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「流さないで、手で持ってきなさい」回転寿司で毎回手渡しを求めた常連夫婦。だが、新店長が告げた方針に黙り込んだ瞬間

  • 2026.10.27

先輩に教わった、あの席だけの決まり

10代のころ、私は回転寿司店で初めてのアルバイトをしていました。

ホールを担当し、片づけや注文の取り方を先輩たちに教わりながら、少しずつ仕事を覚えていたころのことです。

当時の店では、席のインターホンで注文を受けると、番号のついた台に寿司をのせ、レーンでお客様の席まで届けていました。

ところが、店にはひと組だけ、特別な対応をしているお客様がいました。

毎日のように来店し、いつも同じテーブル席に座る常連の夫婦です。

ある日、先輩からこんなことを言われました。

「あの席の注文は流しちゃだめだよ。ひと皿ずつ手で運んで、商品名も伝えてね」

「えっ、あの席だけですか?」

「うん。そうしないと怒られちゃうから」

不思議に思いましたが、私は教わった通りに対応していました。

夫婦の妻は、皿を届けるのが少し遅れるだけでも、箸を持ったまま眉をひそめます。ほかのお客様と同じようにレーンで届けられないことに、私はずっと疑問を感じていました。

そんなある日の昼、注文が重なって忙しくなったときのことです。

私はうっかり、夫婦が注文した寿司を番号つきの台にのせ、レーンへ流してしまいました。

すると、すぐに妻から声が飛んできました。

「ちょっと!あなた、こっち来て!」

慌ててレーンから皿を取り、テーブルへ持っていくと、妻はレーンを指さしました。

「流さないで、手で持ってきなさい」

「すみません。間違えて流してしまいました」

「もう、何回言えば分かるの!毎日来てるのよ、こっちは」

「申し訳ありません…」

隣に座る夫も、腕を組んでうなずいていました。

私は何度も頭を下げ、それからは混雑しているときでも、夫婦の注文だけは必ずひと皿ずつ手で運ぶようにしました。

新しい店長がテーブルの横で告げたこと

それからしばらくして、店に新しい店長がやってきました。

先輩が例の夫婦について説明し、注文の皿を毎回手渡ししていることを伝えると、店長は黙って話を聞いていました。

そして次の昼、いつものように夫婦が席に着くと、店長が自らテーブルへ向かったのです。

私は近くの通路で、そのやり取りを聞いていました。

「いつもご来店ありがとうございます。実は本日から、ご注文のお寿司もすべてレーンでお届けすることになりました」

妻は驚いたように顔を上げました。

「えっ?どういうこと?」

「混雑しているときも含めて、皆さま同じ方法でお届けすることにしたんです」

すると妻は、顔を赤くして声を荒らげました。

「ちょっと待ってよ。前の店長さんはやってくれたわよ。私たち、毎日来てるのよ!」

しかし、店長は落ち着いた口調で答えました。

「いつもありがとうございます。ただ、これからは皆さま同じ方法でお届けします。申し訳ありません」

「でも、今までずっと…」

妻は言いかけましたが、店長の態度は変わりませんでした。

隣の席のお客様も、何事かとちらりと振り向きます。

夫は組んでいた腕をほどき、気まずそうに目をそらしていました。妻もそれ以上は何も言いませんでした。

店長が席を離れてしばらくすると、夫婦が注文した寿司をのせた番号つきの台が、レーンを流れてきました。

夫は黙って手を伸ばし、皿を取ります。

妻も何か言いたそうな顔をしていましたが、結局、何も言わずに箸を持ち直しました。

通路へ戻ってきた店長は、私のほうを見て小さくうなずきました。

それまで当然のように続いていた、あの席だけの特別対応。それがようやく終わったのです。

その日は夫婦の席を何度も気にする必要がなくなり、私はほかのテーブルの仕事にも落ち着いて取り組めました。

店長が変わったことで、こんなにも働きやすくなるのかと感じた出来事でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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