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「失敗しない子」より「立ち直れる子」に。今の時代に必要な「レジリエンス」という力

  • 2026.10.7

「できれば、わが子には失敗してほしくない」親なら、そう思うことがあるのではないでしょうか。友達とトラブルになったと聞けば、「大丈夫だった?先生には言った?連絡帳に書こうか?」と心配になる。テストで良い点がとれるように、「今日はテストがある日?」と日々確認したり、朝から勉強させたりしてみる。短期的に見れば、物事が早く解決したり、テストの点数が数点高くなったりするかもしれません。でも私は、13年間の小学校教員としての子どもたちとの関わりのなかで、彼らの成長から学んだことがあります。それは、「失敗がないと身につかない力がある」ということです。

失敗から立ち直る「レジリエンス」

最近、教育や子育ての分野でもよく聞かれるようになった「レジリエンス」という言葉。簡単に言えば、困難やストレス、失敗などに直面したときに、それに適応し、立ち直っていく力のことです。ここで大切なのは、「落ち込まないこと」ではないということ。悔しくて泣いてもいい。「もう嫌だ」と言ってもいい。しばらく立ち止まることだってあります。大切なのは、そこから少しずつ、「じゃあ、次はどうしよう」と動き出せること。私は、この力は「失敗しないように育てる」だけでは、なかなか身につかないと思っています。

学校は「小さな挫折」の宝庫

学校では、本当に毎日のように小さな事件が起こります。例えば、テスト。一生懸命勉強したのに、思っていたより点数が取れなかった。隣の子は100点。自分は60点。「もう算数嫌い」と、プリントを机の中に押し込んでしまう子もいます。そんなとき、すぐに大人が、「60点でもすごいよ!」と励ますことが、必ずしも必要だとは思いません(もちろん、毎回5点の子が60点を取るのは凄いことですが)。「十分すごいこと=失敗じゃなかったこと」にすり替えるのではなく、本人が悔しがっている以上は、「失敗を失敗として受け止めること」が大切です。しかしこれには、「安心して失敗できる」環境であることが条件です。子どもにとっての「安心して失敗できる」というのは、まず「失敗を頭ごなしに否定されない」ことから始まります。例えばぐしゃぐしゃにしたテストから、子どものイライラを感じ取るかもしれませんが、その根底にあるのは「悔しさ」かもしれません。「ぐしゃぐしゃにしたらあかんやろ」「じゃあもっと勉強したらいいやん」という正論ではなく、「悔しいっていう気持ちを感じられるって、素敵なことやんな」まずは、それだけでいいのかもしれません。そして少し落ち着いたときに、「どこで間違えたんやろ?」と一緒に答案を見てみる。すると、「計算は全部合ってる。でも文章問題で間違えている」「ここ、問題の意味を勘違いしてた」と、自分で気づくことがあります。「失敗=算数ができない」から、「文章問題の読み方を変えたらいいのかもしれない」に変わる瞬間です。

運動会で負けた。悔しくて泣いた。

運動会も、子どもにとっては大きな挫折が生まれる場所です。・リレーの選手になれなかった。・転んでしまった。・自分のチームが負けた。本気で取り組んだ子ほど、本気で泣きます。教員をしていると、そんな場面に何度も出会います。でも私は、子どもが悔しくて泣いている姿を見ると、少しだけうれしくなることがあります。もちろん、「負けてよかった」という意味ではありません。それだけ本気になれるものに出会えたんだな、と思うからです。・悔しい。・負けたくなかった。・もっとできると思っていた。そんな感情を経験したあと、「来年はリレーの選手になりたい」と走る練習を始める子もいます。失敗や挫折は、ときに次の行動のエネルギーになります。

友達との喧嘩も、大切な「失敗」

学校生活で避けて通れないのが、人間関係です。傷つけることを言ってしまった。それ自体はもちろん「成功体験」ではありません。その表現の仕方では、自分の気持ちが正しく伝わらず、「失敗」になってしまうかもしれません。でも子どもの世界は不思議なもです。「もう絶対〇〇ちゃんとは遊ばない!」そう言っていた二人が、次の日には一緒に笑っているという光景は、学校では珍しくありません。大人からすると、「そんなことで喧嘩する?」と思うようなこともあります。でも子どもにとっては、その一つひとつが人間関係の練習です。・言いすぎてしまった。・相手を傷つけた。・仲間に入れてもらえなかった。・自分の思い通りにならなかった。でも、そこで終わらない。子どもたちは、失敗体験で終わらせない力を持っています。「ごめん」と言ってみる。「本当は嫌だった」と伝えてみる。しばらく距離を置いてみる。別の友達と遊んでみる……。こうした経験を何度も繰り返しながら、子どもたちは少しずつ、「人間関係は壊れることもある。でも、修復することもできる」と学んでいくのだと思います。大人が先回りすると、失敗する機会もなくなります。失敗する機会がなくなると、そこから立ち直る機会もなくなります。でも、いざ子どもが困っていると、私たち大人はつい助けたくなりますよね。・忘れ物をしそうなら届ける。・友達と揉めたらすぐに解決する。・宿題が間に合わなければ手伝う。・失敗しそうなら、先に正解を教える。もちろん、大人の助けが必要な場面はあります。いじめや安全に関わることなど、子どもだけに任せてはいけない問題もあります。でも、すべての石を取り除いて歩きやすい道をつくってしまったら、子どもは「転んだときの起き上がり方」を、いつ練習するのでしょうか。小学生の失敗の多くは、人生を決定づけるものではありません。・忘れ物をした。・テストで間違えた。・友達と喧嘩した。・試合に負けた。・発表でうまく話せなかった。ここに、あとから価値を見出すための支援をするのが大人ではないでしょうか。

