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齋藤飛鳥が魅了された今村夏子『むらさきのスカートの女』|読了後に襲う“奇妙な感覚”とは?

  • 2026.10.29

読書をこよなく愛する俳優・齋藤飛鳥さんが選りすぐりの書籍を一冊ピックアップし、その本の世界観をファッションやヘアメイクなど心ときめく感性で表現する連載企画。読み終えたあとに残る奇妙な感覚が印象的な今回の作品。ふと滲む異様さのある作品の空気を感じて。

今月の作品:『むらさきのスカートの女』今村夏子宇 著

気になる憧れや惹かれる想い? その関心が次第に執着へと変わる

カーディガン ¥27,500(CABaN/CABaN Marunouchi)、ワンピース ¥59,400(URUH)、シューズ ¥35,830(TANNAT/HANA SHOWROOM)

いつもの公園の、いつものあの場所に現れる「むらさきのスカートの女」。気になって仕方がない心情から、やがて見ている側の〈わたし〉が執拗に執着し壊れていくような怖さを描く。美しいシルエットやレイヤードで静けさのなかに放たれる存在感を纏い、憧れなのか、惹かれているのか、それはなにか裏側に潜む欲望が透過している感覚なのかもしれない。


関心の先にある支配欲、自己投影。人間の心理の危うさを映して

”普通”と”異常”を隔てる境界線って、いつだって自分の中に存在するのかもしれない

上に着たカーディガン ¥39,600(PERVERZE/PERVERZE CUSTOMER SUPPORT)、中に着たカーディガン ¥29,700(LOUSTIC/LOUSTIC SHOWROOM)、スカート ¥27,400(overdue flair/HANA SHOWROOM)、その他はスタイリスト私物

〈わたし〉という一人称で進む物語。その〈わたし〉は、〈黄色いカーディガンの女〉。「むらさきのスカートの女」を観察し、行動を把握し、彼女の人生に介入していくが、〈わたし〉自身は誰からも見られていない。その〈黄色いカーディガンの女〉の孤独感や異様さに触れるようにー。まろやかなイエローのカーディガンを重ねて静かな引力を生んで。


異様でいて不気味さが残るもののどこか少し腑に落ちる感覚が面白い

ジャケット ¥99,000、ワンピース ¥49,500(共にCABaN/CABaN Marunouchi)、シャツ ¥33,000(tiit tokyo/THÉ PR)、シューズ ¥39,600(HENRIEN VARGO(別注)/TOMORROWLAND)

自宅の本棚で二冊見つけたこの作品。一冊は心当たりがあるけど、もう一冊はいつ、どこで手に入れたのか、全く記憶にない。そんな不思議な入り口だったのですが……内容もかなり不思議なこの作品。謎めいていて妙に惹きつけられるなんとも形容しがたい違和感のある読後感が印象的で、それをこの連載で表現してみたいと思い、今回選びました。

主人公「わたし」が、気になる「むらさきのスカートの女」を執拗に観察するけれど、結局最後まで「わたし」と「むらさきのスカートの女」の関係性が断定されず、違和感が残ります。後半でそれぞれの名前も出てくるけれど、なんだかリアリティがなく、あまりピンとこなくて。結局、誰と誰? どういう関係の人達の話なの?と、全部分からないのが気持ち悪い(笑)。また、「むらさきのスカートの女」がどんどんと人間らしくなっていく描写が印象的でしたが、そこには気味悪さと面白さが混在する感覚でした。

撮影の世界観作りも、この本が表すちょっとした不気味さを軸に考察。“執着”という言葉をキーワードに挙げつつも、なぜ「わたし」が「むらさきのスカートの女」に執着しているのかも読んでいて解明はされないし、なぜそんなに観察するようになったのか、きっかけも不明。愛情か、憧れか、そうじゃないのか、さえも書いていない。今回、そんな不穏さをカメラマン三瓶さんがどう撮ってくれるのかは私自身も楽しみでした。

ちょうどこの作品を読んだ後の感覚のように、想いや想像の余白を与えてくれるような撮影の仕方をしてくれたのかなと、撮られていて感じました。だから、私も表情を「作る」よりも、静かに気配を感じるような佇まいの見え方だけを意識しました。

この本は、読んだ後すっきりとしないですが、“人間の内側には、そういう部分を持ち合わせていそう”と、少し腑に落ちるところもあります。少し皮肉めいていた部分や、自分がいつ「わたし」側に行くか分からない、という危うさを感じるだけでもいいのかも。違和感を残して終わるこの不思議な作品を、ぜひ味わってみてほしいです。


\今月の1冊!/『むらさきのスカートの女』今村夏子 著/朝日文庫・朝日新聞出版刊

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、意図的に自分と同じ職場で働きだすように誘導する……。第161回芥川龍之介賞の受賞作。

model : ASUKA SAITO

photo : YASUTOMO SAMPEI

styling : KUMIKO SANNOMARU

hair & make-up : YUKIE TSUJIMURA[ende]

edit & text : MAIKO WATANABE

web edit : KIMIE WACHI

※記事の内容はsweet2026年10月号のものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください.

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