1. トップ
  2. エピソード
  3. 「客が違うと言っているんだから違うんだ」料理の作り直しを迫る常連客。だが、店長が静かに読み上げた注文の記録

「客が違うと言っているんだから違うんだ」料理の作り直しを迫る常連客。だが、店長が静かに読み上げた注文の記録

  • 2026.10.24

来るたびに不満を口にする常連客

二十代のころ、私はファミリーレストランでホールのアルバイトをしていました。店には週に何度も顔を出す中年の男性客がいました。

水を出すのが少し遅い、料理が熱すぎる、今日は冷たい気がする、席が落ち着かない。

男性は来店するたびに何かと不満を口にします。ほかのスタッフにも同じように接していて、私も注文を取りに行くたびに緊張していました。

ある日のランチどき、店内はほぼ満席。男性はメニューを指でたたきながら注文しました。私は聞き間違いがないよう、内容を読み上げて確認します。

「それでいいって言ってるだろ。早くしろ」

男性は面倒そうに手を振りました。私はその内容で注文を通しました。

しばらくして料理を運び、テーブルに置いた直後です。

「おい、注文と違う」

私はテーブルの伝票に目を落としました。そこには今お出しした料理と同じ品が書かれています。

「申し訳ありません。こちらの品でご注文を承っているのですが…」

すると男性は、皿を指さして声を大きくしました。

「客が違うと言っているんだから違うんだ」

近くの席のお客さんが振り向き、私は言葉に詰まりました。

「作り直せ。今すぐだ」

どう対応すべきか迷った私は、厨房の近くにいた店長を呼びに行きました。

店長が読み上げた注文の記録

店長は私と一緒にテーブルへ戻り、注文を受けた端末の画面を確かめました。私もすぐ横で見ていました。

「注文の記録はこちらですね。今お出ししている料理と同じ品になっています」

店長は画面に表示された内容を、落ち着いた声で読み上げました。

男性は口を開きかけましたが、すぐには言葉が出てこないようでした。

続いて店長は、私に確認しました。

「注文を取ったとき、内容は確認した?」

「はい。読み上げたら、『それでいい』とお返事をいただきました」

男性は皿に目を落としました。隣の席の年配の夫婦も、通路の向こうのお客さんも、話の行方を気にしている様子です。男性の顔は耳まで赤くなっていました。

店長は男性に向き直りました。

「別のお料理をご希望でしたら、改めてご注文を承ります」

男性はしばらく黙っていましたが、やがてフォークを持ち、出された料理を食べ始めました。

厨房へ戻る途中、店長が私に小さな声で言いました。

「伝票、合ってたよ。よく確かめたね」

その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。私はさっきまで震えていた手を、エプロンの前でそっと握りしめました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