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『LOST10』は秋ドラマの大本命になるか?鍵を握る小栗旬の圧倒的存在感|沼の中心で愛をさけぶ Vol.13

  • 2026.10.29

放送前から「10年に一度の当たり年」なんてボジョレーヌーボーみたいなことを言われていた秋クール。蓋を開けてみるや前評判に違わぬ秀作揃いで、連日様々なドラマがトレンド入りを記録しています。

中でもクオリティと華やかさで群を抜いているのが、『LOST10』。『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』の湊かなえ3部作をはじめ、近年では『最愛』『下剋上球児』と常にハイレベルな作品を生み出し続けてきた、脚本:奥寺佐渡子×監督:塚原あゆ子×プロデュース:新井順子の鉄板トリオが手がけた新作は、何がそんなに面白いのか。

今回の「沼チュー」は、『LOST10』の魅力と、芸歴30余年を経てなお最高値を更新し続けるあの人について語ります。

『LOST10』の何がそんなに面白いのか?

『LOST10』は、6人の男女が消息を絶った遭難事件から始まる山岳ミステリー。警察の懸命な捜索により、山中で参加者の一人は発見されるものの、すでに死亡。さらにその男には、1億5000万円もの生命保険がかけられていた。

横浜流星がいろいろな過去やトラウマを抱える田舎の刑事を演じる。 ©TBSスパークル/TBS

事件を追うのは、北海道の所轄刑事・小駒(横浜流星)と敏腕保険調査員・直(小栗旬)。山の中という、防犯カメラも通信電波もない“暗室”で何が起きたのか。めくるめく謎に、多くの視聴者が翻弄されています。

死んだのは、「オリエントダイナー」という飲食店を営む二階堂(金子昇)。保険金の受取人は、14歳年上の妻・ハルネ(斉藤由貴)。またその後、ツアーガイドを務める田畠(飯豊まりえ)と、ツアーの参加者の一人であり、中学時代の小駒の恩師である亜矢(中村アン)が無事保護される。

しかし、ツアーの参加者にはそれぞれ500万円の山岳保険がかけられており、その受取人が亜矢であることが判明。さらに、意識を取り戻した田畠が、難病の娘・乃々(木内天奏)を残し、小駒の目の前で投身自殺。事件の背後に、ただの遭難ではない闇がうごめいていることを予感させたところで、第2話は幕切れとなりました。

ツアーガイド、田畠の娘が入院する病院の主治医、King Gnuの井口理も怪しさ満点。 ©TBSスパークル/TBS

過剰な説明を挟み込まず、時に視聴者を混乱させながらも振り落とさせない絶妙なバランスで進む濃密なストーリー。壮観たる山の景色を広大なスケールでとらえた映像美と、1フレームも見落とせない意味深な画づくり。そして、小駒や直を筆頭としたユニークなキャラクター。この大胆かつ堅実なつくりは、まさにヒットメーカーのなせるワザです。

中でも本作最大の求心力となっているのが、ちりばめられたいくつもの謎です。まずは、現時点で提示された謎を整理しながら、『LOST10』が描くものを考察してみましょう。

二階堂はなぜ山に登ったのか?

司法解剖の結果、登山中に睡眠薬を服用していたことが判明した二階堂。睡眠薬によって意識が混濁し、足を滑らせて転落死したのではないかと見られています。

この二階堂というのが、相当な横暴キャラ。山にも軽装で入っており、軽率で勝手な言動は同じツアーの参加者である亜矢から咎められるほど。おおよそ山好きには見えません。そんな二階堂がなぜツアーに参加したのか。これが、そもそもの謎。

二階堂の営む「オリエントダイナー」は多くの外国人労働者を雇用しており、中には在留カードの期限が切れている者も。おそらく「オリエントダイナー」では不法就労が黙認されていたと考えられます。つまり、飲食店はあくまで隠れ蓑。二階堂は、不法滞在者に何らかの犯罪行為をさせ、利益を得ていたのではないかというのが、現時点での見立てです。

この仮説を裏付けるのが、ハルネです。家宅捜索にやってきた警察の目を逃れるように、ハルネは二階堂のパソコンやスマホを処分。さらにその後、ショッピングセンターまで喪服を買いに来た際、駐車場に停めてあった車のトランクにパソコンなどを隠し、何者かに押収させていました。

この描写からわかることは2点。二階堂は、警察に見られてはいけない不正なデータを所持していたこと。そして、ハルネには隠蔽行為の片棒を担ぐ共犯者がいることです。また、この時点で自由に身動きができることから考えて、この共犯者に関しては亜矢と田畠は除外と見ていいでしょう。

