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医師から『骨粗鬆症』と診断された70代女性→毎日“サプリメント”を飲み続けたところ…ある朝、女性を直撃した“恐ろしい悲劇”

  • 2026.11.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。現役内科医のゆっこです。

「骨を強くして、いつまでも元気に自分の足で歩きたい」

そうした前向きな思いから、日頃の治療や健康維持に人一倍熱心に取り組む方は少なくありません。しかし、良かれと思って始めた“自己流のプラスアルファ”が、かえって命を脅かす思わぬ事態を招くことがあります。

地方都市で暮らす70代の女性・Aさんは、骨粗鬆症の治療中に突然意識を失い、救急車で病院へ搬送されました。几帳面で健康意識が高かった彼女が、なぜ倒れてしまったのか。薬とサプリメントの危険な飲み合わせと、潜むリスクについて解説します。

友人の骨折を機に始まった、骨粗鬆症の治療

子どもが独立し、地方都市で夫と穏やかに暮らす70代女性のAさん。これまで大きな病気を患ったこともなく、健康には人一倍気を配っていました。

そんなある日、近所に住む同年代の友人が自宅で転倒して腕を骨折。「骨粗鬆症だったみたい。あなたも一度、調べてもらったほうがいいわよ」と、不自由そうにギプスをつけた腕で話してくれました。

不安になったAさんは、すぐに近くの整形外科を受診。骨密度を測定したところ、若年成人の平均値(YAM)の70%未満であることが判明し、「骨粗鬆症」と診断されました。医師からは、毎日服用する小さなカプセル薬(活性型ビタミンD3製剤)が処方されることになりました。

「努力が足りない」真面目さが生んだ焦り

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

几帳面な性格のAさんは、医師や薬剤師の言いつけを守り、1年半にわたって一日も欠かさず薬を飲み続けました。

しかし、定期的な検査での骨密度の改善はわずかで、依然として目標数値を下回ったまま。「血液中のカルシウム値は安定していますね」と医師に言われても、Aさんの心は晴れませんでした。

「せっかく毎日薬を飲んでいるのに、目に見えて良くならない。私の努力が足りないせいだわ」

骨をもっと強くしなければと焦ったAさんは、ドラッグストアへ向かいました。棚に並ぶ製品の中から、一番カルシウム含有量の多いサプリメントを選び出し、処方薬と一緒に毎日飲むことにしたのです。薬局で「市販のサプリメントを自己判断で併用しないように」と説明を受けていたものの、「不足しているカルシウムを補うだけなら体に良いはず」と軽く考えてしまいました。

さらに、「骨を丈夫にするには運動も欠かせない」と思い立ち、朝と夕方の涼しい時間帯を狙って、それぞれ30分ずつのウォーキングも日課に加えました。

猛暑の中のウォーキングと、忍び寄る脱水

季節は本格的な夏を迎えていました。

もともと暑い時期は食欲が落ちやすいAさんでしたが、「薬とサプリメントだけは絶対に抜いてはいけない」と、毎日欠かさず飲み続けました。

ある朝、目覚めた瞬間に強い吐き気を覚えます。

「夏バテかしら……。でも、日課の運動を休むわけにはいかないわ」

体に鞭打ってウォーキングに出かけたものの、歩くにつれて吐き気は増し、足に力が入らなくなっていきます。何とか自宅へ戻ったものの、朝食には一口も手をつけられず、水分もほとんど受け付けなくなっていました。夫から「病院へ行こう」と促されたものの、横になれば治るだろうとソファに倒れ込みます。

しかし、時間の経過とともに視界がかすみ、頭に靄がかかったように意識が朦朧としていきました。遠くで自分を呼ぶ夫の声と、けたたましく近づいてくる救急車のサイレン。それを最後に、Aさんの意識は途切れました。

搬送先で告げられた「高カルシウム血症」の正体

病院へ救急搬送されたAさんに下された診断は、「高カルシウム血症」による意識障害でした。

救急外来での迅速な大量点滴治療によって翌日には無事に意識を取り戻し、数日間の入院治療を経て症状は改善。主治医は、Aさんと夫に倒れた原因を丁寧に説明しました。

「Aさんが整形外科で処方されていたのは『活性型ビタミンD3製剤』という、腸からのカルシウム吸収を強力に高めるお薬です。そこへ自己判断で高用量のカルシウムサプリメントを上乗せしてしまったため、血液中のカルシウム濃度が急上昇してしまいました。

実は、血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎると、腎臓が尿を濃縮できなくなり、体内の水分が尿としてどんどん外へ逃げてしまう『多尿』が起こります。さらに高カルシウム血症による強い吐き気で水分が摂れなくなり、そこへ猛暑による発汗が重なったことで、急速に重い脱水状態へ陥ってしまったのです。

脱水になると腎臓から余分なカルシウムを排泄できなくなるため、血中カルシウム値がさらに跳ね上がり、意識障害を引き起こすという危険な悪循環(高カルシウム血症クリーゼ)に陥っていました」

整形外科で定期的に採血をしていたのは、薬の効果を確認するだけでなく、「血中カルシウム値が危険なレベルまで上がりすぎていないか」を監視するためだったのだと、Aさんは改めてその意味の重さを実感しました。

「良かれと思って」を過信しないために

幸いにも早期の適切な治療により、Aさんは後遺症なく無事に退院することができました。「良かれと思って足したサプリが、まさか救急車で運ばれる原因になるなんて……」と、深く反省していました。

骨粗鬆症の治療において、カルシウムは骨を補強するための大切な材料です。しかし、「多ければ多いほど骨が強くなる」わけではありません。

注意していただきたいのは、「通常の食事から摂るカルシウム」と「サプリメントなどの濃縮物」は全くの別物であるという点です。牛乳、乳製品、小魚、大豆製品など、普段の食事からバランスよくカルシウムを摂取することは安全であり、むしろ積極的に推奨されます。危険なのは、活性型ビタミンD製剤などの処方薬を飲んでいる状態で、自己判断で高濃度のカルシウムサプリメントを過剰摂取することです。

もし処方薬を続けていても骨密度の改善が思わしくない場合は、自己流で市販薬を足すのではなく、必ず主治医に相談してください。現在の骨粗鬆症治療には、骨を壊す働きを抑える薬(ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体など)や、骨を作る力を強力に促す骨形成促進薬など、数多くの選択肢が存在します。

健康のための努力が仇となってしまわないよう、日頃の治療にサプリメントや市販薬を取り入れたいときは、決して自己判断せず、必ず事前に医師や薬剤師へ相談しましょう。


執筆・監修:ゆっこ(現役内科医)

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