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自分の手で、暮らしをこさえる。的場シオリさんが“作り手の思い”を届けるメディアに込めたもの

  • 2026.10.8
株式会社クラシコサエル代表取締役兼編集長の的場シオリさん

 

GLAMのインタビュー企画では、人生やキャリアの節目で自分らしい選択を重ねてきた女性たちのリアルな声を通して、読者に気づきや共感、そしてこれからの自分を選ぶためのヒントをお届けしています。

今回お話を伺ったのは、暮らしをつくるWebメディア「クラシコサエル」を運営する、株式会社クラシコサエル代表取締役兼編集長の的場シオリさん。「クラシコサエル」では、器や調味料、暮らしのアイデアなどを紹介するだけでなく、ギフト商品の販売や季節の手仕事を楽しむワークショップも展開しています。

的場さんは料理教室での勤務や、個人事業主として自宅サロンを運営した経験を経て、2023年に「クラシコサエル」を立ち上げました。現在は二児の母として子育てに向き合いながら、経営者、編集長として幅広い活動を続けています。

今回は、現在の活動につながる幼少期の出来事や、コロナ禍で出産したことをきっかけに生まれた価値観の変化、そして仕事と子育てを両立しながら、自分らしい暮らしを選ぶために大切にしていることについて、じっくりとお話を伺いました。

人生の転機・価値観の変化

料理教室、自宅サロンを経て「クラシコサエル」へ

過去の経験を活かして事業をスタートした的場シオリさん

「クラシコサエル」を立ち上げたのは2023年で、その前は10年ほど、個人事業主として自宅で習い事教室を主宰していました。さらにその前は、大手料理教室に勤めていました。
振り返ってみると、過去の仕事内容すべてが重なって、今があると感じています。

「買う」よりも「作る」が身近だった幼少期

小学生の頃、レシピを見ながら初めてキッシュを作った時のことをよく覚えています。野菜を育てたり、裁縫をしたり、“買う”よりも“作る”という選択が身近な幼少期を過ごしました。

クラシコサエルで販売中の手作り鍋敷きキット

そこで自分で何かを作り出せたという成功体験や、満たされた感覚が今につながっていると思います。

幼い頃に感じた「自分の手でつくれた」という喜び。その感覚は、身近なものに手をかけ、日々の暮らしを自分でつくっていく現在の活動にも息づいていると語ります。

コロナ禍の出産を機に変わった、暮らしとの向き合い方

私の転機は、コロナ禍で出産したことです。出産を機に食への意識が高まり、それを調べる時間もたっぷりありました。そこで、なるべく自然に近い形で育った栄養価の高い旬のものを食べることを大切にしたいと思うようになりました。

暮らしとの向き合い方に変化が生まれた的場シオリさん

それに、家の中で過ごすことに目が向いた時、すごく心地が良いことに気づいたんです。家にあるものを改めて見直して、それまで何気なく買っていたものにも、素材があり、作り手がいて、受け継がれてきた作り方がある。
完成したものを買うだけではなく、その背景を知ったり、自分の手でつくってみたりすることに、暮らしの豊かさを感じるようになりました。

コロナ禍で自分と向き合う時間が増えた的場シオリさん

それまでは煌びやかな自宅サロンを主宰していて、ブランド食器や食器のセットを集めてテーブルコーディネートしたり、有名店や予約が取れないお店へ行くことも好きでした。

今では、作家さんの一点ものの器や、季節によって揺らぎがあるものに魅力を感じるようになり、梅干しやからすみを家で仕込んだりする方が楽しいと思うようになったんです。

手をかけることで暮らしが豊かになる様子

コロナ禍を経て自分でも驚くぐらい、考え方が180度変わりましたね。

買えばすぐ手に入るものを、あえて自分でつくってみる。季節の行事も、ただ行うのではなく意味を調べてみる。そうすると、暮らしが少し豊かに感じられる気がします。
クラシコサエルで伝えたい「飾らない豊かさ」も、そんなところにあるのだと思います。

現在の仕事・活動

「暮らしをこさえる」という名前に込めた想い

「こさえる」「こしらえる」は、私の生まれた淡路島の方言だと思っていたのですが、東北や九州の方に聞いても「うちの方言だよ」と言うのです。それなら、昔から各地でこっそり大切にされてきたどこか懐かしい言葉と共に暮らしのアイデアを、現代の暮らしにも届けたい。そんな思いから、この名前にしました。

勢いで始めたからこそ直面した、メディア運営の難しさ

最初に「大失敗したな」と思ったことは、WebメディアやECサイトの会社に勤めてから始めればよかった、ということです。私はWebについてほとんど知識がないまま、やってみたいという気持ちだけで始めてしまったんですよ(笑)。

それまで、Instagramで自分がいいと思ったものを紹介すると共感してもらえるという経験はあったので、「クラシコサエル」でも売れるイメージを持っていたんです。でも、サイトで商品を売ることはそんなに簡単ではなくて、例えば、SEO対策も必要ですよね。
そうしたことを実装して軌道に乗せるまでには、なかなか苦労しました。

その後、ライターさんや作り手の方々の力も借りて、ワークショップを毎月開催したんです。それが軌道に乗り始めたことが、「クラシコサエル」自体も軌道に乗り始めるきっかけになったと思います。

たくさんの人が集まるクラシコサエルのワークショップ

勢いと行動力で踏み出した一方、立ち上げ後に直面したのは、個人の発信と事業としてのメディア運営の違いでした。これまでの経験をワークショップという形に変えたことが、次の突破口になったといいます。

