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高橋惠子さん・71歳「悪いことが起きても、悪いところでは終わらない」不運を幸運に変えた人生の受け止め方

  • 2026.10.25

高橋惠子さん・71歳「悪いことが起きても、悪いところでは終わらない」不運を幸運に変えた人生の受け止め方

学校に行かなくても、日々の体験から学べることはたくさんあると考える高橋惠子さん。思いもしないことが起きたとき、それをどうとらえるか? 高橋さんが人生から学んだこととは……。

Profile

高橋惠子さん 俳優

たかはし・けいこ●1955年、北海道生まれ。70年に最後のニューフェースとして大映に入社。同年、映画『高校生ブルース』で主演デビュー。同年の映画『おさな妻』でゴールデン・アロー賞新人賞受賞。その後、映画、テレビドラマ、舞台とジャンルを問わず活躍。ドラマ「太陽にほえろ!」に女性警官シンコ役でレギュラー出演。2012年、『カミハテ商店』で23年ぶりに映画主演。21年、66歳でミュージカル初主演。11月3日~25日、京都・南座にて爆笑喜劇『三婆』に出演予定。

家族の形は変わるもの。それに合わせて家も住み替えればいい

丹精込めた庭木と別れて今はマンション暮らし

15歳でデビューし、芸歴56年の高橋惠子さん。私生活では0歳から23歳まで7人の孫のおばあちゃんだ。

「あ、おばあちゃんと呼ばないでください。私、孫たちにもずっと『あーちゃん』と呼ばせているんです(笑)」

高橋さんは以前、4世代で9LDKの家に暮らしていた。

「私たち夫婦と娘夫婦、私の母、孫たち合わせて9人で暮らしていました。犬10匹、猫1匹、亀1匹がいたこともあります。緑の多い環境で子育てをしたいと、約40年前に建てた郊外の大きな家でした」

大家族の暮らしはどのようなものだったのだろう。

「赤ちゃんから高齢者までがひとつ屋根の下に暮らしていて、『生まれてから、こういう過程を経て人は老いていく』という『人の一生』を見るような家族構成でした。人は変化していくもの、ずっと同じではいられないということを自然と実感できましたね」

その後、子どもたちが独立し、母が亡くなり、夫婦二人になった高橋さんは、郊外の家を出て、都心のマンションへ引っ越した。いわゆる暮らしのダウンサイジングだ。ところが、元の家の庭木への愛着が断ちがたく、一度、出た家にまた戻ることに。

「お花の先生をしていた主人の母が『ここにはしだれ梅がいいよ』と植えてくれたピンクの梅もありました。花が咲くと、とてもいい香りで、特にこの木との別れはつらかったですね」

しかし、その後、また新たな展開が。

「娘の住んでいるマンションの下の部屋が空いたというので、2年前、そこへ移りました。元の家は、貸すことも考えたのですが、結局、更地にして手放しました。断腸の思いでした」

今は娘家族と「スープの冷めない距離」に暮らす高橋さん。孫たちもしょっちゅうやってきて一緒に食事をしたり、ともに時間を過ごすことが多いそうだ。

「戸数の少ないマンションなので、一軒家に一緒に住んでいたときとほぼ同じ感覚です。自分たちの家に他の人たちもいる、みたいな……(笑)」

ひとつ屋根の下に3人の熟女が同居する話

ひとつ屋根の下、といえば、高橋さんは11月に、ひょんなことから一緒に住むことになった3人の女性たちの物語の舞台に出演する。

「『三婆』という有吉佐和子先生原作のお芝居です。私は、突然亡くなった金融会社社長の本妻の役で、その本宅へ亡き夫の愛人と妹がわけあって転がり込んでくるという話です」

それだけ聞くと、どろどろとした女のバトルが繰り広げられる物語?と思いきや……。

「初めは、互いに意地とプライドをぶつけ合う 3人ですが、時間とともにだんだんとその関係性が変化していくところが見どころです。『三婆』というタイトルからもわかるように、3人の共通点は年を重ねた女性であること。この世代同士だからこそわかり合えて、共感できる点が多々あり、一緒に暮らすうちに、いつしか奇妙な連帯感が生まれます。そして、老々介護ではないですが支え合って生きていくようになるんです。これがもし若いときだったら、全然違っていたでしょうね」

しかも「爆笑喜劇」だという。

「抱腹絶倒しながらも、ときにホロリとくる、そんなお芝居です。私に喜劇のイメージはないかもしれませんが、実はお笑い好きで、子どもの頃から松竹新喜劇の藤山寛美さんの舞台中継などもテレビでよく見ていました。ですが、笑わせる演技というのは一番難しくて、ポンポンポンとテンポよくしゃべったあとの間とかを客観的に見られないと面白くならない。お客さまとの呼吸も大事です。しかも『爆笑』ということですから、ハードルは高めです」

