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「介護施設の入居費として」母の口座から“500万円”下ろそうとした50代女性→銀行の窓口で告げられた思わぬ事実に「そんな…」

  • 2026.11.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さん、こんにちは。現役銀行員ライターの加藤隆二です。

ご高齢の親御さんを持つ皆さんのなかには、「もし親が認知症になったら困るから」と、あらかじめキャッシュカードを預かり、暗証番号を聞いておくという対策をしているご家庭も多いのではないでしょうか。

「暗証番号さえ知っていれば、いざという時も親の口座からお金を下ろせるから安心」

実は、その認識が将来大きな悲劇を招く可能性があります。いざ親御さんの介護費用が必要になったとき、それが「大きな落とし穴」に変わる瞬間を、私は長年の銀行窓口業務で何度も目の当たりにしてきました。

今回は、親のキャッシュカードを預かっていた娘さんが直面した、ある出来事についてお話しします。

母のために用意した「3つのアイテム」

親の口座からいつでもお金を引き出せるという安心感が、時として思わぬトラブルの引き金になることがあります。

ある日のこと。私が窓口で対応した50代の女性、Aさん(仮名)。Aさんは80代のお母様の通帳と銀行印、そしてキャッシュカードを持参し、「母の介護施設の入居費として、500万円を引き出したいのですが」と来店されました。

お母様が入居予定の施設は待機者が多く、明後日までに費用を一括で振り込まなければ契約がキャンセルになってしまうという切迫した状況でした。Aさんは「通帳も印鑑もカードも全部揃っているからすぐ終わるはず」と安堵の表情を浮かべて窓口に座られました。

金額が大きいため、私どもはご本人様(お母様)の意思確認やご来店が難しい理由をお伺いします。するとAさんは、「実は最近、母の認知症が進んでしまって、施設に入ることになったんです。暗証番号も私が聞いて管理していますから、代理で手続きをお願いします」と仰いました。母のために良かれと思って準備してきたAさんにとって、それは当然の親孝行のつもりでした。

しかし、この発言を聞いた瞬間、私は大変心苦しい思いを抱えながら、ご出金をお断りしなければなりませんでした。

「誠に申し訳ございませんが、お母様の認知症が進行しているとのことですので、口座を凍結せざるを得ません。Aさんであってもお引き出しはできなくなります」

「えっ、そんな…親のお金なのに引き出せないんですか!?明後日までに施設にお金を振り込まないといけないのに、困ります…」

窓口で真っ青になり、立ち尽くすAさん。キャッシュカードを預かっていても、親のお金が使えなくなるという厳しい現実に直面した瞬間でした。

親の通帳と印鑑があっても「引き出せない」銀行側の事情

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

なぜ親のお金であっても、ご家族が自由に引き出すことができないのでしょうか。

銀行の最大の使命は、「ご預金者様の大切な財産をお守りすること」です。ご本人に判断能力がない状態でお金が引き出されてしまうと、親族間での使い込みトラブルや詐欺被害に繋がるリスクがあります。そのため、銀行側で「ご本人の判断能力が低下している(認知症など)」と知った時点から、口座の出金や解約を制限(凍結)する厳格なルールがあるのです。

「でも、ATMで引き出せばバレないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、一般的なATM引き出し限度額は1日50万円程度ですが、高齢者口座では詐欺防止のためさらに低額(10万〜20万円等)に制限されていることもあります。そのため、数百万円単位の施設入居費用などを急いで用意することは不可能です。

Aさんのように「親の介護費用は親のお金で払うつもりだったのに、お金が動かせない」という事態に陥ると、一時的に子世代が数百万円を自腹で立て替えなければならず、ご自身の生活設計まで破綻してしまう恐れがあります。

認知症が進む前に家族でやっておくべき「正解」の対策

では、このような絶望的な状況を回避するためには、親御さんが元気なうちにどのような準備が必要なのでしょうか。

この例では、ただキャッシュカードを預かるのではなく、銀行の正式な代理人手続きを済ませておくべきでした。

こういった場合は、まず親御さんに判断能力があるうちに、各金融機関が提供している「代理人カード(家族カード)」の発行や「事前指定者(代理人)登録サービス」の手続きをしておくことが有効です。ただし、これらは原則として本人の判断能力があることが前提となるため、金融機関所定の手続きや事前の契約内容による違いに注意が必要です。なお、認知症等で判断能力を喪失した後の払い戻しについては、全銀協の指針に基づき、本人の医療・介護費用に充てることが明らかな場合に限って特例的な対応が認められるケースもありますが、診断書等の確認書類が必要で即座の対応は困難です。

また、より柔軟に財産管理を行いたい場合は、「家族信託」という制度を使って、親御さんの財産管理を子に託す契約を結んでおくのも有効な解決策です。

もしすでに認知症が進行し、Aさんのような状態になってしまったら、「法定後見制度」を利用することで解決(改善)できます。家庭裁判所への申立てから選任までに通常1〜3ヶ月程度かかり、専門家後見人への報酬が月額2万〜5万円程度(資産規模による)継続して発生することには注意が必要です。

事前の準備で、大切なご家族と資産を守るために

親御さんのお金の問題は、ご本人が元気なうちから話し合っておくことが何よりも大切です。

ちなみに冒頭のAさんは、最終的に自身の貯蓄と親族からの借入をかき集めて500万円を一時的に立て替え、なんとか入居期日に間に合わせることができました。しかし、その後の生活費の工面や成年後見の申立て手続きに追われ、精神的にも金銭的にも大きな負担を背負うことになってしまったのです。

親の介護には、想像以上にお金がかかります。「暗証番号を知っているから十分」という思い込みは捨てて、今日からでもご家族で「いざという時の財産管理」について話し合ってみてください。

Aさんのように窓口で立ち尽くすことのないよう、まずは今週末にでも、親御さんの口座の利用限度額や金融機関の代理人サービスの有無を1つ確認してみてください。事前の正しい備えと小さな確認こそが、皆さんと大切なご家族を守る最大の盾になるはずです。


執筆者:加藤隆二

現役銀行員ライター。FP2級(個人資産相談業務)。
銀行勤続30年以上の豊富な融資・預金業務の現場経験を活かし、生活に直結するお金のリアルな事情を発信し続けています。

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