商品を選ぶ基準は、作り手の想いが伝わること

作っている方自身が、その商品について熱く話せることです。「なぜこれをつくっているのか」という作り手の想いが、商品にきちんと乗っているもの。自分が作りたいから、こだわりがあるから、大切に受け継いで作っている。そういう作り手の志があるものを選ぶようにしています。

クラシコサエル自社製造の柚子胡椒と塩

「クラシコサエル」では、柚子ごしょうと完全天日塩を自社で作っていて、取り扱ってくださっている店舗が全国にあります。店主がこだわりを持って商品を選んでいる小さな商店や、名物スタッフさんがいるスーパーマーケットとは、特に相性がいいですね。

クラシコサエルのオンラインストアも、そんな小さな商店のような感覚なんだと思います。

画面の向こうから届く反応が、続ける力になる

やはり、お客様の反応にやりがいを感じます。
私たちが選んだ商品を購入いただけた時や、ワークショップの参加者の方から、「こういうワークショップがまたあったらいいな」と言っていただいた時ですね。
クラシコサエルが始まったばかりの頃、「名前を見て気になって、読みものや商品を見て、すごく素敵なメディアだと思いました」と、わざわざコメントをくださった方がいました。勢いだけで始めて、ちょうど大変さを感じ始めた頃だったので、その言葉は今でも心の支えになっています。

作り手の想いが表れるものを選ぶ的場シオリさん

自分たちが選んだものが誰かの暮らしに届くこと。そして、まだ形になりきっていない時期にもらったひと言。画面の向こうから返ってくる反応ひとつが、メディアを続ける力になっています。

ライフステージの変化と選択

40代を迎えて変わった、もの選びの価値観

年齢というより、コロナ禍のタイミングで変わったことが大きいですね。コスパが良ければ「買い」ではなく、作り手の感情が映ったようなものを選びたいと思うようになりました。ブランドや高価なものだからというより、流行に関係なく自分が本当に好きだと思えるものを選ぶように。あとは、作っている人が好きとかも選ぶ基準になっています。

仕事が遅くなっても、子どもの成長は見逃したくない

次男のお食い初めを手作りで準備した的場シオリさん

子どもの成長は本当に一瞬なので、そこだけは見逃したくないと思っています。少なくとも、この5年、10年くらいは、「仕事が遅い人認定」されても、日々の子どもたちの成長を大切にしたいですね。

第二子が生まれてからは特に、自分でもできることにお金を払ってまで……という思考は手放し、外部のサービスに頼り、仕事をしながら子どもと向き合う時間をつくるようになりました。

子どもと過ごす時間を大切にする的場シオリさん

仕事か子育てかを二者択一で考えるのではなく、頼れるものを頼ることで、今しかない時間を守る。それが、的場さんが見つけた両立の形だと言います。

忙しい日こそ、暮らしをこさえる時間を持つ

これこそ、まさに暮らしをこさえることです。慌ただしい日や、自分に余裕がないと思った時こそ、何かを少し作ってみたり、仕込んでみたりする時間を大切にしています。

季節の行事を子どもと一緒に楽しむ的場シオリさん

あとは、季節を感じることも大切にしています。例えば、長男とお月見の準備をして、「お月見って何だろうね」と調べたり、季節ごとに訪れる行事を楽しみに準備することが、自分らしさを取り戻せる時間なのかもしれません。

私自身が好きなことなので、息子にも興味を持ってほしいなって思っています。好き嫌いは別としても、物事を知るきっかけは作りたいと思うんですよね。

忙しいからこそ、あえて手を動かし、季節の気配に触れる。的場さんにとって「暮らしをこさえる」時間は、日常を整えるだけでなく、自分自身へ戻るための時間でもあります。

自分らしく選ぶとは、誰かの役に立つ輪を広げること

楽しいと思えることや、やりたいことを選ぶ。やりたくないことは無理にせず、得意な人に任せる。それを前提として、私の場合は「誰かの役に立つかどうか」も、選択する時の基準になっているかもしれません。

「クラシコサエル」を立ち上げた時も、まずは身近な人の役に立って、そこから少しずつ輪が広がっていけばいいな、と。そして、その輪が誰かとつながっていくかどうかも、私にとって「自分らしく選ぶ」ための大切な基準なんだと思います。

「自分の手でこしらえた」という幼い頃の喜びを原点に、暮らしと向き合い、作り手の想いを届けてきた的場さん。忙しい時こそ手を動かし、季節を感じ、今しかない家族との時間を大切にする姿からは、日々を丁寧に選び取ることの豊かさが伝わってきました。

自分らしく選ぶことは、自分の心地よさだけでなく、その選択が誰かの役に立ち、人との輪を広げていく未来まで思い描くこと。そんな小さな選択の積み重ねこそが、自分らしい暮らしをこさえていくのかもしれません。

プロフィール・SNS

名前:的場シオリ
職業:株式会社クラシコサエル 代表取締役/編集長
プロフィール:1986年、兵庫県淡路島生まれ。二児の母。暮らしをつくるWebメディア「クラシコサエル」を運営。“飾らない豊かさがある暮らし”をテーマに、公式ライターとともに暮らしの工夫や季節の手仕事、食、器、ものづくりなどを発信。メディア全体の企画をはじめ、商品開発やオンラインストアの運営、作り手と使い手をつなぐワークショップやイベントの企画などを手がける。

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