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「演劇は流行ってない」って、どこの話? MICHInoX・武者匠×コトリ会議・山本正典&大石丈太郎×冷蔵庫ポルカ・荒川颯音が地域演劇を語る

  • 2026.10.21
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「ラブ・演劇博 -こちらの演劇、とおくのまちから。-」ビジュアル

10月23日より吉祥寺シアターにて「ラブ・演劇博 -こちらの演劇、とおくのまちから。-」が開幕する。「地域と連携し、日本各地で育まれてきた小劇場演劇の魅力を発信したい」。本公演は、そんな吉祥寺シアターの思いから始動した新企画。地方を拠点に活動する3団体を招いたショーケース形式で、MICHInoX(宮城)、コトリ会議(兵庫)、冷蔵庫ポルカ(岩手)の3団体が各30分の作品を上演する。企画への参加を決めた背景、団体の個性、上演作品に込めた思い、そして、それぞれの場所と在り方で演劇を続けていく中で感じていること……。開幕を前に、MICHInoXの武者匠、コトリ会議の山本正典と大石丈太郎、冷蔵庫ポルカの荒川颯音に話を聞いた。

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■3つの地域で育まれた演劇が集結!

――まずは、今回の企画に参加された経緯をお聞かせください。

大石:僕はコトリ会議の東京在住の劇団員で、吉祥寺シアターはかねてより大好きな劇場だったんですよ。俳優として舞台に立ったこともあるけれど、観客としてもラインナップや見やすさに魅力を感じていたので「吉祥寺シアターでコトリ会議がやれるんだ!」とワクワクして、みんなにも「やろうやろう」と話しました。

山本:普段は比較的小さな劇場でやっているので、最初は吉祥寺シアターの大きさにビビっていたんです。でも、いざ来てみたら、包み込まれるような素敵な空間で「関西にもこんな劇場が欲しいね!」と盛り上がりました。本公演を東京で上演する時は自分たちの作品の心配ばっかりしているのですが、今回は冷蔵庫ポルカさんとMICHInoXさんと一緒なので心強いですね。同時にドキドキもしていて、他団体の未知なる魅力への恐怖も感じています。MICHInoXさんとは短距離男道ミサイル時代にご一緒させていただいたことがあったのですが、その時のイメージから「まためちゃめちゃやられるんじゃないか!」と思ったり(笑)。

全員:あはははは!

武者:今山本さんが仰って下さった通り、我々は東日本大震災を機に結成し、当初は短距離男道ミサイルという名前で活動していたんです。名前が誤解を招きやすいということもあって話し合いを行い、2024年に新劇団名決めのための合宿を経てMICHInoXに改名し、そのタイミングで私が代表に就任しました。作品は東北にまつわるもの、東北でできることを軸に作ってはいるのですが、「遠くに向けて発信していきたい」「世界を視野に入れたい」という思いを持っていたので、今回のお声がけはとてもうれしかったです。

荒川:冷蔵庫ポルカは公募選出団体で、コトリ会議さん、MICHInoXさんの参加を知った上で応募をさせていただきました。まだキャリアが浅いこともあり、不安もありつつ応募したのですが、こうしてご一緒させていただけることになり、とてもうれしいです。冷蔵庫ポルカは県内でも小劇場が盛んな岩手県の盛岡市で旗揚げをしたのですが、高校演劇部が母体だったこともあり、高校卒業を機に生活拠点が分かれたんです。私は東京で活動しているのですが、メンバーは岩手にいるので、久しぶりに集まって上演ができることも楽しみです。

■団体の魅力と個性を凝縮した濃密な30分

――今回はショーケース形式で30分の作品を上演されますが、それぞれのあらすじや見どころについてもお聞かせいただけますか?

