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「虫よけ対策はどうなってるのか!」蚊に刺されて窓口で怒鳴った男性。だが、退院の日に妻から言われた一言

  • 2026.10.28

相談窓口に現れた、腕を突き出す男性

5年ほど前、私は病院の相談窓口で、患者さんやご家族の相談を受ける仕事をしていました。

ある日の昼、受付で怒っている方がいるので対応してほしいと頼まれました。

やって来たのは、60代から70代くらいの男性です。

奥さんの手術が終わるのを待合室で待っているあいだに、蚊に刺されたというのです。

「待合室で蚊に刺されたんだよ。ほら、ここ」

男性はカウンター越しに腕を突き出し、赤くふくらんだところを指で示しました。

「それは大変でしたね。かゆみはありませんか」

「かゆいに決まってるだろ。こっちは家内の手術を待ってたんだぞ」

男性はカウンターに手をつき、声を大きくしました。

「この病院の虫よけ対策はどうなってるのか!」

その声に、後ろの長いすに座っていた患者さんたちも振り向きました。

病院には夜間の救急もあり、人の出入りがあります。

ただ、蚊がどこから入ったのかも分からず、具体的な対策についてその場で答えることはできませんでした。

「申し訳ありません。いただいたお話は担当にも伝えますので…」

「そっちの都合だろう。こっちは刺されてるんだぞ」

何とか落ち着いていただこうとしましたが、男性の怒りは収まりません。

奥さんの手術を待つ不安もあったのかもしれません。それでも、大きな声で責められ続け、私は困り果ててしまいました。

すると、奥から男性職員が出てきました。職員が改めて謝罪し、虫よけ対策について検討すると伝えると、男性はようやく待合室へ戻っていきました。

蚊に刺されて嫌な思いをしたのは分かります。

ただ、あそこまで怒鳴らなくてもよかったのではないかと、複雑な気持ちになりました。

退院の日、奥さんが夫に向けた一言

それから数日後のことです。

見覚えのある男性が、大きな紙袋を提げて相談窓口へやって来ました。隣には同じ年ごろの女性がいます。

手術を受けていた奥さんで、この日が退院だということでした。

奥さんは私を見ると、申し訳なさそうに頭を下げました。

「主人が蚊のことで騒いだそうで…。本当にすみませんでした」

突然の謝罪に、私は少し驚きました。

「いえ、そんな。奥様も大変でしたね」

すると奥さんは、隣の男性に目を向けました。

「この人、家でもしょっちゅう蚊に刺されてるんですよ」

「おい、そんなことまで言わなくていいだろ」

男性が慌てて口を挟むと、奥さんは少しあきれたように返しました。

「だからって、病院の人に怒ってどうするの」

「いや、だから……」

男性は何か言いかけましたが、それ以上は続きませんでした。先日、あれほど声を荒げていた人とは思えないほど、おとなしくなっていました。

近くの長いすに座っていた年配の女性も、思わず口元を押さえていました。

奥さんは改めてこちらに向き直り、丁寧に頭を下げました。

「いろいろお世話になりました」

「どうぞ、お大事になさってください」

男性は私と目を合わせないまま、奥さんのあとについて出口へ向かいました。

数日前のあの勢いはどこへ行ったのでしょう。並んで歩く夫婦の後ろ姿を見送りながら、私は思わず小さく笑ってしまいました。

蚊に刺されて不快だったとしても、その怒りを誰かにぶつけていいわけではありません。

奥さんの飾らない一言が、今でも印象に残っています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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