学校

例えば、1年目はドローン操縦、2年目はストレッチポールを使ったピラティス、3年目の今年2026年は、色鉛筆を使った立体絵画を実施。実際にプロのアーティストを招いて実技指導を行います。

内容は教師主導で内容を決めていますが、今後は生徒の意見をどう反映させていくかが課題ですね。

子どもたちが自ら動き出す探求学習とは

──探求学習を進める中で、印象的だった出来事はありますか?

盛岡先生:昨年、ゲームイベント企画班と究極のレモネード作成班に分けた縦割りの探究活動を行いました。

ゲームイベント企画は自分たちでゲームをするのではなく、土曜参観に来た保護者や兄弟にゲームを体験してもらうというものです。

cocreco総合学習で「究極のレモネード作り」に挑戦する生徒たち。 写真提供:心和中学校

盛岡先生:究極のレモネード班は、配合や味、儲けまでを考えてレモネードを作るというもの。子どもたちは2ヵ月間、いろいろ研究しながら頑張って準備しました。どの子もとても積極的に活動していましたね。

cocreco「ゲームイベント企画」のために準備を進める生徒たち。 写真提供:心和中学校

──このような経験から、自信を取り戻すといった生徒も見受けられましたか?

盛岡先生:そうですね。実際、ゲーム企画班でほとんど登校できない生徒がいましたが、でもそのときだけは、午前中から登校して点検作業をしたり、とても意欲的でした。

その後また学校には来なくなってしまったのですが、実は学校の近くにゲームイベント企画でお世話になった「eスタジアム」というeスポーツの拠点があり、まずそこに通ってみることを提案しました。

すると、大人に混じっていろんな体験をしたり、話を聞いたりするうちに今年26年1月から「eスタジアム」に週2回通うようになったのです。さらに4月からは、学校にも来るようになりました。

「学校臭さ」をなくし安心できる空間を作る工夫

──校内はいろいろな部屋を用意して「学校らしくない学校」をコンセプトに掲げていると聞きました。校内の工夫を教えてください。

盛岡先生:ソファーベッドのあるリラックスルーム、IKEAのクッションを置いたIKEAルーム、寝転べる図書室など、くつろげる空間を意識しています。「ここは本当に公立の学校なのか」と思えるような空間を作りたかったので、IKEAさんにはたくさんご協力いただきました。

cocreco間仕切りがあり、一人でのんびりできる「リラックスルーム」。 写真提供:心和中学校

盛岡先生:学校に行けない子は、「学校臭さ」というのが、一番しんどい部分なのでは、と思っています。学校を感じない空間があれば、行ける子もいるのではないかな、と。

そこでIKEAさんと相談しながら、一人ひとりに合う場所が見つかるように、さまざまな空間を作りました。これは本当に作ってよかったなと思うひとつです。

子どもの選択を尊重し強制しない試み

──「学校臭さ」を感じさせない取り組みは他にもありますか?

盛岡先生:校則がないことですね。茶髪の子も、ピアスをしている子も、メイクをしている生徒もいます。子どもが自ら選択するということを大事にしているからです。

授業への出席も自己判断。習熟度別に分けられた複数の教室のどれを選ぶかも生徒自身で決めることができます。

もうひとつ、担任制度がないことです。チューターといって、生徒自身が担当教員を選ぶ制度を導入しています。これは担任の先生との関係で不登校になった子も多くいることが理由です。

自身が抱えているもの、家庭の状況など、不登校になった背景はさまざまです。チューターの先生とはかなり距離が近くなっていくので、その子の情報をキャッチしやすくなります。

大人の力がなければ解決できない場合や、社会福祉に力を借りないといけないとなったとき、その子の情報からケース会議を開いて、保護者とも連携を図りながら解決を図っていくことができます。

開校から2年で安心できる「集団」へと変化

──現在(2026年秋)開校から2年半ほどが経ちました。生徒たちはどのように変化されていると感じますか?

盛岡先生:現在、対面で登校してくる子は約6割です。登校している子どもたちの様子は、開校当時から比べるとだいぶ変わってきました。

誕生日会を兼ねたお楽しみ会を開催しているのですが、開校最初のころはまるでお通夜のようでした。以前、全学年で行ったカードゲーム大会では、集団でやりたくなくて、逃げていく子もいました。集団に、嫌悪感を抱く生徒が多かった。

cocreco多くの生徒が参加した大縄跳び大会。とても盛り上がりました。 写真提供:心和中学校

盛岡先生:それが今では、誕生日会のハッピーバースデーの歌は大きな声で歌うし、カードゲーム大会は、大変盛り上がります。さまざまな取り組みにより、この集団なら大丈夫という安心感が2年間で形成されてきたと実感しています。

「学び直しはいつでもできる」きっかけを大切に

──今後の課題はありますか?

盛岡先生:支援と甘やかしの線引き、年間指導計画どおりに授業を進められないこと、学力差への対応など課題はたくさんあります。

しかし、中学3年間で教科書を全部終えることを目標にすべきではないと考えています。本校の夜間中学には、87歳のおじいちゃん生徒もいます。考え方を変えれば、学びはいつからでも大丈夫、ということです。

不登校だった子どもたちには、これからも学ぶきっかけや学び方を身につけることを優先させてあげたいと思っています。

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一人ひとりが安心できる場所で、自分のペースを取り戻し、「やってみよう」と思える瞬間を待つ。心和中学校では、「学校」という枠にこだわらず、柔軟な発想で子どもたちの支援を行う大切さを改めて実感しました。

撮影・取材・文/尾関久美子

cocreco写真提供:心和中学校

大阪市立心和中学校

住所:大阪市浪速区日本橋東3-1-23

電話:06-6636-5155

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