一カ所に根を張るのは性に合わない

ひとつ屋根の下に住んでいても、そこに暮らす人たちは常に変化していく。

「私たちも夫婦二人から始まって、子どもが生まれて4人になり、母と同居。その子どもたちがまた結婚して、孫が生まれ……。とにかくずっと同じではなく、どんどん変化しました。それとともに住むところも変化していいんじゃないかと思っています。腰を上げるのは大変ですが、また新たな気持ちで新しいことに目を向けられます。同じ場所で根を張り続けることは性に合わないんです。今は娘家族のそばにいますが、子どもたちも変化し、孫たちもいずれ独立するでしょうから、将来、自分がどこに住むかはわかりません。植物が好きなのでハーブガーデンを作ったり、野菜を育てながら自然の中で暮らすのもいいな、なんて考えています。住まいは大事なものではあるけれど、ずっと同じところに住む必要はないというのが私の考えなんです」

『あの不運があったから、今の幸運がある』と思えることがある

人生の学びは一生続く。学ぶたびに豊かになる

「若い頃から学ぶことは好きだった」という高橋さん。中学生のときにスカウトされ、女優をやるからには現場で演技を学びたいと自ら高校進学を断念した。デビュー後すぐにヒット作に恵まれたが、待っていたのは超多忙な日々だった。さらには強烈な役のイメージが先行し、実像と乖離していったことで精神のバランスを崩し、22歳のときに大量の睡眠薬による自殺未遂を起こしてしまう。

約2年間の休業を経て、舞台で復帰することになったが、その舞台の初日前日にまたもや精神的に不安定に陥り、海外へ失踪。再びの復帰が危ぶまれるほどの大事件となった。

「決して順風満帆とは言えない女優人生でした。デビュー後1年半で所属していた大映の倒産もありました。でも、危機のたびに誰かが救いの手を差し伸べてくれて、今日ここまで来ました」

高橋さんには、学校で学んだ知識ではなく、体当たりで生きてきた中で学んだ多くの人生訓ある。その中でも特に強く心に刻まれていることは……。

「悪いことが起きても必ず次の展開があって、悪いところでは終わらない、ということ」

そんな考え方がゆるぎないものになった、あるエピソードを披露してくれた。

「道端に捨ててあったサツキを、父が『まだ生きている』と持ち帰って花を咲かせたことがありました。私が家を建てたとき、父はすでに亡くなっていましたが、このサツキを株分けして庭に植えました。翌年きれいな花を咲かせたので『おじいちゃんも喜んでいるね』と娘と話していました。ところが、その花についていた害虫に刺されて、娘の顔に炎症が起きてしまったんです。皮膚科でも『これ以上、治療は無理』と言われるくらい重症で……。そのとき、知り合いのフィリピンの方が持ってきてくれたオイルをわらにもすがる思いで塗ったら、きれいに治ったんです。それがモリンガオイルでした」

「奇跡の木」と呼ばれるモリンガとの出合いだった。

「娘は本来、明るい子なのですが、顔の炎症がひどいときは誰にも会いたくないほど落ち込みました。当時は、おじいちゃんの形見でなぜこんなことになったのか、と納得のいかない思いでした。でも、そのおかげでモリンガと出合い、後に私と娘はモリンガを主成分にした化粧品やサプリをプロデュースすることになったのです。一見不幸な出来事も、あとで幸運に変わる可能性があるんですね」

もしかしたら、これはサツキの恩返しかもね、と娘さんと話しているという高橋さん。

「人生いろいろなことが起きます。そのときは不運だと思えても、のちにどう変化するかはわかりません。今では何が起きても、自分のために与えられたことと受け止められるようになりました」

「学びは一生続く」。生涯現役を目指す高橋さんは、これからも日々の体験から学び続け、その演技はますます深みを増していくことだろう。

毎朝のあいさつで新しい自分に

毎朝、起きたら窓を開けて空を見て、初めて出合う新しい日と新しい自分にあいさつします。「今日も一日いい日になりますように」と。晴天の日だけでなく、曇りの日も雨の日も。雲の向こうには必ず太陽がありますから。前の日に何があっても引きずらず、ここで切り替える。あいさつって、けじめだと思います。

【Information】爆笑喜劇『三婆』

昭和38年、金融会社社長の武市浩蔵がぽっくり亡くなり、ひょんなことから本妻の松子、愛人の駒代、妹のタキは本宅で一緒に暮らすことになった。最初は犬猿の仲の三人だったが、やがてお互いのよさを学び、心を開いていく。三人のおばちゃまたちの奇妙な共同生活を描いた、爆笑の中にもホロリと泣ける傑作喜劇。

2026年11月3日(火・祝)~25日(水) 京都・南座
原作:有吉佐和子
脚本:小幡欣治
演出:齋藤雅文
出演:高橋惠子 川中美幸 山村紅葉 ほか
チケットホン松竹☎0570-000-489 https://www1.ticket-web-shochiku.com/t/

撮影/中村彰男 スタイリング/安野ともこ 構成・文/依田邦代

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