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「口の中が気になる」朝食を残すようになった70代父→気になった娘が歯医者へ連れて行くと…明らかになった“意外な原因”とは?

  • 2026.11.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは歯科医師の鷹巣多紀です。

高齢の親の口のトラブルは、本人が痛みを自覚していなくても進んでいるケースが少なくありません。

今回は、痛みがなくても起こる炎症のリスクと就寝時の正しい入れ歯の扱い、そして家族が気づける「食事中のサイン」を解説します。

「痛くない」と話す父が、朝食を残す理由

78歳の父親は、数ヶ月前から入れ歯をつけたまま寝るようになっていました。朝つけ直す手間を省こうと、寝る前に外して手入れをすることを面倒に感じていたのです。

50代の娘は、父親が朝食のパンを小さくちぎり、途中で食べるのをやめる日が増えたことに気づきました。本人は痛みを否定しましたが、詳しく様子を聞き直すと「噛むと入れ歯が動いて、口の中が気になる」と話したそうです。

気になった娘が歯医者へ連れて行くと、意外な事実が明らかになりました。

実は、食パンなどのパン類は口の中の水分を奪いやすく、加齢で唾液が少なくなったり入れ歯が合わなくなったりした高齢者にとって、最も噛みづらく飲み込みにくい食品の一つです。噛むたびに入れ歯が動いて粘膜に擦れ、食べづらさを感じていたのでした。

歯医者で上の入れ歯を外すと、覆われていた上顎の粘膜に広い赤みが見つかりました。義歯性口内炎(入れ歯に覆われた粘膜に起こる炎症)と説明され、入れ歯の汚れや当たり方、噛み合わせも確認することになったのです。

父親には入れ歯の適合にも問題があり、調整を受けました。炎症と食べづらさを一つの原因で説明せず、粘膜と入れ歯の両方への対応を始めたのです。

入れ歯の下は、痛くなくても赤くなる

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

義歯性口内炎は、一般的な口内炎のような強い痛みがないまま進行することがあります。入れ歯を外さなければ見えないため、本人も家族も赤みに気づかない場合が少なくありません。

この炎症の主な原因の一つが、口の中に常在する「カンジダ菌(カビの一種)」の異常増殖です。長時間の装着、清掃不足、合わない入れ歯による慢性の機械的刺激などが重なることで、粘膜に炎症が広がっていきます。

さらに深刻なのは、夜間に入れ歯を装着したまま眠る習慣です。就寝中は唾液の分泌が減って自浄作用が低下するため、入れ歯の裏側にカビや細菌が爆発的に繁殖します。これらを睡眠中に無自覚に気管や肺へ吸い込んでしまう(不顕性誤嚥)ことで、命に関わる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を発症するリスクが約2倍に跳ね上がることが分かっています。入れ歯を夜外すことは、粘膜を休ませるだけでなく、誤嚥性肺炎から命を守るためにも極めて重要なのです。

口内炎が見つかっても、食事を残す理由がすべて解決したとは限りません。入れ歯のがたつきや口の乾き(ドライマウス)、残っている歯の状態なども食べづらさの原因になります。口の状態を整えても食事量が戻らなければ、体調について内科などのかかりつけ医へ相談する必要があります。

寝るときの扱いと、家族が見られる変化

一般には、就寝時は入れ歯を外し、覆われた粘膜を休ませます。ただし、残っている歯や顎の状態、睡眠時無呼吸症候群の治療方針などによって、夜間も装着するよう指示される例外もあります。外す時間は、担当の歯医者に確認してください。

外した入れ歯は、内側の汚れも専用ブラシで落とし、材質に合う義歯洗浄剤を説明書どおりに使います。

【入れ歯の手入れ・破損防止のポイント】

  • 洗面器に水を張り、その上で洗う(万が一ツルッと手から落としても、水がクッションになって割れるのを防げます)
  • 熱湯は変形の原因になり、研磨剤入りの普通の歯磨き粉は入れ歯に傷をつけて菌の温床になるため絶対に使わない
  • カンジダ菌が原因の場合は、抗真菌作用のある入れ歯洗浄剤を選び、必要に応じて歯科医師から処方される抗真菌薬(口腔用シロップやゲル軟膏)を適切に使用する
  • 洗浄後は、乾燥による変形を防ぐために水(または洗浄液)に浸して保管する

入れ歯だけでなく、口の粘膜や残っている歯の清掃も欠かせません。赤い粘膜を強くこすらず、柔らかいスポンジブラシやうがいなどを活用し、歯医者で方法を教わってください。

家族は本人任せにせず、手入れの際に上顎や歯茎の赤み、傷、汚れを一緒に確認してあげましょう。食事に時間がかかる、パンや硬い物だけ残す、入れ歯を気にして口をもぐもぐ動かすといった変化も、受診時に伝える大切な情報です。

手入れが負担なら、外す動作と洗う作業のどちらが難しいかを確かめましょう。家族が手伝う場合も、本人ができる部分は任せ、ブラシの使い方や着脱の方法を歯医者で一緒に教わってください。朝の装着まで含めて手順を決めると、何を手伝えばよいかが分かります。

父親は、手入れ用のブラシと保管容器を洗面所にそろえました。調整と清掃を続け、指示に沿って夜は入れ歯を外すようになると、朝食のパンも以前よりスムーズに食べられるようになりました。粘膜の赤みは再診で順調に改善していることが確認されています。

痛みの訴えだけで判断しない

娘は、食べる量が減っていたのに、痛くないという言葉だけで様子を見ていたことを振り返りました。入れ歯の下の変化は、本人の訴えが乏しくても起こります。

朝食の残り方や噛み方が変わったら、入れ歯を外した口の状態にも目を向けてください。普段の装着時間と手入れの方法を伝え、無理なく続けられる扱い方を相談しましょう。


執筆・監修:鷹巣 多紀
大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。
歯科医師ママkiki|note: https://share.google/uUYsDiSMnkNKZCrOw X: https://x.com/kikimama0405

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