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「日産サクラにどこまで迫る?」中国の軽EV「ラッコ」は9月442台を販売…三菱「eKクロス EV」を上回った“予想外の実績”

  • 2026.11.7
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

中国の自動車大手BYDが、日本の軽自動車規格に合わせた軽EV「ラッコ」を発売して約3カ月がたちました。2026年9月の販売台数は442台と、数字だけを見れば控えめに映るかもしれません。ところが受注の状況に目を向けると、少し違った姿が見えてきます。

販売台数と受注の差、選ばれているグレード、補助金を含めた価格まで、ラッコの売れ行きの実態を紐解きます。

9月は442台を販売、中国の軽EV「ラッコ」の実績が判明

中国の自動車大手BYDが、日本の軽自動車規格に合わせて開発した軽EV「ラッコ」を2026年7月28日に発売しました。BYDによると、海外の自動車メーカーが日本の軽規格に合わせて専用に開発した軽EVは、これが初めてとのことです。中国メーカーの軽自動車が日本でどこまで受け入れられるのか、気になっている方もいるかもしれません。

全国軽自動車協会連合会のデータを見てみると、ラッコの販売台数は7月が125台、8月が81台、9月が442台で、9月末までの累計は648台でした。9月は8月の約5.5倍に増えています。同じ9月の軽EVを比べてみると、日産サクラが1,371台、三菱eKクロス EVが170台で、ラッコはサクラの約3分の1にあたる一方、eKクロス EVのおよそ2.6倍となりました。

もちろん、9月末の時点では発売からまだ約2カ月で、販売網の規模や納車が始まった時期も各車で異なるため、台数だけで人気の差を測ることはできません。また、サクラやeKクロス EVが一般的なヒンジ式のドアを持つ軽ハイトワゴンであるのに対し、ラッコは両側スライドドアを備えた背の高いスーパートール型と、車の形も違います。それでも、新しく参入したメーカーとしては一定の存在感を示し始めているといえそうです。そして、この販売台数の裏側には、もうひとつ見ておきたい数字があります。

実は受注1,800台超、販売台数だけでは分からない事情とは

販売台数は、その月に登録や届け出が行われた車の台数を表すもので、その月に入った注文の数とは異なります。BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長が明らかにしたところによると、9月27日時点のラッコの累計受注台数は1,832台だったとされています。9月末までの累計販売台数648台を大きく上回っており、9月27日ごろの時点で約1,300台の受注残があったとも言われています。

これほどの差が生まれてた背景には、グレードごとの納車のタイミングがあるようです。BYDが9月3日に発表した内容によると、8月末時点の累計受注は約1,500台に達していましたが、8月に登録された車は主にエントリーグレードの「RACCO 200」でした。一方で、注文の中心となっていた上位グレードの「RACCO 300Premium」は、9月後半から本格的に納車が始まる予定だったとのことです。さらに、300系に積むバッテリーの供給がひっ迫していたとも言われています。

発売したばかりの車では、生産や輸送、登録のタイミングによって月ごとの台数が大きく動くことがあります。8月の販売が81台だったからといって、その時点で欲しい方が少なかったとは限らないわけです。では、注文を入れた方々は、どのグレードを選んでいたのでしょうか。

最上級グレードが85%? 中国車を選ぶユーザーの意外な特徴

中国メーカーの車と聞くと、価格の安さが魅力で、一番安いグレードがよく売れるのではないかと想像する方もいるかもしれません。ところが、9月27日時点の受注の内訳を見てみると、受注全体の85%を最上級グレードの「RACCO 300Premium」が占めていたとのことです。注文のおよそ6台に5台が最上級グレードという計算です。

ラッコの価格は、RACCO 200が214万5,000円、RACCO 300Plusが239万8,000円、RACCO 300Premiumが249万7,000円で、200と300Premiumの差は35万2,000円です。そのぶん、バッテリー容量は22.4kWhから35.84kWhに増え、一充電走行距離(WLTCモード)は210kmから320kmへと110km伸びるうえ、300Premiumでは内装などの装備も充実します。
85%という数字は購入理由そのものを示すものではありませんが、価格だけでなく、航続距離や装備も含めて選ばれている可能性がありそうです。

日本市場に参入して間もないこともあり、同じく9月27日時点で、ラッコを購入した方の82%がBYDの車を初めて買う新規顧客だったとのことです。BYDが行った成約者アンケート(100人が対象)でも、購入理由の上位には、商品としてのしっかり感、価格に対する装備の充実度、安全性、駆動用バッテリーなどの長期保証、航続距離が挙がっています。人気のボディカラーでは、定番のアークティックホワイトの44%に次いで、明るいチーズイエローが20%で2位に入っているのも、ラッコらしい一面かもしれません。

ただ、ラッコが本当に安いのかというと、補助金まで含めて計算してみると、少し違った結果が見えてきます。

実はサクラのほうが安い? 補助金で変わる購入価格

まず車両本体価格で比べてみると、RACCO 200が214万5,000円、日産サクラのSが244万8,600円で、ラッコのほうが30万3,600円安くなっています。

ところが、2026年4月1日から12月31日までに登録や届け出をした車に適用される国のCEV補助金は、ラッコが15万円、サクラが58万円です。この補助金を車両本体価格から単純に差し引いてみると、ラッコは199万5,000円、サクラは186万8,600円となり、サクラのほうが12万6,400円安い計算になります。2027年1月以降は補助額が見直され、ラッコは9万円、サクラは45万8,000円となりますが、同じように計算してもラッコは205万5,000円、サクラは199万600円で、サクラのほうが安いことに変わりはないようです。

もっとも、これはあくまで単純な計算で、補助金には申請や一定期間の保有といった条件があるほか、オプションや諸費用、自治体の補助金、充電設備の費用などは含まれていません。また、両側電動スライドドアと全高1,800mmの背の高いボディを持つラッコと、サクラとでは、車の形も得意な使い方も異なります。価格の差だけでなく、どちらが自分の暮らしに合うかという視点で比べることが大切になりそうです。

中国の軽EVは日本市場に定着するのか

ラッコの9月末までの累計販売台数は648台と、国内でよく売れている主力の軽自動車と比べれば、まだ小さな規模です。一方で、累計受注は1,800台を超え、最上級グレードへの注文の集中や新規顧客の多さなど、一定の反響があることもうかがえます。

今後は、抱えている注文の納車がどれだけ進むかに加えて、販売店やアフターサービスの広がり、充電環境、そして国産の軽EVとの価格や商品力の比較が、販売を伸ばすカギになりそうです。中国メーカーの軽EVが日本でどこまで受け入れられるのか、これからの販売の動きにも注目したいところです。


参考:2026年4月~9月軽四輪車 通称名別 新車販売確報(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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