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「うちは塾に行かせない主義なの」と言うママ友→図書館で毎週会う親子の姿に、見方が変わった

  • 2026.10.8
ハウコレ

息子の塾を待つ間に座った図書館で、親子の背中が並んでいました。机の上の手書きの表が目に入ってから、あの日の言葉の聞こえ方が変わっていきます。

入塾の申込書は、ファイルに挟んだままカバンに入れていました。公園のベンチでママ友にその話をしたのは、世間話のつもりです。返ってきたのは、いつもより少し硬い声でした。

公園のベンチで返ってきた言葉

ママ友とは、息子同士が同じクラスになってからの付き合いです。すべり台の下でボールを追いかける2人を眺めながら、私はカバンからファイルを取り出しました。

「うちの子、来月から塾に通うことになって」

ママ友は申込書の塾の名前に目を落とし、少し間を置いてから言いました。

「うちは塾に行かせない主義なの」

「小さいうちから詰め込んでも、嫌いになるだけだと思うよ」

さらに、「3年生から通わせるのって、早い気がしちゃうな」とも。

責める口調ではありません。それでも、ファイルを持つ指に力が入りました。塾に行きたいと言い出したのは息子のほうで、体験授業から帰った日は、解けた問題の話を食事の間じゅう続けていたのです。

「そっか、いろいろだよね」

それだけ返してファイルをカバンに戻し、息子の名前を呼びました。

申込書の署名欄を前にして

帰ってから申込書を広げると、保護者の署名欄だけが空いていました。ペンを持ったまま、公園でのやりとりを何度もたどり直します。

詰め込んでいるつもりはありません。けれど主義とまで言われると、方針もなく周りに流されている親だと言われた気がしたのです。息子が自分で決めたことを、ベンチの上で採点されたような気分でした。

署名を済ませた申込書は、そのままポストに入れました。

それからは公園で会っても、会釈だけで済ませるようになりました。ママ友も、それ以上は話しかけてきませんでした。

窓際の席に並ぶ2人の背中

息子の通う塾は、駅前の図書館の向かいにあります。授業が終わるまでの90分、図書館で待つことにしていました。

初めての日、窓際の席で見覚えのある背中を見つけました。ママ友と、その息子さんです。とっさに、窓際から離れた奥の席を選びました。

次の週も、2人は同じ席にいました。雑誌を取りに行く途中で机の横を通ると、ノートに貼られた手書きの表が見えます。マス目の半分ほどに赤い丸が並び、ママ友は赤ペンで問題集の端を指していました。こちらには気づいていないようでした。

3回目も同じ光景です。息子さんが消しゴムを動かすたび、ママ友は黙って次の問題を指さします。

塾に行かせないと聞いて、勉強にはこだわらない家なのだと思い込んでいました。机の上にあったのは、毎週積み重ねられた丸の列です。私への線引きだと受け取った言葉が、少しずつ別のものに見え始めていました。

そして...

4回目の日、ママ友のほうから私の席まで歩いてきました。

「この前は、変な言い方してごめんね」

「ううん。ここで一緒に勉強してたんだね」

「うん。うちは、このやり方が合ってるみたい」

ママ友はそれだけ言って、窓際の席へ戻っていきました。どうしてこのやり方なのかは、聞きそびれたままです。

今も、息子を塾の入り口まで送ったあとは、窓際が見える席に座ります。目が合うと、ママ友は赤ペンを持ったまま小さく手を振ってくれます。カバンの中では、塾のテキストの横に図書館の貸出カードが並んでいます。

(30代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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