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湯船で1分ずつ動かすだけ…シャンプーがつらい肩の痛みを和らげる、整形外科医の「水中うちわあおぎ体操」

  • 2026.10.18

年齢を重ねると、日常生活のちょっとした動きで肩に痛みを感じることがある。どのように対処すればいいのか。整形外科医の歌島大輔さんは「65歳以上になると、肩の痛みがけんばん断裂である可能性が高くなる。痛みを和らげ、肩の動かしやすさを保つためのおすすめの体操がある」という――。(第5回)

※本稿は、歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

肩の痛みを感じる女性
※写真はイメージです
65歳以上の肩の痛みは「けんばん断裂」かも

ちょっとした動きで肩に痛みを感じたり、腕が上がらなくなったりするのは、年だからしかたがないと、なかばあきらめている方は少なくないと思います。以前は意識することもなかった日常的な動作が、当たり前にできなくなるのは、暮らしそのものが変わってしまうということです。

たとえば、毎日の入浴。

・服を脱ぐ
・シャンプーで頭を洗う
・腰やお尻を石けんで洗う
・お風呂から出てまた服を着る

そんな動作をするたびに、肩が痛んだり、腕を上げにくくてササッとできなかったりするストレスは、知らず知らずのうちに蓄積されていきます。

実は、65歳以上の方の肩の痛みでは「けんばん断裂」の可能性が高くなります。「腱板けんばん」は、肩を安定させる4つのスジのことです。腱板が、加齢に伴い徐々に弱ってきて、傷んで切れる疾患がけんばん断裂です。

けんばん断裂は放っておくと進行することがあります。ここでは、毎日の入浴の習慣に取り入れることで、けんばん断裂の症状を和らげ、肩の動かしやすさを保つ簡単な体操をご紹介します。

お風呂で1分「水中うちわあおぎ体操」のやり方

今回ご紹介する〈水中うちわあおぎ〉体操は、肩の「腱板筋群けんばんきんぐん」に刺激を与える体操です。

腱板筋群は、肩の中のインナーマッスル(深層筋)のことです。深層筋は、体の深いところにある筋肉です。関節のすぐ近くにあり、関節の安定性を高める働きがあります。

肩にある4つの深層筋――棘上筋きょくじょうきん、棘下筋きょくかきん、小円筋しょうえんきん、肩甲下筋けんこうかきんをまとめて腱板筋群と呼びます。この4つの筋肉が協力し合い、肩関節の安定とスムーズな動きを支えています。肩関節が外れないように、関節のすぐそばで守っているのが腱板筋群です。

【お風呂で1分間「水中うちわあおぎ」体操】

(1)浴槽でお湯につかり、手を動かせる角度に座ります。背筋を伸ばし、脇を締めて、片方の肘を90度くらいに曲げます。肘を曲げたほうの手のひらを広げます。なるべく指はくっつけます。

手首を動かさず、肘から先を、浴槽の床と平行になるよう外側に動かします。

(2)それを内側へ戻します。開いたり閉じたりを1分。少し水の抵抗を感じる強さで続けます。

(1)(2)をもう片方の肩でもやりましょう。

水中うちわあおぎ
出所=『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)

腕を外側に開くときに痛みを感じるようなら、その手前の角度で止めてください。また、動かすのがつらい方は、手をグーにしておこなってください。

お湯の中で動かすだけで効果的

〈水中うちわあおぎ〉は、お風呂の中で前腕を動かすことで、肩の腱板筋群にほどよい刺激を与える体操です。前にいる人をうちわであおぐように、腕をやさしく動かします。

この体操では、水の抵抗を利用します。何も持たなくても、お湯の中で腕を動かすだけで、肩まわりの筋肉にやさしく負荷がかかります。

浴槽の形や大きさによっては、やりにくいこともあるかもしれません。その場合も、無理に大きく動かそうとしなくて大丈夫です。前腕がお湯に入り、肩に痛みが出ない範囲で小さく動かせれば、それで十分です。

お風呂では、体が温まって全身の血流がよくなります。緊張していた筋肉もほぐれやすくなります。湯船につかるだけでも体はリラックスしますが、そこにこの小さな動きを加えることで、硬くなった肩まわりを無理なくゆるめていくことができます。

