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「応援しないで」決勝戦前の空手部主将→無音の客席で仲間が3本の指を掲げたワケとは

  • 2026.10.14

大学時代の友人が、決勝前に仲間へ「応援しないで」と頼み、無音の合図で優勝した話です。

声援で動きが速くなる主将

これは、私の大学時代の友人から聞いた話です。大学3年の友人は空手部の主将で、学生大会の組手に出場しました。

技の速さはありましたが、仲間の声援が大きくなると「応えなければ」と焦り、相手との距離を確かめる前に踏み込む癖があったそうです。準決勝でも先にポイントを取った後、応援席の歓声に押されて攻め急ぎ、終了間際に追いつかれました。

延長でどうにか勝ったものの、友人は控室へ戻るなり、決勝を応援しようと集まった部員へ「次だけは、応援しないで」と頼みました。

納得できなかった仲間たち

部員は驚きました。声を枯らして応援することが、試合に出られない仲間の役目だと思っていたからです。

後輩が「静かに見ているだけでいいのですか」と聞くと、友人は「3回呼吸してから動きたい。でも声が聞こえると、つい飛び出してしまう」と打ち明けました。

相談の末、声を出す代わりに、全員が指を3本立てることにします。友人が客席を見たら、指を1本ずつ折り、呼吸の回数を伝える。それだけを決めて決勝へ向かいました。

静かな客席から届いた合図

決勝が始まると、相手は開始直後から前へ出ました。友人の肩に力が入り、準決勝と同じように踏み込みそうになります。

その時、客席へ目を向けると、仲間全員が黙ったまま3本の指を掲げていました。1本、2本と折られるのに合わせ、友人は息を吐きます。

3本目が消えた直後、相手が先に動きました。友人は半歩下がって攻撃をかわし、空いた胴へ技を決めます。

その後も焦らず距離を保ち、1ポイント差で優勝しました。終了の礼をした瞬間、止めていた歓声が一気に弾けました。

声を出さない応援もある

表彰後、友人は仲間へ「静かな応援で冷静になれた」と伝えました。部員たちも、励ます方法は大声だけではないと知ったそうです。

次の大会からは、選手ごとに試合前にしてほしい応援を聞くようになりました。現在、友人は仕事で緊張する発表の前にも、片手で3本の指を作ります。

決勝の客席を思い出し、3回呼吸してから話し始めるためです。音のない数秒間は、仲間が何もしなかった時間ではなく、友人の動きを待ってくれた時間でした。

【体験者:40代・男性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:タニグチ
小学1年から水泳、4年から野球に打ち込み、大学卒業まで十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将を務め、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)の指導者も経験し、「する」「観る」「教える」すべての視点でスポーツと向き合ってきた。その中で、勝敗の記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたリアルなエピソードを中心に取材し、執筆している。

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