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「父の預金から払えばいい」“葬儀代120万円”を下ろそうと銀行に行くが…→窓口で告げられた一言に50代娘が“途方に暮れたワケ”

  • 2026.11.5
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの小泉です。

大切な家族を亡くしたとき、悲しみに暮れる間もなく、葬儀の手配や費用の支払いなど、さまざまな対応に追われることがありますよね。そんなとき、「親の預金があるから、葬儀代はそこから払えばいい」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、亡くなった方の銀行口座は、これまでと同じように自由に使えるとは限りません。

今回は、父の葬儀費用を預金から支払おうとした50代女性の事例を通じて、相続手続き前にお金を引き出す方法と、知っておきたい制度について解説します。

葬儀代くらい、父の預金から払えばいい

78歳の父を亡くした54歳のAさん。父名義の銀行口座には600万円が残っていました。一方、葬儀社から提示された費用は120万円。預金は十分にあるのだから、支払いに困ることはないと考えていました。

ところが、銀行の窓口で告げられた一言に、Aさんは絶句します。

通帳もあり、暗証番号も知っているのに…

父が亡くなったのは、ある平日の朝。突然の別れに悲しむ間もなく、Aさんには葬儀社との打ち合わせや親族への連絡など、やるべきことが次々と押し寄せました。

葬儀費用の見積もりは120万円。自分の預金から全額を支払うのは避けたく、父名義の口座から必要な金額を引き出そうと考えたのです。

ところが、銀行の窓口で事情を説明すると、担当者から返ってきたのは思いもよらない返答でした。

「お亡くなりになった方の口座については、相続のお手続きが必要です」

銀行が父の死亡を把握したことで、口座の入出金などが原則として制限されていました。

通帳もキャッシュカードも手元にあり、暗証番号も知っている。それでも、娘だからという理由だけで、亡くなった父の預金を自由に引き出せるわけではありません。

「父のお金なのに、葬儀代にも使えないの?」

悲しみのなかで、Aさんは途方に暮れました。

実は、遺産分割の前でも払い戻せる制度があった

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

しかし、ここで話は終わりません。

実は、相続人が一定の条件を満たせば、遺産分割が終わる前でも、ほかの相続人の同意を得ずに預金の一部を払い戻せる制度があります。

「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」です。

Aさんの母はすでに亡くなっており、父の相続人はAさんと弟の2人で、法定相続分はそれぞれ2分の1とします。父名義の600万円は、1つの銀行口座に預けられていたものとします。この場合、家庭裁判所の判断を経ずに払い戻せる金額は、原則として次のように計算します。

600万円×3分の1×法定相続分2分の1=100万円

ただし、同一の金融機関から払い戻せる金額は、複数の口座があっても合計150万円が上限です。今回の例では計算上の上限は100万円となります。

「全額ではなくても、100万円なら葬儀費用の大部分をまかなえるかもしれない…」

Aさんは、ようやく少しだけ安堵しました。

もっとも、100万円を必ず受け取れるという意味ではありません。遺言による相続など、制度を利用できない場合もあります。また、必要書類を提出しても、金融機関による確認に時間がかかることがあります。

払い戻したお金も、相続と無関係ではない

もう1つ、忘れてはならない点があります。

この制度で払い戻した預金は、相続とは無関係になるわけではありません。家庭裁判所の判断を経ずに払い戻した場合、原則として、払い戻しを受けた相続人が遺産の一部分割によって取得したものとみなされます。

そのため、今回の100万円を葬儀費用に充てたとしても、相続人同士での遺産分割が不要になるわけではありません。葬儀費用を誰が最終的に負担するかという問題も、別途検討する必要があります。

大切な家族を亡くした直後は、気持ちの整理もつかないまま、まとまったお金が必要になることがあります。

 

「親の預金があるから大丈夫」と思い込まず、いざというときに利用できる制度や手続きを知っておくことが、残された家族の負担を軽くすることにつながります。

 

執筆・監修:小泉@社労士ライター

20年以上の社労士経験を通じて、多くの相談者から「こんな制度があるとは知らなかった」「もっと早く相談しておけばよかった」という声を聞いてきた経験から、専門知識を、必要とする人に、正しく、わかりやすく届けることを大切にしている。社会保険・労働保険、公的年金をはじめ、暮らしや仕事に関わる制度について、専門家としての正確性と、生活者目線のわかりやすさを両立した情報を執筆・発信。保有資格は、社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士など。

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