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夫にもらったカバンを勢いで売った私が、ママ友にわざと図々しくねだった理由

  • 2026.10.17
ハウコレ

自分で手放したものを、自分のものだとは言えませんでした。冗談めかして切り出した私に、ママ友が笑顔で返したのは、内ポケットについての短い言葉でした。

幼稚園の門の前で、見覚えのある茶色のカバンが私の横を通り過ぎました。片方の持ち手だけ、縫い目の糸が少し明るい色をしています。それは、私が修理に出したときに変わった糸の色でした。

夫がくれた最初の贈り物

あのカバンは、付き合って最初の誕生日に夫がくれたものです。ほつれた持ち手を近所の修理店で直してもらい、そこだけ糸の色が変わりました。

半年前の引っ越しの荷造り中、段ボールの数をめぐって夫と言い合いになりました。

「使ってないなら売れば」

その勢いのまま、フリマアプリに出品。1時間もたたずに買い手がつき、いつもの癖で葉を4枚つけたクローバーを描いたカードを添えて送りました。

翌日には後悔していましたが、もう取り消せません。しばらくして夫に「あのカバン、最近使わないね」と聞かれ、実家に置いてあると答えてしまいました。

口から出たのは別の言葉だった

門の前でそのカバンを見つけてから、何度も声をかけようとしました。けれど、自分で売ったとはどうしても言えません。夫に言えずにいることまで、そこからほどけていく気がしたのです。

公園のベンチで入手先を聞いたとき、返ってきたのは予想どおりの答えでした。自分のものだったと気づかれたくなくて、むしろ興味がないように振る舞おうとしました。口から出たのが、「中古なんだ。誰が使ってたか分からないのに、よく平気だね」でした。前の持ち主なら、ここに座っていたのに。

欲しいものを「それ頂戴」と冗談めかして言うのは、昔からの癖です。本気に聞こえなければ、断られても笑って済む。そう考えて、数日後に同じベンチで切り出しました。

「そのカバン、私の方が似合うから頂戴」

内ポケットのカード

彼女はあっさりうなずきました。

「いいよ。内ポケットに前の持ち主さんのカードが入ってるから、一緒に大事にしてあげてね」

指先に触れたのは、見慣れた厚紙の手ざわりでした。引き出すと、自分の字と自分の描いたクローバーがそこにあります。

「そのクローバー、どこかで見た気がするんだよね」

彼女の声は責めるでもなく、明るいままでした。全部知られていたのだと分かり、カードを裏返して戻します。親指は、あの明るい縫い目を探していました。

返そうと差し出したカバンは、一度あげたものだからと受け取ってもらえませんでした。息子が砂だらけの手で駆け寄ってくるまで、膝の上のカバンから顔を上げられずにいました。

そして...

その日、玄関のフックにカバンを掛けると、帰ってきた夫が「実家から持ってきたんだ」と言いました。うなずいただけで、台所へ向かいました。

カードは今、台所の引き出しの奥に入っています。彼女に本当のことを伝えるメッセージは、下書きのまま3回書き直しました。送信ボタンには、まだ触れていません。

(30代女性・パート)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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