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瀬戸康史、アートを愛する素顔と尽きない創作欲  「子どもが寝てから石粉粘土でいろいろ作っています」

  • 2026.10.9
「シンシナティ美術館展 ~アメリカに渡ったヨーロッパの至宝~」オフィシャルナビゲーターの瀬戸康史 width=
「シンシナティ美術館展 ~アメリカに渡ったヨーロッパの至宝~」オフィシャルナビゲーターの瀬戸康史

全米屈指の歴史を誇るシンシナティ美術館から、81点の日本初公開作品を含む84点が来日する「シンシナティ美術館展 ~アメリカに渡ったヨーロッパの至宝~(以下、シンシナティ美術館展)」が、上野の森美術館で10月10日から2027年1月10日まで開催される。このたび、本展でオフィシャルナビゲーター&音声ガイドを務める俳優・瀬戸康史に、展覧会の魅力や自身のアートとの向き合い方をインタビュー。大好きだというエゴン・シーレとの出会いから、ソフビ収集や自身の創作活動まで、たっぷりと語ってもらった。

【写真】マイクの前でにっこり! 音声ガイド収録中の瀬戸康史

■音声ガイドを通して発見した“新たな美術の楽しみ方”

――「シンシナティ美術館展」のオフィシャルナビゲーター、音声ガイドに就任された時の率直な気持ちを教えてください。

瀬戸:普段から絵を描いたり、美術館に行ったりもするのですが、詳しいかと言われたら全くそんなことはないので…正直「僕で大丈夫なのかな」という思いはありました。でも知らないからこそ、ナビゲートしながら僕自身も発見することがたくさんあって。展覧会に来てくださる方も、みんなが美術に詳しいわけではないと思うんです。「絵を見ることが好き」とか、「ゴッホだけが好き」とか、そういう方もいらっしゃる。そんな方々が音声ガイドを使うことで「自分はこういう作品も好きかもしれない」と気づいたり、「こういう背景や思いがあって、この絵が描かれたんだ」と知ったり、僕と同じように新しい発見がたくさんできると思います。そういった意味でも、今回僕を選んでいただいたことはすごくうれしいですね。

――瀬戸さんご自身は、美術館などで音声ガイドを利用されることはありますか?

瀬戸:使ったことはありますね。絵に没入したい時は使わないこともあったり、気分によって使い分けています。

――今回音声ガイドを担当するにあたって、これまで聞いたものを参考にしたり、意識したことがあれば教えてください。

瀬戸:音声ガイドを担当するのは今回が初めてではないのですが、作品や企画によって自分の立ち位置というか、聞いてくださるお客さんとの距離感が全然違うので、そこはなかなか難しいところでしたね。今回は割と客観視しつつ、といっても客観的すぎるところまではいかず、その当時の状況や作者の考えがふんわりと匂ってくるくらいのニュアンスを意識しました。お客さんも作品を見ながら、いろいろ想像したり考えたりすると思うんです。そのちょっとしたきっかけになるような音声ガイドになればいいなと思って収録しました。

――収録を通して「発見することがたくさんあった」とのことですが、特に印象に残っている発見はありますか?

瀬戸:まず、こんなにもいろいろな流派に分かれているというのが、今まであまり意識していなかったこともあり、1番分かりやすい発見でした。また、自分が好きなのは抽象的な作品なんだということも改めて気づきました。自分で描く絵もそうですが、100人いたら100人それぞれの見え方があるような作品が好きです。

――そんな作品たちを実際にご覧になるのも楽しみなのではないでしょうか。

瀬戸:84点のうち81点が日本初公開。美術が好きな方でも実物を見たことがある人は本当に少ないと思うので、すごく楽しみです。また、この展覧会を通して約150年にわたる美術史に触れ、感じることができる。とても贅沢な美術展になるのではないかと思っています。

――今回の展示作品の中で、特に実物を見てみたいと思っている作品はありますか?