〈水中うちわあおぎ〉は、「お風呂に入ったらやる」と決めておくと、習慣にしやすい体操です。お湯のほどよい抵抗で、ほんの少し押し返されるような感覚があり、これが意外と気持ちいいのです。

お湯の力を借りて、リラックスしながら、肩をいたわる時間にしてください。毎日少しずつでも続けることで、肩のこわばりがゆるみ、動かしやすさにつながっていくはずです。

“うちわ1本”使って椅子でもできる

お風呂以外でも、肩まわりをやさしく動かしたいときは、〈椅子でうちわあおぎ〉体操をおこなってください。水の抵抗の代わりに、うちわで空気をあおぐときの軽い抵抗を利用します。

用意するのは、うちわ1本です。うちわがなければ、扇子やクリアファイル、段ボールなど、空気を受けて軽い抵抗がかかるもので代用できます。

【〈椅子でうちわあおぎ〉体操】

(1)うちわの柄ではなく、扇の付け根を持ちます。椅子に腰をかけ、背筋を伸ばし、脇を締めて、肘を曲げます。手首を動かさず、肘から先を、床と平行になるように外側へ振ります。

(2)それを内側へ戻します。パタパタとあおぐように1分。少し風が起こるぐらいの強さで続けます。

(1)(2)をもう片方の肩もやりましょう。

椅子でうちわあおぎ
出所=『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)
鍛えるコツは“弱い負荷”

普通、筋トレで鍛えるのはアウターマッスルです。インナーマッスルを鍛えることはなかなかありません。

肩まわりのアウターマッスルは、三角筋、大胸筋、広背筋、僧帽筋そうぼうきんなどです。これらの筋肉は頑丈なので、通常の生活で切れたりすることはまずありません。本当に鍛えてほしいのはインナーマッスルのほうなのです。

インナーマッスルを鍛えるコツは、まず弱い負荷から始めること。アウターマッスルに余計な力が入らないようにしながら、インナーマッスルを意識して動かすことが大切です。

〈水中うちわあおぎ〉も〈椅子でうちわあおぎ〉も、肩が外側と内側にまわります。このような肩の回旋運動にはインナーマッスルが関わるため、この動きを繰り返すことで、自然にインナーマッスルに刺激を与えることができます。

とくに〈水中うちわあおぎ〉は、お湯につかりながらすることで、筋肉をリラックスさせる効果もあります。

インナーマッスルを鍛えるときは、アウターマッスルの三角筋などは働かせたくありません。〈水中うちわあおぎ〉は、全身が温まることによって、アウターマッスルがリラックスする理想的な体操といえます。

毎日の入浴やデスクワークの合間に簡単な体操を取り入れて、肩のインナーマッスルに刺激を与え、肩の機能をできるだけよい状態に保っていきましょう。

肩が楽になると、暮らしは変わる

けんばん断裂になってしまった方が目指すべきゴールは、腱板が修復されることだけではありません。夜に眠れ、一人で服が着られ、洗髪ができ、仕事が続けられ、趣味もできて、困らずに暮らせること。つまり、痛みが少なく、腕の機能が保たれたまま人生を全うすることです。

歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)
歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)

私は肩を専門とする整形外科医として、たくさんの患者さんの声を聞き、姿を見てきました。毎日シンプルな体操を続けることで、外に出るのがおっくうでなくなったという方もいます。好きだった趣味をまた楽しもうと前向きになった方もいます。

肩が楽になると、思っている以上に暮らしは変わります。家族や友人との時間にも、前より自然に笑顔でいられるようになるでしょう。

肩の痛みを和らげることは、単に症状を軽くすることではありません。諦めかけていた毎日を、もう一度取り戻していくことでもあるのです。

歌島 大輔(うたしま・だいすけ)
日本整形外科学会・日本専門医機構認定整形外科専門医/日本整形外科学会認定スポーツ医
1981年生まれ。山形大学医学部卒業。肩関節、肩関節鏡手術、スポーツ医学の専門家としてさまざまな肩治療を行う。肩関節鏡手術は年間約400件と全国トップクラス。診療のかたわら「医学的根拠のあるセルフケアを」との信念から、YouTubeで医療情報の発信も行っている。現在は東京脊椎・関節クリニック 羽田に所属。

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