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キムラ緑子さん64歳が大切にする「ありのまま」の暮らし。結婚、離婚、再婚を経て、たどり着いた今

  • 2026.10.10

キムラ緑子さん64歳が大切にする「ありのまま」の暮らし。結婚、離婚、再婚を経て、たどり着いた今

「VIVANT」で櫻井司令を演じているキムラ緑子さん。年末には一転、ギリシャ悲劇の王妃役に挑みます。舞台『エレクトラ』で演じるのは、夫を自ら裁いた妻。母への復讐に燃える娘と対峙します。一方で、淡路島の実家へ片道6時間半をかけて帰り、両親と過ごす時間を大切にしているキムラさん。インタビュー第3回は、家族への思いを伺いました。

プロフィール

キムラ緑子さん 俳優
きむらみどりこ●1961年生まれ。兵庫県淡路島出身。劇団M.O.P.を経て舞台のみならず、映画・ドラマで幅広く活躍。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で注目を集め、近年は「VIVANT」、NHK連続テレビ小説「おむすび」などに出演。2026年12月、舞台『エレクトラ』に出演予定。

「年とっている、だけど、なんか見てしまう、になりたい」

1961年生まれのキムラさん。映画館や美術館など、いわゆる“シニア割”の対象年齢になった。

「美術館のチケット売り場の横で『一般で』とチケットを買っているおじさんにうらやましさを感じながら、『シニア‼2枚』と展覧会に入るおじいさん(マキノさん)とおばあさん(キムラさん)です」

いま、途切れることなく話題作に出演しているキムラさんだが、金銭感覚は昔と変わっていない、と話す。

「たとえばお金がバンと入ったとしても、ちまちましているのは昔からずっと。だって、学生時代に一人暮らしも経験しているし、京都で長いこと劇団をやっていたときからお金持ちでもなかったし。だから、金銭感覚はしっかりしていると思います。たまに使い過ぎちゃったなと思う心はあるから。それは貧乏人の性(さが)ですね(笑)」

カラオケのシニア割もちゃんと用しているそうだ。

「課題曲の練習をしに歌いに行くんですけれど、会員カードに“60歳以上”って設定してもらっているから、カードを出せば割引、です」

小さい頃は歌手になりたかったというキムラさんは、1970年代の人気番組「スター誕生!」(日本テレビ系)の地方オーディションを受け、最終に残りながら落選、という過去を持つ。

だが、18年ほど前から、ラスベガス生まれの日系三世の歌姫「ドリー・キムラ」に扮し、俳優の大谷亮介さん扮する「タニー・オータニ」とともに「ドリー&タニー」のユニット名で、年に1回ほどのゆるやかなペースでライブ活動を続けている。

カラオケで課題曲の練習に取り組み、幼い頃の「歌手になりたい」という夢も大切にしているのだ。

「この仕事を続けていて、できなくなることもありますよ。歳とったなぁとしみじみ思うこともあるし、受け容れなきゃしようがないって思うこともあります、悔しいけれど。でも、周りが最近、年上扱いしてくるから、少し前までそれが嫌だったけれど、乗っかってやろうと思うようになりました。もちろん、できるだけがんばります。役者だから、言われたことはやらないと仕事ではなくなってしまうので、ギリギリまでがんばりますけれど」

そんなキムラさんは、年齢をそのままに受け入れて“おばあちゃん”を演じる海外の女優の姿に共感している、という。

「私は自然のままがいいと思っているんです。ちゃんと老いよう。そのまま年をとって、ちゃんとおばあちゃんもやれるようになりたい。ありのまま、です」

年齢を重ねて刻まれた顔のシワも、「それが人間だと思うから」。

「役者って、人間を見せる職業なんです。きれいだとか、かわいいとか、そういう価値観をねじ伏せられるような芝居をしなきゃいけないということですね。年とっている、だけど、なんか見てしまう、になりたい。これ、なんかかっこよくない?」

