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綴る、わがままな部屋。ミュージシャン・曽我部恵一の居住空間学

  • 2026.10.27

写真で伝わることもあれば、住まい手自身が書くことでしか見えてこない住まいの形もある。かつて住んだ記憶に残る部屋、窓から見える庭の移り変わり……住まいの数だけ物語がある。ミュージシャン・曽我部恵一が綴る、居住空間学。

illustration: Anri Yamada

Anri Yamada イラスト
BRUTUS

たまにはぼくの家に遊びに来ませんか?

家というものはまずシェルターであるので、住まう者が心地よければそれでオッケーだと思っている。狭かろうが日当たりが悪かろうが、モノで溢れ返って散らかっていても、住人が良ければそれでいい。

実家にいた頃は自室を散らかし放題に散らかしてよく親から怒られた。しかし実はそこは完璧な秩序のもとにある宇宙なのだから怒られる筋合いはない。外でずっと怒られているから、家に帰ってきて隠れているのだから。

外には社会というなかなかに手強いシステムがあって、家を一歩出るとそれとちゃんと付き合わねばならない。学校や会社や公園やライブハウスにいるとき、それは社会にいるということ。その中でぼくらは自分と社会の接点を見極めながら慎重に過ごしている。当然疲れるし、間違えたら怒られる。ぼくみたいな人間は頻繁に怒られるので、子供の頃から「社会」=「怖いところ」と刷り込まれてしまった。

だから家が好きだ。できれば家にいたい。海も山もレストランもドライブもいいけど、家がいい。穏やかな気持ちで安心していたい。ごろごろのんびりしていたい。老いたネコのように。ぼくの安心はぼくだけが知っている。そこに本当の平和がある。

Anri Yamada イラスト
BRUTUS

願わくば、風通しの良い家に住みたい。ぼくの家には風の通り道があって、それは階段の踊り場なのだが、ぼくはときどきそこに立ってみる。風は「社会」の方からやって来る。だけどうるさいことは言わない。静かにぼくの体を撫でて、去っていく。なにかを問うと、返事が返ってくることもある。


profile

曽我部恵一(ミュージシャン)

そかべ・けいいち/1971年香川県出身。90年代初頭より〈サニーデイ・サービス〉としてバンド活動開始。2001年からはソロ活動も行う。

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