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「資料に書いてないことは、断れました」退職後に届いた後輩のメッセージに、私が返した「それでいいんだよ」

  • 2026.10.9
ハウコレ

後輩の「これだけ、ですか?」に、理由は話しませんでした。退職の面談で部長の前に置いた紙には、どこにも記録されてこなかった作業が並んでいます。

プリンターから出てきた紙を、裏返してもう1度確かめました。やはり、印刷されたのは1枚だけです。後輩に渡す引き継ぎ資料を、私は最初からこの厚さにすると決めていました。

1枚に収めると決めた理由

受注の入力、請求書の発行、電話の取り次ぎ、備品の発注。この席の仕事として決められているのは、本当はそれだけです。

課長の会議資料は、「今回だけ頼むよ」と言われたのが始まりでした。休みの日の在庫確認も、辞めた人の穴を埋めているうちに、いつの間にか私の予定になっていたもの。休みの日に鍵を開けて、誰もいない倉庫で段ボールの数を表に写していく作業です。どちらも、正式な担当業務として記録されたことはありません。

入って半年の後輩が、これを全部引き受けてしまう姿が浮かびました。頼まれたら断らない子だということは、隣の席で見てきてよく知っています。

理由を言わずに叩いた紙

資料を渡すと、後輩は紙を持ったまま、しばらく目を落としていました。

「これだけ、ですか?」

顔を上げた後輩の前で、私はペンの先で資料の上をトンと叩きました。

「書いてあることが、この席の仕事だよ」

本当は理由まで話すつもりでした。けれど話せば、あの子は自分からやると言い出す気がして、黙って机の片付けに戻りました。

最終日、部長の前に置いたもう1枚

最終日の面談で、用意していたもう1枚を部長の机に置きました。資料に書かなかった作業と、それぞれにかかっていた時間を、紙の端まで並べた一覧です。

部長は最後まで読んでから、顔を上げました。

「これ、全部ひとりで?」

「はい。後任には、渡していません」

部長はうなずいて、その紙を引き出しにしまいました。

今までの仕事をすべて紙に書き出したのは、これが初めてでした。並べてみると、その多くは頼まれて始めたというより、断らずにいるうちに増えていったものです。この先どう扱われるのかは、私には分かりません。花束を抱えて会社を出たとき、気がかりなのは後輩のことだけでした。

そして...

新しい職場に移って間もなく、後輩からメッセージが届きました。

「資料に書いてないことは、断れました」

何があったのかは書かれていません。短い文面を2度読んで、すぐに返信を打ちました。

「それでいいんだよ」

送信してから、スマホのカレンダーを開きました。休みの日に繰り返し入れていた在庫確認の予定が、まだ残っています。1件ずつ、削除を押していきました。

(30代女性・営業事務)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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