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「悪い!すぐ振り込むよ!」入居8年目男性が突然失踪→強制執行日に目撃した“異様な光景”

  • 2026.11.6
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。賃貸の現場に25年携わっている宅建士のひろです。

「家賃が少し遅れても、連絡さえつけば大丈夫」。実際その通りです。管理会社は払えない事情があっても、連絡がとれる人とは一緒に解決策を探します。しかしその「連絡」が途切れたとき、話はまったく別の方向へ進んでいきます。

今回は、私が賃貸会社の管理部門で働いていたころに担当した、家賃を明るく払い続けてくれた入居者さんが、ある日いなくなったお話です。

8年間、明るく家賃を払い続けていた入居者が…

担当していたアパートに、8年ほど住んでいた単身の男性がいました。トラックの運転手のAさんで、電話をかけるといつもハンズフリーで運転中でした。せわしない話し方から、忙しい方なのだろうと思っていました。

家賃が遅れることはたまにありました。それでも私が電話でこう伝えると、Aさんから決まって明るい声が返ってきます。

「忙しいかもしれないけど家賃ちょっとお願いね!」「あっ、悪い!すぐ振り込むよ!」

そして本当にすぐに振り込んでくれる。特に問題視することもなく、私にとっては「少しうっかりしているけれど、気持ちのいい入居者さん」でした。

電話がつながらない。ドアには新聞があふれていた

ある月、いつものように家賃が遅れていたので、電話をかけました。出ません。次の日も出ない。1週間経っても、まったくつながりません。さすがにこれはおかしいと思い、アパートを訪ねました。部屋に人の気配はなく、ドアの郵便受けには新聞があふれかえっていました。

緊急連絡先や、前もって聞いておいた別の連絡先にも問い合わせましたが、誰も行方を知りません。

「私たちも連絡がとれないのよ…」

勤めていた会社もすでに辞めていました。それから一度も連絡がつかないまま、淡々と手続きは進んでいきました。不在のまま裁判を経て、最後は強制執行です。

意外に思われるかもしれませんが、たとえ入居者がいなくなっても、管理会社や大家さんが勝手に荷物を処分することはできません。法律にのっとって裁判を起こし、判決を得てから、裁判所の執行官による手続きで部屋を明け渡してもらう必要があります。その間、家賃は入らず、時間も費用もかかります。私たちもただ待つことしかできませんでした。

執行の日、捨てられていくアルバムと手紙

執行の日は淡々と進んでいきました。全員が必要なことしか話さず、どんよりとした空気が漂っていました。

部屋に入ると、荷物はすべて残されたままでした。多少荒れてはいましたが、生活感のある状態です。玄関には督促状などが散らばっていました。事件や事故のような様子ではなさそうだと、そこで感じました。

親族の方は大変申し訳なさそうにしていました。保証人ではなかったので、費用を支払う義務はありません。それでも「せめて荷物の処分費だけでも払わせてほしい」と、私と一緒に現地へ来てくれたのです。

処分費と保管費用は、合わせて40万円ほど。すべて親族の方が負担してくれました。

仕方のないことだと、頭では分かっています。当然処分しなければならず、そのままにしておくわけにもいきません。それでも、アルバムや手紙のような、その人の人生そのものが捨てられていく様子を見たときは、何ともいえない悲しい気持ちになりました。

あの「悪い!すぐ振り込むよ!」という元気な声を思い出すと、最後にひと言だけでも聞きたかった、と今でも思います。

「払えない」より怖いのは、連絡が途切れること

Aさんに何があったのかは今も分かりません。ただ、もし払えない事情があったのなら、最初の1か月で「実は払えない」とひと言連絡をくれていたら、と考えずにはいられません。

管理会社にとって本当に困るのは、払えないことそのものより、連絡がとれなくなることです。

事情を話してもらえれば、支払い方法を相談したり、無理のない形で退去の準備を進めたりと、まだ選べる道がありました。家族に大きな負担をかけることも、大切な思い出の品を手放すことも、避けられたかもしれません。

家賃の支払いが苦しくなったときの、3つの行動

もし家賃の支払いが苦しくなったら、次の3つを思い出してください。

1. 遅れそうだと思った時点で、早めに連絡する

遅れてしまってからより、遅れる前のほうが話がしやすくなります。管理会社や大家さんには、払えない事情があるのなら、まず知らせてください。

2. 事情を伝えて、支払い方法を相談する

いつなら払えるのか、一度に難しければどうするか。事情がわかれば、管理会社や大家さんも、一緒に考えられることがあります。

3. 公的な支援も、確認してみる

離職や休業などで収入が減り、住まいを失うおそれがある場合は、一定の要件を満たせば、家賃相当額が一定期間補助される「住居確保給付金」という制度があります。生活に困りごとや不安があるときは、まず地域の相談窓口(自立相談支援機関)に相談してください。要件などは、お住まいの自治体の窓口で確認しましょう。

恥ずかしいと思わずに、まず管理会社や大家さんに連絡してください。「払えない」のひと言は、あなたの暮らしと、大切なものを守る最初の一歩です。

参考:
不動産引渡(明渡)執行(裁判所)
生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)


ライター:ひろ宅建士ライター

賃貸仲介で15年、独立後は賃貸管理会社を経営して10年。通算25年にわたり、不動産の現場に携わる宅建士。仲介時代は店舗責任者として、部門全国1位の表彰を受けた。管理会社の経営者として、入居者対応、退去立ち会い、原状回復、空室・空き家の管理など、大家さんと入居者の双方の悩みに向き合ってきた。現場で見てきた「正論だけでは割り切れない場面」をふまえ、わかりやすく、現場に根ざした不動産情報を届けることがモットー。


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