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医師から『大腸がん』と宣告された50代男性→2年前から、健康診断で指摘されていた“身体の異変”に「すぐに受診していれば……」

  • 2026.11.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!現役内科医のDai.Sです。

健診で「便潜血陽性(要精密検査)」という判定を受け取ったとき、「もともと痔があるからその出血だろう」「痛くもないし大丈夫」と自己判断で見過ごしていませんか?

実は、この「痔のせい」という思い込みこそが、大腸がんの早期発見を妨げる最大の落とし穴の一つです。今回は、その油断から受診が2年遅れてしまい、思わぬ事態に直面した50代男性の事例をご紹介します。

「2回中1回は陰性だったから」受診を先送りにした2年間

「最近、便が細くなった気がする。体が疲れやすいのも気になって……」

そう訴えて私の外来を訪れたのは、50代の会社員・Bさんでした。話を伺うと、健康診断で「便潜血陽性・要精密検査」の通知を受け取ってから、すでに2年が経過していました。

Bさんが受けていたのは、2日分の便を調べる標準的な便潜血検査です。結果は「1日目が陽性、2日目が陰性」でした。

もともと痔の持病があったBさんは、「出血は痔のせいだろう。2回のうち1回は陰性だったし大丈夫なはず」と自己判断。仕事の忙しさも重なり、精密検査を受けないまま放置し、翌年の健診もスキップしてしまっていたのです。

しかし、次第に排便時の出血が目立つようになり、便の細さや倦怠感といった異変を感じるようになって、ようやく受診に至りました。

大腸カメラで判明した「3cmの腫瘍」とリンパ節転移

来院時の血液検査では、ヘモグロビン値が12.0g/dLと、成人男性としては軽度の貧血が認められました。体内でじわじわと出血が続いていた兆候です。

後日、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を実施したところ、直腸に約3cm大の腫瘍が見つかりました。腫瘍は腸の内側を半周ほど塞ぐように広がっており、組織検査の結果は「大腸がん」でした。

その後、外科手術によってがん病巣は切除できましたが、周囲のリンパ節への転移が確認されました(ステージIII)。そのため退院後も、再発を防ぐために約半年間にわたる抗がん剤治療を行うことになったのです。

便潜血検査で見落とされやすい「3つの思い込み」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Bさんのように精密検査をためらってしまう背景には、受診者が陥りがちな「3つの誤解」があります。

1. 「痔があるから陽性になっただけ」

痔があるからといって、大腸がんが存在しない証明にはなりません。「痔」と「大腸がん」の両方を併発しており、がん側から出血しているケースは決して珍しくありません。実際、痔の有無で便潜血検査の陽性率に大きな差はないとする医学的な報告もあります。「痔持ちだから陽性でも当たり前」と考えるのは禁物です。

2. 「2回のうち1回は陰性だったからセーフ」

大腸がんやポリープからの出血は、常に一定して出ているわけではありません。便が病変を通過する際の摩擦などによって、出血する日としない日があります。そのため、2回のうち「たった1回」でも陽性が出た時点で、精密検査を受ける必要があります。

3. 「もう一度便検査をして陰性なら安心」

「もう一度便潜血検査を受けて、陰性なら問題ないだろう」と再検査を希望される方がいますが、これも誤りです。仮に再検査で陰性が出ても、がんを否定することはできません。便潜血で引っかかった場合の正しい精密検査は、便の再検査ではなく、内視鏡で大腸全体を直接観察することです。

症状が出てからでは遅い。大腸がんは「無症状」のうちに見つける病気

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。

「便が細くなる」「腹痛が続く」「慢性的な貧血・だるさ」「目に見える血便」といった明らかな症状が出たときには、すでに進行しているケースがほとんどです。特に「お腹がパンパンに張って激しい腹痛がある」「便もガスも全く出ず、吐き気がする」といった症状は、腫瘍によって腸が詰まる「腸閉塞(イレウス)」の危険な兆候ですので、一刻も早く医療機関を受診してください。

だからこそ、自覚症状が何もない段階で異常を知らせてくれる「健診の便潜血検査」が命を救うきっかけになります。

また、大腸カメラの大きなメリットは、がんだけでなく「がんの手前のポリープ(腺腫)」を発見し、その場で切除できる点にあります。ポリープの段階で取り除いてしまえば、将来大腸がんになるリスクそのものを劇的に減らすことができるのです。

「大腸カメラは痛そう、苦しそう」と敬遠される方も多いですが、最近では鎮静剤(点滴の麻酔薬)を使い、うとうと眠っているような感覚で楽に受けられる医療機関も増えています。

どうしても内視鏡検査への恐怖心が強い場合や、過去の手術による癒着などでカメラの挿入が難しい場合は、内視鏡を使わずに炭酸ガスとCT撮影で腸内を調べる「大腸CT検査(CTコロノグラフィ)」を行っている施設もあります。不安な点があれば、受診時に医師へ相談してみてください。

医師から伝えたいこと

退院後、Bさんは「あのとき、通知を見てすぐに受診していれば……」と悔しさをにじませていました。もし2年前に受診していれば、早期がんで見つかり、お腹を切る手術も抗がん剤治療も必要なく、内視鏡治療だけで完治できた可能性が十分にありました。

健診の便潜血で「陽性」が出たということは、腸のどこかから出血しているという体からのサインです。

「痔のせい」「たまたま」と片付けず、通知を受け取ったら速やかに消化器内科や内視鏡専門の医療機関を受診してください。


執筆:Dai.S

現役の内科医(専門は消化器内科)。総合内科専門医、消化器病学会専門医、消化器内視鏡専門医、プライマリ・ケア認定医を取得。消化器病だけではなく、内科一般を幅広く診療中。

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