山本:2021年に東京芸術劇場の「もしもし、こちら弱いい派」という企画で、3団体各40分の作品を上演するショーケースに出たんです。その時にご一緒したいいへんじさんの作品(『薬をもらいにいく薬(序章)』)がすごく印象に残っていて……。順当にやったら2時間くらいかかるドラマがキュッと小さな声で詰め込まれていて、その構成に感銘を受けたんですよね。次にショーケースに参加するときは、我々も小さくも濃密なドラマを届けたい。そんな当時の思いをここぞとばかりに反映しました。内容は家族のお話。コトリ会議は幅広い年代のメンバーが集っている劇団なので、家族劇を描くうえではその特徴がそのまま強みになるのではないかとも思っています。

大石:もう1つの特徴としては、劇団員のみが出演するということですね。この数年間積み上げてきたものを形にできるいい機会だと思いますし、個人的にはこまばアゴラ劇場などで上演していた頃の風合いも含んだ、実にコトリ会議らしい作品に仕上がっていると思います。コトリ会議を知らない人には新鮮に驚いていただけそうですし、昔から知っている人には懐かしんでもらえるような。そんな作品になるんじゃないかな、と。

武者:僕たちは、せっかく吉祥寺シアターで上演できる機会だから、とにかく楽しいことをやりたいと思っていました。作・演出を担当している本田椋がかねてより小林多喜二の『蟹工船』をやりたいと言っており、色々話し合った結果宇宙を舞台に蟹工船をやるのはどうだ、ということになり、『劇場版 宇宙蟹工船カルキノスFINAL MISSION〜愛の底引き網を止めないで〜』というタイトルになりました! エネルギー――問題や食料問題を抱えている近未来の世界で、問題解決に有効な「超重力甲殻生命体タラバトロン」という宇宙蟹が発見され、それを取ることによって地球を助けることを生業にしている人たちがおり……という、実にスペクタクルな話です。

荒川:すごい!

山本:面白そう!

武者:目まぐるしく展開が変わる30分で、蟹漁の過酷さと未知への好奇心、地球を救うための愛を詰め込みました! 楽しさやバカバカしさを前面に押し出しつつ、最後には東北の空気を感じたり感じなかったりしていただけるのではないかと思っています。

――2団体の創作背景をお聞きして、すでに異なる個性が炸裂した作品が拝見できそうなことが伺えます。冷蔵庫ポルカ『どこにでもいきてどこにでもいる』もまた違った魅力がありそうですが、どんな作品を上演されるのでしょうか?

荒川:フフフっていう1人の女性のお話で、その女性はもうこの世にはいないんですけど、フフフがもし生きていたらどうなっただろうか、みたいなのをポートレートのように乱れ打ちしていくような演劇です。最大の特徴は4人の俳優で1人のキャラクターを演じること。「もしも」がいろんな方向に転がり、フフフのあったかもしれない可能性を紐解くような。そんなお話になりそうです。

私は中学までは岩手県の遠野市っていうバスや電車もない田舎でどこにも行けない学生時代を過ごしていたんですけど、高校進学を機に盛岡市に出ることになって……。その時に初めて自分の足で自分の景色を獲得した感覚になったんです。バスを待っている時や電車に乗っている時にふと、「最初から自分がこの街で生きていたらどうなっていたんだろう」とすごく考えたんですよね。それは、上京後の生活にも同じことが言えると思うのですが、そういう感覚って人の数だけある気がするし、お客さんとも共有できたらいいなと思って今回の話を書きました。

■現在の演劇シーンやその論争について思うこと

――今日は開幕より一足先にみなさんにこうして3地域からお集まりいただいていますが、これを機に互いに聞いてみたいこと、伝えたいことなどはありますか?

武者:今の荒川さんのお話にはすごく共感しました。私は28歳の時に仕事を辞めて演劇を始めたのですが、これまでの活動の中で「若い時期から演劇を始めていたらどうだったんだろう」とか「東京に住んだらどうなったんだろう」みたいなことを考えた瞬間もやっぱりあったんですよね。でも、「芝居を磨いて俳優として活躍するぞ」という軸と「ちゃんと長く演劇を続けていくぞ」という軸の2軸があった時に、焦らず長く続けていくことをより考えなきゃいけないとも思って……。そんな中で、仙台で精力的に活動していた劇団のみんなと出会えてこうして演劇を続けている。そういうことを改めて思い出させてくれるお話でした。

山本:僕も福井県の福祉バスが朝夕1本ずつ来るぐらいのところで生まれたので、荒川さんの感覚すごくわかります。だから、それこそ稽古前とかに吉祥寺の街を歩いていても、目的に向かってのみ進む人たちの凄さに圧倒されるんですよ。みんな、歩くこと、進むことに迷いがないというか……。ただ、僕にとってはここで暮らすのは2週間が限界と思ったりもして(笑)。そういう、東京と東京じゃないところに住んでいる人の体感差や視点の違いみたいなものが「ラブ・演劇博」にどう影響するのかは分からないのですが、そこはかとない空気として含まれるような気はしますよね。