瀬戸:ハンス・アルプの『車輪』という作品です。ぱっと見ただけでは、「これは何なんだ?」という感じで何が描いてあるのか全く分からなくて(笑)。そこが面白いんですよね。僕がこの作品から想像したのは、まず“太陽”みたいなもの。全体的に暗い色彩なのですが、中心は太陽なのかなと。その周りに3つの形が描かれていて、それが人間の臓器のようにも見えました。それらが一つにまとまっているから、人との絆やつながりみたいなものを表しているのかなと思ったんです。でも、タイトルを見ると『車輪』なんですよ(笑)。自分が想像していたものとは全然違う、そういうところが面白いと感じました。

■エゴン・シーレとの衝撃的な出会い

――ご自身も絵を描かれるとのことで、作り手だからこそ気になる部分もあるのでしょうか。色使いや筆使いなど、作品を見る時に注目しているポイントがあれば教えてください。

瀬戸:例えば、すごく暗くて、ほとんど黒でできているような油絵の中に、少しだけ黄色や緑が入っていたりすると「なんでこの色なんだろう?」と考えたりしますね。「最初は緑だったところを上から黒く塗ったのかな?」「もしかして塗り忘れ?」「でも、そもそもなんで最初に緑を選んだんだろう?」とか。そういうことを想像するのが、僕はすごく好きなんです。だから、作品を見る時もそういう見方をしているかもしれません。

あとは筆使い一つをとっても、荒々しく描かれているものをネガティブに受け取る人もいれば、そこからすごくいいエネルギーを感じる人もいる。見る人のその時の心理状態によっても、受け取り方は変わるのかもしれないので、そういうところも絵を見る楽しみの一つだと思います。

――先ほど「抽象的な作品が好きだと気づいた」とおっしゃっていましたが、もともと好きな作家はいたのでしょうか。

瀬戸:今回の展覧会にはないのですが、1番好きなのはエゴン・シーレです。シーレは人間の肉体を描いているのに、どこかコンテンポラリーな要素があって、人を描いているのに人ではないように見える作品がたくさんあると僕は感じるんです。シーレ自身を描いた自画像も、人なんだけど人ではないように見える部分がたくさんあって、そこにすごく惹(ひ)かれました。ウィーンのレオポルド美術館で実際に作品を見たのですが、“ああいう感覚”になったのは初めてでした。「人を描いた絵として見られない」というか…。うまく説明するのが難しいんですけど、それがすごく衝撃的で。そこからシーレの作品が好きになりました。

――これまで訪れた中で、特に印象に残っている美術館はありますか?

瀬戸:やっぱり、レオポルド美術館になってしまいますね。ちょうどシーレの展示をやっていて、彼との出会いのきっかけをくれた場所なので、特に印象に残っています。

――もともとシーレの作品を目当てにレオポルド美術館を訪れたわけではなかった?

瀬戸:『グレーテルのかまど』(NHK)というお菓子を作る番組に出演させていただいているのですが、その特別企画でオーストリアのパティシエのもとへ修行に行ったことがあり、その時にレオポルド美術館を訪れました。実はその様子もオンエアされる予定でカメラが回っていたのですが、放送はされず。結果的に、僕がただ美術館に行っただけみたいになりました(笑)。でも、そこでシーレを知ったので、その時の衝撃はすごく大きかったですね。

■瀬戸康史を動かす尽きない創作への好奇心

――瀬戸さんにとって、俳優として芝居で表現することと、絵で表現することには、どんな違いがありますか? また、作品を“作る側”と“見る側”では、どのように楽しみ方が変わりますか?

