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「早い者勝ちなんだから」運動会で二家族が広げた巨大なブルーシート。だが、見回りの先生が声をかけると

  • 2026.10.16
「早い者勝ちなんだから」運動会で二家族が広げた巨大なブルーシート。だが、見回りの先生が声をかけると

ゴール前を占める大きなブルーシート

僕が小学生だったころ、運動会の朝にあった出来事です。

その日、僕は教室に入る前に、母の場所取りを手伝うため校庭の観覧席へ向かいました。

ゴールの近くまで来たところで、思わず足が止まりました。

見たこともないほど大きなブルーシートが、いちばん見やすい場所に広がっていたのです。

角にはクーラーボックスが置かれ、ほかの人が入る余地はありませんでした。

そこを使っていたのは、仲のよい二家族でした。

親たちはシートの真ん中に集まり、お菓子を食べながら楽しそうに話しています。

一方で、広く取った場所の大半には誰も座っていません。

周りでは、場所を探している保護者たちが困ったように立っていました。母もシートを抱えたまま、空いている場所を探しています。

「あんなに広く取らなくてもいいのにね」

僕が小声で言うと、母は困ったように笑いました。

そのとき、小さな子どもを抱っこしたお母さんが、二家族に声をかけました。

「すみません。少し詰めてもらえませんか?」

真ん中に座っていた父親が顔を上げましたが、返事はありません。

お母さんはもう一度、遠慮がちに尋ねました。

「端のほうだけでも、使わせてもらえませんか。ほかに空いている場所がなくて……」

すると、母親のひとりが笑いながら手を振りました。

「いやいや、早い者勝ちなんだから」

別の親も続けます。

「そうそう。こっちは暗いうちから来て並んだんだもん」

親たちは顔を見合わせて笑いました。

声をかけたお母さんは、それ以上何も言えず、顔を赤くして下がってしまいました。

見回りの先生がかけた一言

開会が近づいたころ、ジャージ姿の先生が観覧席を見回りにやってきました。

先生は大きなブルーシートの前で立ち止まり、広さを確認すると、周りで場所を探している保護者たちにも目を向けました。

「おはようございます。すみません、こちらのシートなんですが、少し詰めていただけませんか?」

二家族の親たちは、きょとんとした顔で先生を見ました。

先生は続けます。

「シートはご家族ごとに一枚分でお願いします。まだ場所を取れていない方もいらっしゃるので」

すると、真ん中にいた父親が腰を浮かせました。

「いや、でも、早く来たのはうちらなんで…」

先生は落ち着いた声で答えました。

「早くから来られたのは分かります。ただ、今は使っていない場所もありますよね。そこを少し空けてもらえませんか?」

父親は返事に困ったように、隣の母親を見ました。

先ほどまで笑っていた母親も、何か言いかけましたが、結局何も言いませんでした。

二家族の親たちはお菓子を片づけ、ブルーシートを半分に折りたたみました。

先生は空いた場所を示し、先ほど断られたお母さんに声をかけました。

「こちら、どうぞお使いください」

「あ、ありがとうございます。本当に助かります」

お母さんは頭を下げ、自分のシートを広げました。母もその隣にシートを敷くことができました。

二家族の親たちは、狭くなったシートの上で肩を寄せ合い、静かに座っていました。

大人になった今でも、あの日の先生の姿はよく覚えています。

僕たちが場所を確保したころには、先生はもう次のシートの前にしゃがみ、めくれた端を地面に押さえていました。

誰かを大声で叱るわけでもなく、困っている人が座れるようにしてくれた先生。その落ち着いた対応が、子どもだった僕にはとても印象的でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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