1. トップ
  2. 「この上司、腹立つ!」「めっちゃ面白い」話題のドラマ『会社員』“50歳本部長”役の吉田羊「よもや私には渡り歩けそうもない世界」会社員未経験で挑んだ役作り

「この上司、腹立つ!」「めっちゃ面白い」話題のドラマ『会社員』“50歳本部長”役の吉田羊「よもや私には渡り歩けそうもない世界」会社員未経験で挑んだ役作り

  • 2026.10.20

一通の匿名の脅迫文が、積み上げてきたキャリアと会社組織を少しずつ崩していく。10月13日スタートのNHKドラマ10『会社員』で吉田羊さんが演じるのは、宮木英理子。大手企業KZGCでコーポレートデザイン本部長を務め、取締役への昇進を目前にした50歳です。勤め人の経験はない、と吉田さんは言います。そこからどう役を立ち上げたのか。前篇では、作品と役について聞きました。


役作りはまず、ビジネス用語を調べるところから

吉田羊さん。

――NHKの脚本開発チーム「WDR」から生まれた第二弾です。お話が来たときは、どんなお気持ちでしたか。

吉田羊(以下、吉田) 前作の『3000万』の大ファンだったものですから、やはり少なからずプレッシャーもありました。けれども、その不安を大いに凌駕する、本当に夢中になって読んでしまう素晴らしい脚本が毎話上がってきて。ぜひこの作品に携わらせていただきたいな、ということでお引き受けしました。

――会社勤めのご経験がないところから、どう役を作っていかれたのでしょうか。

NHKドラマ10『会社員』より。写真提供:NHK

吉田 まず、ビジネス用語を調べるところから入りました。台本を読みながら、知らないアルファベット三文字がたくさん出てくるわけです。調べて、ああ、こんなことを言うのかとわかったものと、調べても出てこないものがあって。それはドラマ的に創作した単語だったりして、本当にスタートラインに立つところから始めました。

――株価もチェックされていたそうですね。

吉田羊さん。

吉田 会社員で、しかもこういう責任のある立場にいる人なら必ずチェックするだろうなと思いまして。ランダムに気になる株に当てをつけて、毎日どういうふうに変遷しているのかを見ていました。本当に面白いぐらい、企業関連のニュースが出た時に株価って落ちるんだなと思いました。

――ご自身でもやってみたいと思われましたか。

吉田 思いません。私はそこまで踏み込めない。もしこのドラマの世界が本当に現実だとしたら、よもや私には渡り歩けそうもない世界だなという思いもありました。

――英理子を、どんな人物として捉えていらっしゃいますか。

吉田羊さん。

吉田 彼女は、判断基準を会社の利益に置いているため、会社員として当然の務めを果たしているという自負があります。ハラスメントに関しては、自身も同じような経験をして来たせいで、この世代特有の認識の甘さが見て取れる。一般的に存在意義は大切ですが、彼女の場合、それが厄介でもありますよね。彼女は会社からの評価が自己評価に直結しているので、目の前ににんじんをぶら下げられたり、暗に圧力をかけられたりすると黒を白にしてしまう。しかも、会社のためにそうするしかなかったという大義名分が彼女の中で成立しているから、どこか罪悪感が欠如しているんです。それでも良心はある。だからこそ迷う。人としての倫理にギリギリ肩を掴まれながら会社に尽くしもがく彼女を不憫に思いながらも、非常に人間臭く、その弱さはむしろ魅力的だとも感じています。

――部下への振る舞いや、コンプライアンス室に勤める夫とのやりとりには、傍から見ると厳しいものもあります。

NHKドラマ10『会社員』より。写真提供:NHK
NHKドラマ10『会社員』より。写真提供:NHK

吉田 自分に厳しく、結果を出して来たからこそ他人にもそれを求めてしまうのでしょうね。英理子の言動には、残念ながらハラスメント一歩手前の危うさがあるなと感じますし、若干計算している部分も。ただ、本人なりの自信と正義がありますから、そこはブレずに演じながら、視ている方に、どう見えるかの判断は委ねたいと思います。回を追うごとに、全国に英理子の味方が果たして増えていくのか、怖いですね。

