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夫「このキャッシュカードを使って」入院費を引き出そうとした60代妻→しかし、銀行窓口で突きつけられた事実に「どうして…」

  • 2026.11.2
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さん、こんにちは。現役銀行員ライターの加藤隆二です。

ご家族が突然病気で倒れたとき、「当面のお金はキャッシュカードで下ろせばいい」と安易に考えていませんか?実は「家族のお金だから引き出せるだろう」という思い込みが、大きなトラブルを招くことがあります。

今回は、夫が倒れて入院費を支払うため、夫のキャッシュカードを預かってATMに向かった60代の妻・A子さんが直面した思いがけないハプニングと、その解決策をお話しします。同じ状況に陥らないための具体的な準備についても、長年銀行窓口でお客様と接してきた経験を交えて優しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

夫が突然の入院。頼みの綱は預かったキャッシュカード

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

家族の突然の入院は、精神的にも金銭的にも負担がかかります。そんな時、頼りになるはずの預金が引き出せないとしたら、皆さんはどうされるでしょうか。

60代の専業主婦A子さん。ある日、夫(65歳)が脳梗塞で倒れ緊急入院することになりました。入院費用や当面の生活費として、まとまったお金が必要です。幸い、夫から日頃「何かあったらこのキャッシュカードを使ってくれ」と、キャッシュカードの場所と暗証番号を聞いていました。

A子さんは急いで銀行のATMへ向かい、暗証番号を入力しました。しかし画面には「暗証番号が違います」の表示が。動揺したA子さんは「押し間違えたかしら」と2回、3回と入力し直しますが、結果は同じ。3回連続で間違えたため、ついにカードはロック(暗証番号相違によるロックアウト)されてしまいました。

慌てたA子さんは銀行の窓口へ駆け込みました。「夫が倒れて入院して来られないんです。私、妻なんですけど、このカードを使えるようにして下ろしたいんですが!」と必死に訴えます。

しかし、窓口の担当者は申し訳なさそうな顔をしながらも毅然と答えました。「大変申し訳ございません。奥様であっても、口座の名義人であるご本人様の意思確認ができないとお手続きを進めることができません」

「一体どうして…」A子さんは目の前が真っ暗になりました。お金はあるのに夫の治療費を払うことができないのです。

なぜ家族なのに引き出せないのか?銀行の厳格なルール

銀行はお客様の大切な財産を守るため、非常に厳格なルールで業務を行っています。それはご家族であっても例外ではありません。

銀行口座は原則、名義人ご本人以外がお金を引き出したり手続きすることはできません。特に暗証番号ロック解除やカード再発行は、窓口で本人の意思確認が必須です。親族間の金銭トラブルや不正引き出しを防ぐための重要なルールだからです。

もし病気で意識不明になったり、重度の認知症で本人の意思確認ができない状態(意思能力の喪失)になると、ご本人の意思で手続きができなくなり、配偶者でも自由には引き出せなくなります。

いざという時に備える!元気なうちにできる具体的な対策

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

A子さんのように窓口で途方に暮れるお客様を、私は何度も見てきました。こうならないためには、ご家族が元気なうちに対策を打っておくことが重要です。

対策1:代理人カード(家族カード)を作成しておく

手軽な方法の一つが、生計を共にするご家族向けの「代理人カード」を作っておくことです。ご本人の口座からお金を引き出せるカードを、家族用にもう1枚発行する仕組みです。これがあれば、ご本人が入院などで銀行に行けないときも、家族がATMで現金を引き出せます。発行手続きはご本人が窓口などで行います。ただし、ご本人が亡くなった後は使えません。また、ご本人が判断能力を失った後の扱いは銀行によって異なり、使えなくなる場合もあります。

対策2:任意後見制度や家族信託の活用

より本格的な備えとして、認知症などに備える「任意後見制度」や、財産管理を家族に託す「家族信託」もあります。法律に基づき本人の代わりに財産管理を行う権限を家族に与えるもので、預金や不動産の管理・売却などを、託された家族が行えます(お金は事前に信託専用の口座へ移しておきます)。

もしすでに口座が使えなくなってしまったら?

入院費など、ご本人のための支払いであれば、病院の請求書などを持って窓口で相談すると、ご家族への払い戻しに応じてもらえる場合があります。ただしこれは例外的な扱いです。継続して預金を管理するには、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらう手続きが必要になります。この手続きには数ヶ月の時間と費用がかかります。

家族のお金だからこそ、事前の話し合いを

お金の話は家族間でもしづらいものですが、いざという時に困るのは残されたご家族です。

ちなみにA子さんはその後、ご自身の貯金を崩して急場をしのぎ、数週間後に夫の意識が回復してから無事に銀行で手続きを行えました。夫に確かめると、数年前に暗証番号を変えていて、A子さんに伝えていたのは古い番号だったそうです。A子さんは「あの窓口で断られた時の冷や汗は一生忘れない」と仰っていました。

皆さんも、ご自身の口座やご家族の口座について「もしもの時」にどうするか、ぜひ一度話し合ってみてください。事前のほんの少しの準備が、いざという時のご家族の未来と安心を守る大きな力になります。銀行の窓口でもご相談に乗れますので、お気軽にお声がけくださいね。


執筆者:加藤隆二
現役銀行員ライター。保有資格:FP2級(個人資産相談業務)。銀行勤続30年以上の豊富な融資・預金業務の現場経験を活かし、生活に直結するお金のリアルな事情を発信し続けています。

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