武者:メンバーのほとんどは仙台の中心部に住んでいたり、東京と2拠点で暮らしていたりするのですが、私だけすごく田舎に住んでて……。でも、そうしたそれぞれの暮らしを通じて得る実感のようなものは芝居にもにじみ出るような気がしますよね。

荒川:そうですよね。私たちも色々な土地に住んでいるので、1つの土地で演劇をしているっていうアプローチとはまた違った関わり方で町と自分の関係性を模索している気がします。あと、クリエーション面で言うと、冷蔵庫ポルカは基本的にリモートで稽古をしていて、体をフルに使うことができないので音とモノローグに焦点を当てて作品を紡いでいくことに注力をしているんですよね。全員俳優が本業ではなく、つまり、年1回招集をかけないと演劇をやらない人たちの集まりなんですけど、でも、なんでやるかってやっぱり楽しいからなんですよ。そういう演劇の自由さも感じてもらえたらなと思います。

――最後に、地域を拠点に活動する団体としての展望、現在の演劇シーンに思うところがあればお聞かせください。

荒川:私は今、自分と自分の演劇を育ててくれた地域との関わりを模索しながら東京で創作をして生きています。それだけに、一時期タイムラインを賑わせていた「演劇流行っている/いない」の言説については、正直なところ「本当にしょうもないな」と思っていて……。そもそも議論自体が東京の演劇の話でしかないというか……。

山本:うんうん。

武者:そうですよね。

荒川:私を育んでくれた盛岡はとても演劇が盛んだし、市民参加型演劇も盛り上がっていて、演劇自体が日常に溶け込んでいるような地域で。もはや風土としてそういうものになっている。だから、流行どうこうの軸で語れるものじゃなく、絶えずそこに在るものなんです。自分を育んでくれた劇作家や演出家、演劇の原体験は盛岡のそうした風土の中にあるし、そうした背景が各地域にあると思うんですよね。なので、そこが透明化して語られる演劇の話は本当にしゃらくせえな、と。だからこそ、今回は東京の吉祥寺シアターで、自分を育んでくれたルーツやその演劇や人たちがちゃんと存在しているんだぞ、ということを上演を介して伝えられたらと思います。

山本:僕も荒川さんの意見に同意です。一方で、そうした言説や議論にとらわれずに自分たちの在り方で演劇活動をしている人は日本各地にいっぱいいますし、吉祥寺シアターさんの取り組みも然り、そういう声が少しずつでも上がってきているのはすごくいいなって思いました。今日、みなさんの声を聞けて本当によかったと思っています!

荒川:若くて地方から上京して劇団をやっていると、どうしてか下克上的文脈で捉えられることが結構多いんですけど、そんなハングリーな気持ちは1ミリもなくて(笑)。武者さんも仰っていましたが、私たちの目標もまさに「長く続けること」なんですよ。それこそ、老後とかに生存確認コミュニティとして機能するような。そこをゴールに演劇を続けていきたいと思っています!

大石:その発想、すごくいいですね。自分たちの若い頃って、そういうことを目的設定にはなかなかできなかったというか、それこそ「売れてやる!」という目的で始める人が多かったのですが、各々自由な目的で演劇を始める人たちがフィーチャーされてきているんじゃないかなと思って、聞けてよかったです。さっき、気づいたんですが、この3団体って、多分世代がちょうど干支一回りずつくらい違うんですよ。そのバリエーションも面白いですよね。この鼎談で上演のモチベーションがますます上がりました!

武者:地域の団体として背負えるところは背負いつつ、この機会を楽しみたいですね。応援して支えていただいている方々も日本各地にいるので、そういった人たちに胸を張れるようこれからも頑張っていきたいと思います。では、みなさん次は吉祥寺シアターで再会しましょう!

(取材・文:丘田ミイ子)

「ラブ・演劇博 -こちらの演劇、とおくのまちから。-」は、10月23日~25日に東京・吉祥寺シアターにて開催。

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