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「武道館やろう!」直太朗さんのひと言から始まった60周年。森山良子さんの感謝と次の挑戦

  • 2026.10.19

「武道館やろう!」直太朗さんのひと言から始まった60周年。森山良子さんの感謝と次の挑戦

歌手生活60周年を迎える森山良子さん。来年1月7日には、日本武道館公演が控えています。長いキャリアを重ねた今も、歌への探究心は尽きることがありません。森山さんにとって「学び」とは、「面白そう」という好奇心の延長にあるもののようです。60年の歌手人生を振り返りながら、学ぶことの楽しさ、教わったことを自分なりに吸収する方法、そしてすべての方にお礼の気持ちを届ける日本武道館への思いを語ってもらいました。

森山良子さん 歌手
もりやま・りょうこ●1967年「この広い野原いっぱい」でデビュー。「涙そうそう」「さとうきび畑」など数々の名曲を歌い続け、日本を代表するシンガーとして活躍。2008年に紫綬褒章を受章。24年にはジャズアルバム『Life Is Beautiful』を発表。26年に歌手生活60周年を迎え、全国ツアーを開催中。

「武道館やろう!」直太朗のひと言から始まった60周年

今の私だからこそ届けられる歌を皆さんに

2027年1月7日に、日本武道館で60周年記念公演を行うことになりました。武道館の話を聞いたのは、本当に突然のことでした。ある日、直太朗が玄関を開けて、「武道館やろう! 60周年の記念にやるからね」と言って入ってきたんです(笑)。あまりにも自然に言うので、最初は「え、本当? 武道館!」という感じでしたが、時間がたつにつれて、少しずつ実感が湧いてきました。60年という時間を振り返ると、本当にたくさんの方に支えていただいて、たくさんの出会いがあって、たくさんの歌に助けられてきたんだなと思います。けれど60周年だからといって、ただ過去を振り返るだけのステージではなく、これまで積み重ねたものをもう一度見つめ直して、今の私だから届けられるものにしたいと思っています。

歌手として歩み始めた頃、作詞・作曲家の浜口庫之助先生からいただいた言葉があります。当時の私はスタジオで、渡された譜面を見ながら、間違えないようにきちんと歌おうとマイクに向かっていました。そんな私に先生が放った言葉です。

「君ね、マイクの向こうには何千、何万というお客さまがいるんだよ。そこに届けるんだよ」

先生のその言葉は、今でも忘れられません。私はそれまできちんと歌うことに気を取られて「誰かに届ける」という意識を持てていなかったんですね。自分の中でしか歌っていなかった。次に向かう扉を開いてくれた出来事でした。

ジャズを学ぶためにニューヨークへ

私にとって学ぶということは、何か特別なことを始めるというよりも、「もっと知りたい」と思った気持ちを大切にすること。私は歌を仕事にして60年になりますが、だからといって「もう十分知っている」と思ったことはありません。むしろ、長く続けてきたからこそ、まだまだ知らないことがある。歌には終わりがないから。だから、今でも「もっと知りたい」と思うのでしょう。教わることで、自分の考え方が広がっていくと感じています。

近年、あらためて学んだものの一つがジャズです。ジャズは以前から好きでしたし、歌ってもきました。でも、もっと深く知りたいと思い、大江千里さんとのジャズアルバムの制作をきっかけに、ニューヨークに行き何人かの先生に教えていただきました。

ある先生から「アドリブやインプロビゼーションは極力抑えたほうがいい」というアドバイスをいただいたことがありました。楽器のフレーズをまねるのもよい方法だという先生も。

でも、私の中には「自由に歌ってみたい」という気持ちが残っていました。もっとジャズらしく自分の感覚で遊んでみたいと思ったんです。

それで、もう一度、違う場所で学んでみたいと思い、翌年にはボストンのバークリー音楽大学の先生について学ぶことにしたんです。そこで私は、自分が感じていた疑問を一つずつ聞いていきました。

「ここでアドリブを入れてもいいですか?」。そう聞くと先生は「いいのよ。大丈夫。オッケー、ビューティフル!」と、とても自由に受け止めてくださったんです。その言葉がすごくうれしかった。もちろん、形を整えることも大切です。それと同時に、基本を学んだうえで、自分の中にあるものを信じて表現していいんだ、と背中を押していただいた気がしました。