南沙良さんの視線を受けていると誤魔化しが効かない、という気持ちに…

――その英理子を揺さぶるのが、メールセンターで働く派遣社員の斉藤るり(南沙良)です。

吉田羊さん。

吉田 英理子さんにとってるりというのは最後の良心というか、自分に残された無自覚の良心を象徴している存在だと思うんですよね。そんな存在が、揺れる彼女の目の前にいてくれるからこそ、彼女自身、問い続けることができている。

――二人が向き合う場面には、息が詰まるような緊張があります。

NHKドラマ10『会社員』より。写真提供:NHK

吉田 英理子さんは自信家だけれど、負い目もあるものですから、なんとかそれを相手に気取られまいと自分を硬くするところがあるんです。それを超えて突き刺してくる南沙良さんの目力があり、彼女の視線を受けていると、ああ、この人の前では嘘をつけないな、誤魔化しが効かないという気持ちになる。だからこそ、表では冷静なんだけれども、内心すごく焦ったり、それをなんとか誤魔化そうとしている。あの英理子さんは、実際に彼女とお芝居で対峙してみて生まれた感情なのかなと思います。

――脚本は名嘉友美さん、松井周さん、あさか友恵さん、縦谷宗さんの4人のチームで書かれています。演じる側から見て、どうでしたか。

吉田羊さん。

吉田 脚本家4人の皆さんとプロデューサー、監督が、本当に綿密に打ち合わせをして人物造形してくださっていたので、人によってキャラクターが違うということが一切ないんです。むしろ4人のブレインが寄ったことで物語が飛躍したり、発展したり、新しいアイデアが生まれたりする。本当に画期的で、いいシステムだなと思いましたし、プロデューサーや監督含め、全員で英理子を作りあげている実感があります。

――英理子に、救いは訪れるのでしょうか。

吉田 ネタバレになりますかね。何をもって救いとするかにもよると思います。その救いの正解は、見る方それぞれにあると思いますし。ただ、演じた私自身が感じる救いは、最終的にはあるのではないかなと思っています。

――本作はハラスメントを扱います。表現に慎重さが求められる時代でもあります。

吉田羊さん。

吉田 普段、直接面と向かって言えないことを、お芝居を使って代弁する。それがエンタメのできることの一つだと思っていて。でもこのご時世、表現できないことも増えてきていることに対しては、悔しいなという思いもあります。一方で、弱い者の声がきちんと届くようになったというのは喜ばしいことだし、それは守られるべきものなので。あとは、寛容さとバランスかなと思います。これはフィクションなんだという前提で見ていただいて、もし何かあれば、平和的解決のための議論が交わされるきっかけになったらいいなと思います。

後篇では、英理子と自分が重なる場所、そしてキャリアの役について考えていることを聞きます。

吉田羊(よしだ・よう)

2月3日生まれ、福岡県出身。1997年より舞台を中心に活動をスタート。2012年に連続テレビ小説『純と愛』(NHK)、2014年に『HERO』(フジテレビ)に出演し脚光を浴びる。以降、舞台、ドラマ、映画と多方面で活躍。今年の作品に映画『白鳥とコウモリ』『さとこはいつも』『わたしの知らない子どもたち』など。Netflix『俺のこと、なんか言ってた?』は10月22日より配信予定。

衣装クレジット

衣装 ヌメロ ヴェントゥーノ(IZA)、ジュエリー Hirotaka(Hirotaka 表参道ヒルズ)

IZA

Hirotaka 表参道ヒルズ
電話番号 03-3478-1830

文=田幸和歌子 撮影=佐藤 亘 スタイリスト=石井あすか ヘアメイク=中野明海

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