瀬戸:これも言葉にするのが難しいですが、普段の俳優としての活動では、演じる役を通して、その人物の思いや作品が伝えたいことを表現しています。一方で、絵を描く時に出てくるのは、役ではなく“瀬戸康史自身”の感じていることが、そのまま絵にあふれ出ているような感覚があるので、そこが大きな違いですね。

絵を見る時は、「この人はどんなことを思って描いたんだろう」と考えることもあれば、「自分だったらこのタイトルでどんな絵を描くだろう」と考えることもあります。ただ単純に「なんでこの色が使われているんだろう?」と見ることもある。一つの見方だけではなくて、作品によって違うのかもしれません。

――そうした絵に触れる時間は、俳優としてのお仕事にも生かされているのでしょうか。

瀬戸:俳優をやっている時と絵に触れている時で、使っている脳みそが違う気がするんです。例えるなら、違うところを筋トレしているみたいな感じ(笑)。そうやって心が豊かになっているんじゃないですかね。俳優の現場でも、相手がぶつけてくれたものを柔軟に受け取って、こちらも返して、それがまたどんどんつながってお芝居になっていく。そういう部分で、もしかしたらつながっているのかもしれません。

――シンシナティ美術館は「世界を旅するように楽しむコレクションの宝庫」と呼ばれています。それにちなみ、瀬戸さんが夢中になって集めているものがあれば教えてください。

瀬戸:ソフビが大好きで、コレクションしています。もうどれくらいあるんだろう…数えたことがないし、数えきれない。今年2月に幕張メッセで開催された「ワンダーフェスティバル2026」に行った時は止まらなくなっちゃって、めちゃくちゃ買い足しました。おそらく30個くらい(笑)。一つのソフビでも色が違ったり、ちょっと形が違ったりするだけで欲しくなっちゃって。「なんで同じものばっかり買うの?」って言われたりもするのですが、それでも買ってしまうんですよね(笑)。

――オリジナルソフビ「せとくん」を発売されていますが、それは好きが高じて?

瀬戸:そうなんです。好きすぎて自分でも作っちゃいました! 今は2色展開しているのですが、「第3弾はどうしようかな?」と考えているところです。

――コレクションは大人になってから? それとも子どもの頃から何かを集めることが好きだったのでしょうか。

瀬戸:昔からだったかもしれないです。子どもの頃は『ドラえもん』がすごく好きで、「ザ・ドラえもんズ」といういろいろな国をモチーフにしたドラえもんたちの人形と一緒に寝ていました。あとは、ポケモンの小さな人形を集めていたこともありましたし、「ミニ四駆」も集めていたかも。考えてみると、昔から何かを集めること自体が好きだったんだと思います。それが今はソフビになっていますね。

――今後、挑戦してみたい創作はありますか?

瀬戸:立体造形にもすごく興味があって、子どもが寝てから石粉粘土を使っていろいろ作っています。まだ始めたばかりなんですけど、友達の友達が石粉粘土を使って作品を作っていると聞いて、その影響で僕もやってみようと。でも、やっぱり難しいですね。「どうやったらこのパーツとこのパーツがうまくくっつくんだろう?」と試行錯誤しています。途中で子どもが泣いたら、速攻で手を洗わなきゃいけないですし(笑)。そんなドキドキもありながら楽しんでいて、今後はもっとちゃんとやってみたいですね。

――ありがとうございます。最後に、普段あまり美術館に行かない方も含めて、今回の展覧会をどのように楽しんでほしいですか?

瀬戸:今回の展覧会はモネやゴッホ、ピカソといった、誰もが一度は名前を聞いたことがあるような巨匠たちの作品も並びます。普段あまり美術館に行かない方にとっても、そうしたビッグネームの作品を見られるというのは、入りやすいポイントなんじゃないでしょうか。

さらに、ただ「ゴッホという名前を知っている」というだけではなくて、「この作品をどんな思いで描いたんだろう」「どんな状況の時に描いたんだろう」と、その作品や作家の背景を知ることで、最初に見た時とは絵の見え方や感じ方も変わってくると思います。音声ガイドを、そうした楽しみ方のきっかけにしてもらえたらうれしいです。

(取材・文:米田果織)

「シンシナティ美術館展 ~アメリカに渡ったヨーロッパの至宝~」は、10月10日~2027年1月10日まで、東京・上野の森美術館で開催。

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