「面白そう」が学びの入り口。だから今も進み続けられる

暮らしの中にも、学びのきっかけはある

歌以外で続けているのが英会話。以前は教室に通っていたこともありましたが、今はネットでレッスンを受けています。普段の生活の中でもネット配信の洋画を見ながら、聞き取れない言葉が出てきたときには「今、何て言ったんだろう?」と思って、もう一度戻して聞いてみる。そして調べて、ノートにメモしています。もちろん、書いたからといって全部覚えられるわけではありません(笑)。でも、また同じ言葉に出合ったときに、「あ、これ前に調べた言葉だ」と思える瞬間がある。その積み重ねが楽しいんです。

ほかにも編み物や刺繍、洋服のリメイクも好きです。どれも「これを学ぼう」と最初から決めて始めたわけではありません。いつもきっかけは、ほんの小さなことなんです。

刺繍を始めたのは、お気に入りの洋服に小さなシミを見つけたことがきっかけでした。捨てるのももったいないし、どうしようかなと思っていたときに、家には祖母が残してくれた刺繍糸がしまってあったことを思い出したんです。それで、そのシミの上に小さなお花を刺してみました。最初は、それだけでした。でも、「ここにもあったらかわいいかな」と思って、また刺して。気がついたら、どんどん広がっていました。最初は家にあった糸を使っただけなのに、結局、刺繍糸を買い足すことになりました(笑)。

リメイクもそう。お気に入りの服の丈を詰めたり、ステッチを加えたりするうちに夢中になり、今では自ら手を加えたアイテムをステージ衣装として着ることもあります。

何かを始めるときって、最初から大きな目標があるわけではないんです。「ちょっと面白そう」「やってみたい」その気持ちが入り口になる。そこから少しずつ世界が広がっていくんですよね。

手作りのニットバッグは、チャリティ企画で出品され、オークションなどで販売されたそう。

小さなシミをきっかけに始めた刺繍で、お気に入りの服が素敵に生まれ変わりました。

積み重ねた学びを胸に次の舞台・日本武道館へ

何歳になっても、興味をもった瞬間が始まりです。完璧にできなくてもいい。最初から上手じゃなくてもいい。まずやってみる。そこから少しずつ変わっていけばいいんです。

それと同時に学んだことを発表する場を作ることも大切だと思っています。インプットしたものは、アウトプットする場所があってこそ、本当の意味で自分のものになっていく気がするんです。歌だったら、先生から教えていただいたことを、繰り返し練習してステージで試してみる。実際に人の前で歌ってみなければわからないことがあるし、それを繰り返す中で、自分らしい表現は見つかるのだと思います。

だからこそ、2027年1月7日の日本武道館は、私にとって特別な場所になると思っています。武道館は、60年分の学びを皆さんに届ける場所。私にとって、最高のアウトプットの場になると思います。でも、そこで終わりではありません。60年歌ってきても、まだ知らないことがあります。まだ歌ってみたい歌があります。まだ出会いたい人がいます。

人生は、学び続けるから面白い。これからも、好奇心を大切にしながら楽しんで歌い続けていきたいと思っています。

【Information】「森山良子 武道館を歌う Ryoko Moriyama 60th Anniversary」

60周年の節目に、森山直太朗の発起で実現する日本武道館公演。親子が紡ぐ世代の架け橋と、深い感謝を伝える森山良子史上、初の日本武道館コンサートとなる。日本全国にいる長年のファンにとっても特別な一夜。世代を超えた音楽の継承を感じさせるステージになるに違いない。

2027年1月7日 (木) 17:00開演 全席指定 1万1000円(税込)チケットの一般発売は後日発表。

問い合わせ キョードー東京 ☎0570-550-799オペレーター受付時間(平日11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)オフィシャルホームページ https://www.ryoko-moriyama.jp/

撮影/山田崇博 ヘア&メイク/小野明美 取材・文/佐藤玲美

※この記事は「ゆうゆう」2026年秋号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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