1. トップ
  2. 住まい
  3. 「今すぐ借りたい!」引っ越し当日に入居を断られた男性…大荷物で駆け込んだ不動産店での“結末”

「今すぐ借りたい!」引っ越し当日に入居を断られた男性…大荷物で駆け込んだ不動産店での“結末”

  • 2026.11.7
undefined
出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。賃貸の現場に25年携わっている宅建士のひろです。

引っ越しの当日に入る部屋がない。そんなことが起きたらどうしますか。

今回は、私が賃貸仲介の営業をしていたころ、雪の夜に起きた出来事をお伝えします。1台のタクシーで、大きなキャリーケースを抱えて駆け込んできた男性のお客様と、それに応えようと走り回った1日の話です。

部屋探しに大荷物で来たお客さんの要望は…

店の前に1台のタクシーが止まりました。降りてきた男性は、大きなキャリーケースといくつもの荷物を、店の入り口にどさっと置きました。

部屋探しにそんな大荷物で来る人はいません。店にいた営業マンは全員、正直「これはまずそうだな」と身構えました。接客についた私が希望の条件を聞き始めると、その方はほぼ予想どおりの言葉を口にしました。

「何としても、今日から入りたいんです。今すぐ借りたい!」

部屋を借りるには入居審査があり、書類をそろえ、家主さんの許可も必要です。即入居どころか、今日の今日入れる部屋など普通はありえません。

それでもこの荷物には何か事情があるはずだ。そう思って話を聞いていきました。

断られたのは、引っ越し当日だった

その方は、もともと今日から他社で契約した別の部屋に入居する予定でした。ところが直前になって、家主さんから「どうしても貸せない」と断られてしまったのです。

元の家はもう退去していて、引っ越し業者は明日朝来てしまう。仕事も始まる。今日入れる部屋がなければ、明日からの生活が成り立ちません。

その方はいろいろと聞いてまわりましたが、「今日からはさすがに…」と断られ続けてここまで来たそうです。

「もう頼れるところがないんです。だからここまで来ました」

これは大ごとだ、と思いました。ホテル代や荷物の預かり代を出してもらえたとしても、そういう問題ではない。ただのお金の問題ではない、と。

審査、書類、ライフライン。時間との戦い

念のため確認すると、話はすべて事実でした。入居費用は断った側の家主さんが負担してくれるとのこと。お金の心配がなくなったところで、すぐに入居できる部屋を探し、気に入ってもらえました。

しかし、本当に大変なのはここからでした。

まずは審査です。入居日が「今日」の申込書は、それだけで怪しまれます。「間違いじゃない?」「どういうこと?」と言われながら、担当者に事情を丁寧に話し、すぐに結果が欲しいと頼み込みました。書類を準備しながらお客様と一緒に結果を待ち、無事に通りました。

電気はすぐに通せましたが、ガスは開栓の立ち会いが必要で後日。水道は休日で、水道局の開栓手続きができず、その日は水が使えませんでした。ここは我慢してもらい、とにかく入居を最優先にしました。

印鑑証明などの書類も今日はそろいません。手元にあるのは免許証と保険証だけです。もし信じて入居してもらい、あとで書類がそろわなかったら私の責任問題です。

それでも待っていては先に進みません。腹をくくりました。保証人の方に直接電話をして事情を説明し、支店長にも本人と会ってもらい、「書類は後日でいい」と了解をもらいました。

雪の夜、家主さんの家の前で

最後に残ったのは、まだ連絡のつかない家主さんの許可でした。

「家主さんの家に直接頼みに行ってきます。万が一のこともあるかもしれませんが、精一杯お願いしてきます」

そう伝えて店を出ると、外は雪が降っていました。雪の中、家主さんのお宅へ向かうと、ちょうどご帰宅されたところでした。突然の訪問をお詫びして、急いでいきさつを説明しました。家主さんは驚きながらもこう言ってくれました。

「事情も本当の話だったんでしょう?審査も通っているならもう大丈夫。その方を早く入れてあげて」

営業時間はとうに過ぎていました。誰もいない店のシャッターを上げ、お客様を招き入れて、重要事項説明と契約の手続きを済ませたうえで、鍵を手渡しました。

「本当に今日から入れるなんて…もうどうなることか…」

そう言いかけて、その方は泣いていました。その姿を見て本当に頑張ってよかったと、心からほっとしました。私はこう伝えました。

「あなたの真剣な思いと事情がわかったので、なんとかしたいと思いました。どうにかなってよかったです」

書類は後日すべてそろい、お金も審査が通った段階で振り込んでもらえました。

正直に、真剣に伝えれば、誰かが動いてくれる

こんなケースは本当に特殊かもしれません。しかし、たとえ大なり小なり事情があっても、正直に、真剣に伝えればきっと誰かは助けようとしてくれます。

賃貸の世界は、想像より薄情ではありません。部屋探しなどで何か困ったことがあれば、信用できそうな人に、まずは少しだけ相談してみてください。


ライター:ひろ宅建士ライター

賃貸仲介で15年、独立後は賃貸管理会社を経営して10年。通算25年にわたり、不動産の現場に携わる宅建士。仲介時代は店舗責任者として、部門全国1位の表彰を受けた。管理会社の経営者として、入居者対応、退去立ち会い、原状回復、空室・空き家の管理など、大家さんと入居者の双方の悩みに向き合ってきた。現場で見てきた「正論だけでは割り切れない場面」をふまえ、わかりやすく、現場に根ざした不動産情報を届けることがモットー。


【エピソード募集】ご近所・引っ越し・内見で…「えっ!」と思った体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