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「また彼女と喧嘩したの?」と聞いた私に、兄が黙って向けたスマホ。そこにあった「送信を取り消しました」の一行

  • 2026.10.10
ハウコレ

悪いのは自分だと言いながら、兄は取り消したメッセージを送り直そうとしませんでした。理由を尋ねた私に、兄は数か月前のチャットを見せます。

ベランダの手すりに、取り込み忘れたタオルが1枚だけ残っていました。窓を開けると、室外機の横で兄が膝を抱えて座り込んでいます。兄がリビングを出ていってから、ずいぶん時間がたっていました。

顔を上げない兄の「……俺が悪い」

兄は昔から、人の話にすぐ答えを出したがります。私が部活の愚痴をこぼした時も、返ってきたのは「やめれば?」でした。

「また彼女と喧嘩したの?」と聞くと、兄は顔を上げないまま「……俺が悪い」とだけ言いました。

「じゃあ謝れば?」

兄は答えず、スマホの画面をこちらに向けました。

取り消したのは「ごめん、もう言わない」

彼女の長文に、兄の親指のスタンプと「気にしすぎじゃない?課長も仕事でしょ」。そして彼女の「それ、前も言ったよね」。その下に「メッセージの送信を取り消しました」の一行が残っていました。

「何送ったの?」

「『ごめん、もう言わない』って」

兄がさかのぼって見せた数か月前のやりとりにも、同じ「気にしすぎじゃない?」と、同じ「ごめん、もう言わない」がありました。

少し間を置いて、兄は「また同じこと言った」とつぶやきました。

謝る言葉まで前と同じだったから、送った直後に消したのだと思います。

兄に言わずに送ったメッセージ

「彼女、たぶん無視されたと思ってるよ」

兄は「分かってる」と言ったきり、画面を伏せて膝の上に置きました。前と違う言葉が見つかるまで、送れずにいるのでしょう。でも彼女の画面には、取り消しの一行と既読しか残っていないはずです。

リビングに戻り、3人で食事をした時に交換したきりの、彼女の連絡先を開きました。

「突然すみません」

「兄がベランダで落ち込んでいます」

すぐに既読がつき、「教えてくれてありがとうございます。電話してみます」と返ってきました。

そして...

窓越しに、兄のスマホが光りました。兄は電話に出ると、こちらに背を向けます。話し声は、ガラス越しには聞こえません。

しばらくして戻ってきた兄は、私の前を通る時に「ありがと」とだけ言って、部屋へ入っていきました。

もう一度ベランダに出て、手すりに残っていたタオルを取り込みました。

(20代女性・大学生)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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