いまは年老いた両親のために使うことが……

そんな「かっこいい」キムラさんが、生身の人間としていまいちばん大切にしているのが、淡路島に住むご両親を支えることだ。

「うちは普通の家族。自分たちのことは自分で精いっぱい、そういう時代だったのかと思います。両親が共働きだったので、そんなに一緒にいる時間はなかったし、私も大学を出てからずっと自分のことで精いっぱいだった。正月も帰らない時もありました。両親も私も、お互いが人生を楽しんでいたって感じでしたね」

それでも、舞台で活躍するキムラさんの芝居をご両親は楽しみに観に来てくださっていたそうだが、最近はそれも叶わなくなった。

「いまは親とできるだけ一緒にいたいのに、役者の仕事を続けている。いまここにいる、っていうことは、親と一緒にいられない時間なんです。それほど親といっしょにいたい。だって、あと数時間なのか、数カ月なのかわからないじゃないですか」

時間とお金の使い方。それは、それぞれの人生のステップで変化する。キムラさんも自身のInstagramで「介護製品がやたらと高いことやら、介護認定によってサービスが違うこと、母娘が一緒にいないと暮らせないのにそのような施設が見つからないことなどなど……をなげいている」(2025年10月30日)と綴っている。介護にはお金がかかるのだ。

「私だって、猫を抱っこして、家庭菜園をやって、それでお金が入ってきたらこんな幸せなことない、って思ったりするんですよ(笑)」

若い頃は、自分のためだけに使ってきた時間とお金。いまは年老いた両親のために使うことが、キムラさんにとっての“ありのまま”の人生の重ね方なのだろう。

「自分が楽しいと思うことを最優先にするというのはすごく大事なことだと思うけれど、自分が、自分が、の人が多すぎる。もうちょっと周りにやさしくなってみても罰は当たらないんじゃないかって。誰かに、うれしいと思ってもらえることをやさしくやりたいと思うわけです。私だって自分のことがいっぱい好きだから、自分の好きなことをやる。でも、ときどきは人にやさしくしないとなって思う。やさしくもされたいですしね」

それが、キムラさんなりのいまの時間とお金の使い方、だ。

「淡路島に帰って、仲のいい父と母を見ていて、夫婦ってずっと一緒にいたいんだ、と思うんです。私もずっと一緒にいたいですね」

夫のマキノノゾミさんとは、1992年に結婚。2005年に離婚し、2010年に再婚している。以前、テレビ朝日の「徹子の部屋」に出演した際には、「離婚と結婚を3回やると世間に怒られちゃうんで、いまは仲よくしております」と笑いながら語っている。

もうほんとうに究極の友だちだから。いちばん近くにいる人がいなくなったら、どう思うんだろう、と。これが舞台『エレクトラ』のヒントになるかもしれない。

「だって、夫を殺してしまうけれど、一度は愛しているわけだし。一回も愛していなかったら、結婚なんてしていないんです。一度でも愛している」

キムラさんの演じる王妃クリュタイムネストラは、わたしたち自身の人生を見つめ直すきっかけを与えてくれるはずだ。

【information】詩と音楽の光景『エレクトラ』

2026年12月13日(日)〜12月30日(水) <東京公演>東京建物ぴあシアター
2027年1月16日(土)〜17日(日) <愛知公演>Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2027年1月21日(木)〜22日(金) <大阪公演>梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

父を奪われ、母への復讐に燃える娘エレクトラ。夫を自ら裁いた王妃クリュタイムネストラ。愛と憎しみがぶつかり合うギリシャ悲劇を、台詞と旋律、沈黙と叫びが交錯する「詩と音楽の光景」として描く。これは、遠い神話ではない。そこにあるのは、戦争や分断、暴力が繰り返される今に通じる「正義とは何か」という問い。古代の悲劇が、いま新たな物語として立ち上がる。

原作:ギリシャ悲劇
翻案:岩切正一郎
歌詞:高橋亜子
音楽:ブランド・リー
演出:栗山民也
出演:明日海りお キムラ緑子 中尾明慶
渡邉蒼 徳重聡 豊原江理佳 山西惇 ほか

企画制作:ホリプロ
主催:ホリプロ/ぴあ
公演サイト https://horipro-stage.jp/stage/electra2026/

撮影/橋本哲

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