「オリエントダイナー」が何らかの犯罪の温床になっていたと推測できる根拠は他にもあります。それは、店内に侵入した直が従業員たちによって拉致されたこと。彼らは不法侵入した直を警察に突き出すためだったと弁明していますが、それにしては随分と乱暴な手口。むしろ「オリエントダイナー」の店内には、第三者には見られてはいけない何かが隠されていると考えたほうが自然です。

二階堂は、こうした犯罪行為の元締めであり、何らかのトラブルもしくは怨恨によって殺害された。死亡する2ヶ月前に保険金が1億5000万円に増額されていた点から見ても、ハルネがこれらに加担していることは間違いなさそうですが、手引きをしている黒幕は他にいるのでしょう。では、その黒幕とは誰か。

田畠はなぜ自殺したのか?

第2話のラストで衝撃の死を果たした田畠。それまでの間に娘に対する深い母親の愛情が描かれていた分、難病の愛娘を残して死を選んだことに多くの視聴者が言葉を失いました。

2話の最後にまさかの投身自殺をするが…。 ©TBSスパークル/TBS

ただ、あれが自殺だったのかというと、少し疑問が残ります。病院から抜け出す直前、田畠は誰かから電話を受けていた。この電話により様子が豹変。最後は「すべて丸く収まる」と謎の言葉を残し、制止する小駒たちを振り切って、マンションから飛び降りました。

つまり、自らの死をもって何らかの事実を闇に葬り、それによって娘を守るつもりだったと考えられます。彼女を追いつめる脅迫のような言葉が、最期のあの電話で告げられた。

全容は正直まだつかみ切れませんが、田畠が自宅へ行ったことは一つのヒントとなりそうです。飛び降りるだけなら病院の屋上でもいい。それを一旦自宅に帰ったということは、田畠の自宅に何かがあるということです。

自宅の鍵が開いていたことから見ても、自宅で何かを処分するなり、電話相手から命じられたことを実行した上で、屋上に上がった。田畠もまた何らかの不正に加担していたと推測できます。

となると怪しいのが、彼女がツアーガイドであるということ。5人の男女が参加した登山ツアー。参加者同士は特に何の接点もないように見えますが、おそらく何らかの共通の目的があったのではないでしょうか。

横浜流星の恩師という役どころは何かの伏線なのか? ©TBSスパークル/TBS

亜矢は、田畠について高山植物に詳しいと証言していました。ここからは完全に推測ですが、たとえばその高山植物の中に違法薬物の原料となるものがあったらどうでしょうか。

小駒の故郷では違法薬物が蔓延していました。また、薬物中毒により小駒は目の前で友人を亡くしています。となれば、今回の事件の背景にも薬物汚染がある可能性は十分あります。

現に、ハルネが性急に口をすすぐ場面が何度か描写されていました。すでにハルネも薬物に手を染めており、あれがその症状だとしたら……? 「オリエントダイナー」では薬物の製造が秘密裏に行われており、二階堂が山に登ったのも原料となる植物を採取するため。そして、田畠もその片棒を担がされていたと考えると、彼女の死の理由も見えてくる気がします。

田畠は副業でフリードライバーをしていたようですが、おそらくこのフリードライバーというのが、二階堂をはじめとした、バラバラに見えるピースとつながる接点だったのではないでしょうか。そもそも検出されたゾルピデムも実は睡眠薬ではなく、違法薬物の成分として体内に残っていた……なんてことも考えられそうです。

門伝隆太郎とは何者なのか?

そして、もしあの登山ツアーの参加者が偶然集まったのではなく、何らかの意図のもとで引き寄せられているとしたら、俄然怪しくなってくるのが、残る3名の消息。中でも注目したいのが、門伝(兵頭功海)です。なぜか。理由は一つ。門伝が、小駒と同じ30歳だからです。

友人の哲を亡くしたとき、一緒に薬物に手を出していた2名は生存、のちに施設に送られたと小駒は説明していました。この2名のうち、一人は小駒に送ったメールの宛先から「阿部大志」であるとわかっています。つまり、残る一人が門伝なのではないかというのが、現時点で出されたカードからできる大予想。

小駒は門伝の名前に見覚えがないようですが、門伝には美咲(森田想)という妻がいるので、門伝という特徴的な苗字が妻の姓ならば説明はつきます。門伝の下の名前は隆太郎ですが、隆太郎はありふれた名前なので、小駒がピンと来なくても不思議ではないはず。

