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水をかけるだけ?中国の若者に広がる「レンガ育て」ブーム──夢中になる意外な理由

  • 2026.10.29

ペットも子どもも持たず、代わりに「レンガ」を育てる。そんな一風変わった趣味が、中国の若者の間で広がっている。英紙The Guardianが現地時間10月26日に報じ、海外でも「奇妙な趣味」として話題になっている。なぜレンガなのか。(フロントロウ編集部)

水をかけて、苔が生えるのを待つだけ

やり方はシンプルだ。拾ってきた古いレンガに1日数回、霧吹きで水をかけ、空気中を漂う苔の胞子が付着して育つのを待つ。韓国メディアThe Asia Business Dailyによると、散歩中に道端や川辺などで見つけたレンガを持ち帰り、皿やトレーに置いて育てる人が多いという。

育てている人は自らを「レンガの親」と名乗り、レンガを「レンガベビー」と呼ぶ。The Guardianによると、中国のSNS「微博(ウェイボー)」では、関連するハッシュタグの閲覧数が500万回を超えた。中国メディアでは、水やりを忘れても苔は休眠するだけで、再び水を与えれば緑が戻る「ほぼ不死身」の存在として紹介されている。

SNSには「猫も飼っていないし、恋愛もしていない。だからレンガを育て始めた」という投稿もある。

「KPIもない」ことが癒やしになる

この趣味が支持される理由は、手間がかからないことだけではない。中国のSNS「小紅書(RED)」に赤茶色のレンガの写真を投稿したユーザーは、「成果を出す必要も、達成すべきKPIもない。花を咲かせるよう求める必要もなく、ほかのレンガと育ち具合を比べることもない」とつづった。

The Guardianは、その背景に若者を取り巻く厳しい社会状況があると指摘する。中国の公式統計では、学生を除く16~24歳の若者の失業率は約20%に達している。出生率も2025年に過去最低を記録した。激しい受験競争をくぐり抜けても仕事が見つからず、出世競争から降りてストレスの少ない生活を送る「寝そべり」と呼ばれる生き方を選ぶ若者もいるという。

あるユーザーはレンガについて、「多くの人間関係よりもずっと確かな安心感をくれる」と書き、「エネルギーを必要としない心の寄り添い相手」と表現した。愛情の見返りを求められることなく、誰かと一緒にいるような感覚を得られるというわけだ。

ただし、ブームが広がるにつれ、中国メディアは健康面への注意も呼びかけている。苔を育てる過程でカビが繁殖するおそれがあり、目のかゆみや鼻水を訴える「親」もいるという。北京の首都師範大学で苔を研究していた元教授のリー・シュエドンは、レンガを密閉できる容器などで管理するよう勧め、「扱う際は使い捨ての手袋とマスクを着用し、胞子を吸い込んだり、肌に触れたりしないようにするのが一番です」とコメントした。

苔を「愛でる」のは日本人も同じ?

苔を眺めて心を落ち着かせる感覚は、日本人にもなじみ深いものかもしれない。京都の西芳寺は、庭園におよそ120種類の苔が生育していることから「苔寺」の名で親しまれている。

ガラス容器の中で苔を育てる「苔テラリウム」も人気だ。ウォーカープラスが紹介した大阪の苔アーティストによると、苔は成長がゆっくりで、トリミングは半年に1回程度でよいという。一方、作り方や育て方を誤ると、苔が腐ったりカビが生えたりすることもある。

お金も手間もあまりかからず、成果を求められることもない。「何もしなくていい」相棒を求める気持ちは、国が違っても共通するものがありそうだ。

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