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彼女の爪に文句を言った俺が、スマホの写真1枚で負けを認めるまで

  • 2026.10.24
ハウコレ

テレビの笑い声にまじって、彼女のハンドクリームのふたが閉まる音がしました。俺はなんとなく、向かいに座る彼女の手元に目を向けました。軽く言ったつもりの一言で、部屋の空気が変わるとは思っていませんでした。

常識のつもりで言った一言

付き合って2年になる彼女は、花屋で働いています。休みが合うと、彼女の部屋で録画した番組を見ながら過ごすのがいつもの流れでした。その日、目に入った彼女の爪は短く、横が緑っぽく染まっていました。会社の女性たちの指先はいつもつやつやしているのに、と思ったのを覚えています。

「爪くらい整えろ」深く考えずに言い、そのまま付け足しました。「女だろうが」

女なら手元に気をつかうもの。俺にとっては、それくらいの常識のつもりでした。前にも「女なんだから料理くらい」と言ったことがあり、そのときの彼女は笑って流していたのです。

笑っていなかった彼女

「女だったら、いつも爪をきれいにしてなきゃいけないの?」

聞き返してきた彼女は、笑っていませんでした。面倒な話になりそうで、俺はテレビに目を戻して肩をすくめました。

寝ぐせのついたままの髪も、あごの剃り残しも、その日の俺は気にも留めていませんでした。彼女が俺の身なりに何か言ったことは一度もなく、それに甘えていたのだと思います。

スマホに写った答え

「手、出して」訳も分からず俺が手を差し出すと、彼女はその手を取り、自分の手の隣に並べてテーブルに置きました。スマホで真上から撮った画面が、目の前に向けられます。

写っていたのは、短く切りそろえられた彼女の爪と、長さのばらばらな俺の爪。中指の先は欠け、親指のささくれまでくっきり写っていました。彼女の指の小さな傷と緑の染みは、仕事でついたものだと分かります。俺の爪の汚れには、言い訳のしようがありません。

「どっちが汚い?」彼女に聞かれ、俺は画面と自分の指先を何度か見比べました。常識のつもりで言った言葉が、そのまま自分に返ってきた気分です。「……俺です」

そして...

しばらく座っていましたが、居心地の悪さに負けて立ち上がりました。「爪切り、どこ?」彼女が棚の引き出しから出してくれた爪切りで、ぱちん、ぱちんと切っていきます。切り終えてから、テーブルの上の彼女のスマホを指さしました。

「その写真、消してくれない?」と頼むと、彼女からは「消さない」と、間を置かずに返ってきました。

その夜のうちに、次の休みに行く床屋の予約を入れました。あれから「女なんだから」と言いかけるたびに、彼女のスマホに残るあの1枚が頭に浮かんで、口を閉じるようになりました。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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