1. トップ
  2. “バリキャリ女性管理職”を演じた吉田羊が語る「結婚を選ばなかった人生」について思うこと、そして「役柄と重なる部分」

“バリキャリ女性管理職”を演じた吉田羊が語る「結婚を選ばなかった人生」について思うこと、そして「役柄と重なる部分」

  • 2026.10.20

NHKドラマ10『会社員』で吉田羊さんが演じるのは、取締役への昇進を目前にした50歳の会社員・宮木英理子。後篇では、この役と吉田さん自身が重なる場所、そして今だから考えることを聞きました。


“バリキャリ女性管理職”の英理子との共通点

吉田羊さん。

――今年の春に演じられたリチャード三世について、CREAのインタビューで、己の弱さをねじ伏せて自らを奮い立たせている人物だという印象を受けたとお話しされていました。英理子にも、同じものを感じていらっしゃいますか。

吉田羊(以下、吉田) 英理子の場合は弱さとはまた少し違う、情に飲み込まれそうなところを、"会社のために"と奮い立たせている感覚です。でも、本心に蓋をすると言う意味では似ていますね。英理子も、リチャードも、両者私に通じているなとも感じますよ。

――ご自身と英理子が重なるのは、どんなところでしょうか。

NHKドラマ10『会社員』より。写真提供:NHK

吉田 体に無理をしてでも会社に尽くす英理子と同じように、私も、作品に入っている間は体の疲れを感じないんです。倒れるまでやっちゃう。だから危険でもあるんですけど。昔はむしろ、体が不具合をきたした、その痛みすらも生きている実感につなげていたりして。ハードルが高い役であればあるほど手応えがあって、生きている実感があるんですよね。

――それは今も続いていますか。

吉田 それが分かっているからこそ、ここ数年は意識的に休養を取るようにはしています。ただ、いい作品に関わって、いい俳優さんとやればやるほど目標値が高くなっていきますね。だから永遠にたどり着かないような気がしています。答えのない世界だからこそ。

――ストイックな方だと思っていました。

吉田羊さん。

吉田 とんでもございません。弱いところばっかりなんですよね。自分に甘いし、すぐサボるんです。今日はこれをやろうと思うのに、やらずに寝たりとか。長く続けているランニングも、この撮影中は本当に朝が早かったりしたので、全然走れていないです。ただ、不思議と久しぶりに走るとちゃんと走れるんですよね。それはやっぱり長年続けてきたからこそ、自分が自分にくれたプレゼントだなと思います。

――意外です。

吉田 私、今回の英理子さんみたいに人参を目の前にぶら下げられたら、正しい判断ができる自信は正直ないですし。本当に弱いんです。でも、そういう弱さがあるからこそ、同じ弱さを抱えている人に気づくことができるし、お互いに理解し合うことができると思うので、それは弱さであり強さでもあるなと思います。

――では、ご自身の強さはどんなところだと思われますか。

吉田 自分の大切な人のために身を挺することができる強さを持っていると思います。

――努力を重ねてきた人は、周りにも同じものを求めがちです。

吉田羊さん。

吉田 強要はしないけれど、少なくとも同じレベル感で努力している人と仕事をしたいとは思います。一方で、続ける大変さがわかるので、それを相手に要求することはできないです。でも、やった方がいいことあるよ、とは思います。サボってる姿もさらけ出せる上司だったら部下は気持ちが楽になるでしょうね。あと、サボりたいと思うのは、体のサインだとも思っていて、その時休息が必要なんだと思うようにしているんです。だから、体と心の声には従うようにしています。

今回の作品が「キャリアの役」の最後かもしれない

NHKドラマ10『会社員』より。写真提供:NHK

――年齢を重ねて、振られる役は変わってきましたか。

吉田羊さん。

吉田 変わりました。それこそ今回のようなキャリアの役というのは、年齢的にリミットがあると私は思っていて。もうなんなら、今回のこの『会社員』という作品がキャリアの役の最後かもしれないな、という思いで今は実はやっているんです。年を重ねると、母役であったり、祖母役であったりが増えてくるんですよね。見方を変えれば、そういう役ができるようになってきたという言い方もできますけれども、逆に、シングルで会社の中で戦うキャリアウーマンが似合わなくなってきたということでもあって。

――ご自身で線を引いているところもありますか。

吉田 ありますね。自分がやりたいと声を上げたところで、それを振ってくださる方がいらっしゃらないと叶わないので。私自身も、どこかで無意識に線引きをしているところがあって。年齢的にもビジュアル的にも、こうなってきたらもうこの役はやれない、と。悲しいかな。この先もしチャンスがあるとしたら、本当にキャリアの役に関してはカウントダウンに入っているなと思います。

――英理子は、前向きに諦めることを重ねていく人物でもあります。吉田さんご自身が、前向きに諦めてきたことはありますか。

吉田羊さん。

吉田 学生時代にお芝居をスタートしたんですけれども、当時、結婚かお芝居かの二択を迫られたことがあり、その時に私はお芝居を選んだんですよね。もちろんそちらを選び取ったことで得られた出会いですとか、お仕事、役柄、喜びもたくさんあるので、結果これで良かったとは思っているんですけれど。でも一方で時々ふっと、じゃあ、あの時結婚していたらどんな人生だったのかなと思い返すことがあって。あの時に私はベストな選択をしたと思っているし、前向きな気持ちでお芝居を選び取ったので、前向きに結婚を諦めたとも思っています。

――選ばなかった方の人生を、少しだけ体験できるとしたら。

吉田 役でたくさん経験してきたので、もういいかもしれない。役を通して知らない自分に出会うという側面もありますし、役に教えられる、新しい考え方を教えられるということもありますから。

――作中では、同じ出来事をめぐって英理子と夫の受け止め方がずれる場面もあります。身近な人との価値観のズレに、吉田さんはどう向き合っていますか。

吉田羊さん。

吉田 自分の価値観と違っていたとしても「そういう価値観もあるよね」と互いにリスペクトできる時代になってきたなとは思いますし、私自身も、それぞれに考え方があって、それでいいんだという風に考えられるようにはなってきました。やっぱり人それぞれに事情があるし、人に見せているものって、その人のほんの一角に過ぎないから、それだけで全体を判断してしまうのは危険だなというのは思います。

――最後に、放送を楽しみにしている方へ。

吉田 自分は何のために誰のために働くのか。存在意義を会社軸に預けて来た主人公英理子の生き方は、“尽くす”ことを“美徳”とする日本人に少なからず共感していただけるのではないかと思っています。そしてオフィス・サスペンスの中にもしっかりと感情の機微が描かれた今作は、ドラマ好きの方にも楽しんでいただけると思っています。ワクワク、ハラハラを楽しみに、毎週見ていただけたらと思います。

吉田羊(よしだ・よう)

2月3日生まれ、福岡県出身。1997年より舞台を中心に活動をスタート。2012年に連続テレビ小説『純と愛』(NHK)、2014年に『HERO』(フジテレビ)に出演し脚光を浴びる。以降、舞台、ドラマ、映画と多方面で活躍。今年の作品に映画『白鳥とコウモリ』『さとこはいつも』『わたしの知らない子どもたち』など。Netflix『俺のこと、なんか言ってた?』は10月22日より配信予定。

衣装クレジット

衣装 ヌメロ ヴェントゥーノ(IZA)、ジュエリー Hirotaka(Hirotaka 表参道ヒルズ)

IZA

Hirotaka 表参道ヒルズ
電話番号 03-3478-1830

文=田幸和歌子 撮影=佐藤 亘 スタイリスト=石井あすか ヘアメイク=中野明海

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