中学時代に薬物に身を堕とした門伝が登山ツアーに参加しているとしたら、このツアーが薬物使用者たちの“アジト”的なものだったという仮説もより有力になります。そして、そうなってくると門伝たち3名が72時間の壁を過ぎても見つからないのも当たり前。彼らはすでに下山しているのではないでしょうか。ハルネの車から荷物を持ち去ったのも、門伝ら3名の行方不明者のうち誰かという説も十分にありそうです。

iPhoneより進化し続ける男・小栗旬

と、ここまで考察を繰り広げてきましたが、まだ第2話が終わったところ。キーパーソンとして発表されていながら、いまだ登場していない松下洸平、市川実日子など明かされていないカードも多く、あくまで妄想の域を出ません。

その上で、じゃあ誰に注目していけばいいのか。今後のポイントを挙げるとすれば、やはり直ではないでしょうか。

お調子者に見えるけどその裏に別の顔がある、そんなことを思わずにはいられない小栗旬のタダモノじゃない存在感がすごい。 ©TBSスパークル/TBS

すでにこれまでの背景が明かされている小駒に対し、直は素性がほぼ不明。学生時代は全国統一模試のことしか考えていなかったという発言から、エリートであるのは窺えますが、なぜ彼が保険調査員の仕事をしているのか、その理念や目的は一切見えてきません。

「すべてを疑え」が本作のテーマ。何より直自身が「疑い尽くして残ったものだけが真実だ」と発言していました。ならば現時点で最も疑わしくない、オモシロおじさん・直こそが最も疑わしい人物と言っていいでしょう。

そして、この直を演じる小栗旬のなんと魅力的なことか。「こんな小栗旬が見たかった」と日本列島が諸手を挙げるような、飄々とした胡散臭い人物をチャーミングに演じています。

言ってしまえば、小栗旬なんてもう俳優としてのキャリアは行けるところまで行った人です。若手俳優に取材すれば、3人に一人は憧れの俳優に小栗旬の名前を挙げ、ロールモデルとして後輩に与えた影響は絶大。U45の俳優界に限って言えば、小栗旬はもはやボスみたいな存在です。

だから今さら小栗旬を褒め称えたところで何も面白くはないわけです。今さら小栗旬にメロがったところで何の新鮮味もないわけです。

なのに、メロい。なのに、うまい。これが、本作の小栗旬のいちばん恐ろしいところ。

アパートの隣人同士なところも良い。 ©TBSスパークル/TBS

もうさんざん見てきた小栗旬なのに、小栗旬らしい安定感がありながら、どこかフレッシュ。43歳にしてなおバージョンアップを図ってきてる。iPhoneより進化し続ける男。それが小栗旬なのです。

それくらい直は、軽やかで、有能で、でも肝が小さくて、愛らしくて、不敵。最初は直を警戒していた小駒ですが、田畠のマンションに向かう車の中で、チラリと直を一瞥したときの眼差しを見ましたか。もう完全にバディとしての信頼ができてるの。ウザいおっさんだけど、憎めないなって顔してるの。横浜流星の顔が完全に月9のヒロインだった。これが石原さとみなら今すぐラブストーリーが始まってるし、石原さとみじゃなくてもいい、横浜流星と小栗旬で何かが始まる顔してた! 今からmiwaの『ヒカリヘ』かけるね!

43であんなに短パンをキュートに着こなせる男がいるの? 誰だよ、おじさんの短パンは不快とか言ったやつ。ありし日の炎上騒動をバッサリと終わらせる小栗旬の短パン大正義。いつまでも少年らしい遊び心を持っている小栗旬だから似合うスタイリングで、この期に及んでまた日本中を恋させようとしている小栗旬が本当に怖い。

横浜流星とのバディ感も最高です。口が悪く血の気の多い小駒が猛牛なら、直は赤い布を翻す闘牛士。うまく操縦している感じが年の差バディにぴったりです。そこに今や同世代を牽引する存在となった横浜流星と、俳優界のボス・小栗旬の構図が重なって、虚実混交の見応え。横浜がひと回り上の先輩に真っ向から立ち向かえば、小栗も胸を貸しつつおいしいところは譲らないというガチ勝負感が覗いて、二人の掛け合いだけでも延々と見ていたくなる面白さです。

せっかくなので、小駒が完全に信じ切ったところで直が素性を明かし、小駒を絶望に叩き落とすという鬼畜展開が見たいのですが、どうでしょうか、新井プロデューサー。

いずれにせよ奥寺×塚原×新井なら、私たちの予想を遥かに上回るものを見せてくれるはず。この秋は『LOST10』に“Lost Myself(夢中になる)”しましょう!

『LOST10』
毎週金曜日22:00~より、TBS系列で放送中。

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