1. トップ
  2. エピソード
  3. 「あの人、また来てる」お気に入りのパン屋で常連客に居場所を奪われた私→利用者アンケートに本音を書いた結果

「あの人、また来てる」お気に入りのパン屋で常連客に居場所を奪われた私→利用者アンケートに本音を書いた結果

  • 2026.10.18
SHUFUFU

近所にお気に入りのパン屋ができて3年。

週に2回、焼きたてのパンを買って、イートインでコーヒーを飲む。その時間が私の小さなごほうびだった。

あの常連グループが目につくようになるまでは。

「あの人、また来てる」が聞こえた日

通い始めて2年ほどたった頃。

いつものようにトレイを持ってイートインへ向かうと、5〜6人の女性グループが大きなテーブルを囲んでいた。

私が近くを通った瞬間、何人かが顔を見合わせる。

「あの人、また来てる」

小さな声だったけれど、聞こえた。

何のことだろうと思いながら、取り皿を取ろうと棚へ向かった。

けれど、何枚もあったはずの皿のほとんどが、彼女たちのテーブルにまとめて置かれている。

一枚取ろうとすると、グループの中心らしい女性が言った。

「あ、それ、こっちで使うから」

私は手を引っ込めた。

店員さんに頼めば新しい皿を出してもらえただろう。

でも、そこまでして同じ空間にいたくなくて、私はパンとコーヒーだけ持って隅の小さなテーブルに座った。

胸のあたりがざわついた。

半年間、輪の外に置かれて

それから、似たようなことが何度もあった。

顔を合わせたので軽く会釈しても、返ってこない。

共用の紙ナプキンやミルクが入ったかごを、自分たちのテーブルへ持っていってしまう。

混んでいるのに、空いている椅子へバッグを置いたまま長時間話していることもあった。

私が近くの席に座ると、急に声を落としてこちらを見る。

どれも、一つだけなら気にするほどのことではない。

でも重なると、「ここは私たちの場所だから」と線を引かれているように感じた。

店員さんは、私にもいつも通り丁寧だった。

彼女たちも店員さんには愛想がよく、楽しそうに話している。

店から見れば、ただ頻繁に来てくれる常連客に見えていたのかもしれない。

私も最初は気にしないようにした。

せっかく好きな店なのだから、あの人たちのために行けなくなるのは嫌だった。

それでも少しずつ、パンを選ぶ時間まで楽しくなくなっていった。

「今日もいるかな」

店に入る前に、まずイートインを確認する。

そんな自分にも疲れてきた。

「もう行かなくていい」と決めた朝

ある朝、パン屋へ行こうと玄関で靴を履きかけて、手が止まった。

行けば、またあのテーブルを確認する。

人がいれば身構える。

せっかくの休みなのに、どうしてわざわざ緊張しに行くのだろう。

「もう行かなくていいか」

声に出してみると、少し楽になった。

その日は別の店へ向かった。

翌週も、その次も、元のパン屋には行かなかった。

好きなお店だったからこそ、足が遠のいたことが寂しかった。

店から届いたアンケート

通わなくなって2か月ほどした頃、店の会員向けメールが届いた。

新商品の案内の最後に、簡単な利用者アンケートへのリンクが付いていた。

普段ならそのまま閉じていたと思う。

でも、

「最近ご利用いただいた際に、気になったことがあればお聞かせください」

という欄を見て、手が止まった。

少し迷ってから、起きていたことを書いた。

一部の常連客が共用の取り皿や備品をまとめて使っていたこと。

席を荷物で長時間ふさいでいたこと。

近くに座る客に聞こえるような言葉を口にしていたこと。

誰かを追い出してほしいとは書かなかった。

ただ、

「好きなお店でしたが、イートインを利用するのがつらくなり、最近は行かなくなりました」

と最後に添えた。

送信して、それで終わりだと思っていた。

「ほかにも同じような声がありました」

数日後、店からメールが届いた。

オーナーからだった。

「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」

そう書かれていた。

スタッフにも状況を確認したところ、共用の備品を一つのテーブルへまとめたり、混雑時にも荷物で席を使ったりする様子は以前からあったという。

さらに、私以外の利用客からも、

「一部のグループが長時間席を占有していて利用しづらい」

という意見が寄せられていたらしい。

店では、イートインの利用ルールを改めて掲示することになった。

共用の備品は各テーブルへ持ち込んだままにしない。

混雑時は荷物だけで席を確保しない。

ほかの利用客が不快になるような言動は控える。

特定の人だけを名指しするのではなく、全員に同じルールとして案内するという。

そのうえで、問題になっていたグループには店側から直接声をかけたそうだ。

しばらくして届いたメールには、

「注意後は以前ほど長時間利用されることはなくなりました」

と書かれていた。

今はまた、窓際でパンを味わう

「また気が向いたときにいらしてください」

その一文を読んでも、すぐに戻る気にはなれなかった。

でも数週間後、近くを通った日に、久しぶりに店へ入った。

パンの匂いは変わっていなかった。

イートインを見る。

以前のグループはいない。

取り皿は棚に並び、紙ナプキンやミルクも決められた場所に戻されていた。

私は窓際の席に座った。

焼きたてのパンをちぎって、コーヒーを飲む。

カウンターから、

「ありがとうございます」

といういつもの声が聞こえた。

久しぶりに、周囲を気にせずパンの味だけを考えていた。

ああ、私はこの時間が好きだったんだ。

ようやく、そう思い出せた。

さいごに

一つひとつは小さなことでも、それが重なると居心地のいい場所から足が遠のくことがあります。

その場で直接言い返すのが難しければ、いったん離れてもいい。

そして、伝えられる機会があれば、起きたことだけを店側に伝える方法もあります。

今回、私が声を荒らげたり、常連グループと直接対立したりすることはありませんでした。

それでも店側が状況を知ったことで、少しずつ環境は変わりました。

好きだった場所で「もう無理かも」と感じたとき、あなたならその場で伝えますか。それとも、いったん距離を置きますか?

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