家庭内でおこったこと

家ではこんなことがありました。工作の大好きな娘は、何やら難しいおもちゃを作ろうとしています。彼女の発達段階や気質を知っている親からすると、「おそらくそれは、難しいだろうな。完成できず、イライラしてくるだろうな」と予想できました。でも、自力で作り上げるんだ!と気合いを入れて、「大人の手助け何て必要ない!」と言って作り始めます。でもやっぱりなかなか上手くいきません。結局完成できず機嫌をそこねてしまいました。みなさんならどうしますか?(1)「だから言ったでしょ。言うことを聞いていればよかったのに。」と非難する。(2)「大丈夫だよ!ほら、こうやってこうしたら、ね!」と励ます。(3)その他もしかすると、(2)の人も多いのかもしれません。でも私は、すぐに手を差し伸べませんでした。慌ててフォローし、「失敗しなかったことにする」こともできますが、私はあえて「失敗」を噛みしめてほしいと思いました。そしてそこから気持ちを切り替えて、「次どうするか」を自己選択させました。すると、「木の大きさがバラバラで、きれいな四角の箱が作れないの」と困っていることを自分で言語化したり、「ここを押さえていてほしい」と具体的なフォローの内容も伝えてくれました。そしてイメージしていた「ガチャガチャ」のおもちゃを1から作り上げたのです。これを教育界では、セルフアドボカシーと呼ぶことがあります。自分に必要な支援を自分で考え、人を頼る力です。レジリエンス=立ち直る力やしなやかさというのは、何も「人に頼るな。」ということではありません。子どもたちは、失敗した時、人に助けてもらい、支援してもらいながら、少しずつ失敗体験を失敗で終わらせない術を学んでいくのです。

声掛けに悩む!そんな時は

子どもが何か失敗したとき、何て声をかけたらよいのか迷う人もいますよね。私が良く使うのは、「どうする?」「どうしたい?」です。・忘れ物をした。「どうする?」・友達と喧嘩した。「どうしたい?」・テストで思うような点が取れなかった。「次にむけて、どうしてみる?」もちろん、「どうすべき?」のように、突き放して聞くのではありません。必要なら一緒に考えたり、アドバイスをすることもありますが、はじめから「こうしなさい」「次はこうしたら」と指示することはあまりありません。そうやって小さな失敗と小さな回復を何度も経験していくうちに、・「失敗しても、なんとかなる」・「間違って困ったら誰かに助けを求めてもいい」・「方法を変えて、もう一度やってみればいい」という感覚が、少しずつ子どもの中に蓄積されていくのではないでしょうか。※ただし、子どもの安全・安心が侵されるような事態においては、明確に指示・指導することも必要。

子どもに必要なのは「転ばない力」ではない

これから子どもたちが生きていく社会で、失敗を完全に避けることはできません。・受験に落ちるかもしれない。・仕事で失敗するかもしれない。・大切な人と別れるかもしれない。・一生懸命挑戦したことが、うまくいかないかもしれない。親がずっと先回りして、そのすべてを取り除くこともできません。だからこそ、子ども時代に育てておきたいのは、「転ばない力」ではなく、「転んでも起き上がれる力」。学校は、勉強だけを学ぶ場所ではありません。テストで間違えて、友達と喧嘩して、負けて泣いて、先生に叱られて、思い通りにならなくて。それでも次の日、またランドセルを背負って学校へ行く。考えてみれば、子どもたちは毎日のように、小さな「失敗」と「再出発」を繰り返しています。大人から見れば小さな出来事でも、その一つひとつが、「失敗しても私は大丈夫」という、これからの人生を支える土台になっていくのかもしれません。子どもの失敗をなくすことよりも、失敗してもまた歩き出せると、子ども自身が知っていること。それが、私たち大人が子どもに渡せる、とても大切な力なのではないでしょうか。

【Profile】mama先生(@itoshiki_kosodate)

 (1711900)

「子育ては、子どもを変える作業じゃない。親が変わることで、結果的に子どもが成長するのだ」 これは、私が大切にしている考え方です。元小学校教諭。現在は肩書きを「非正規」に変え、日本の教育社会問題の解決に挑戦しています。偏差値偏重ではなく、非認知能力を軸にした次世代教育を実践する「総合塾=ItoshikI after school」を立ち上げ、子どもたちの創造力と生きる力を育む学びを探求中。また、全国のママたちが安心して子育ての悩みを共有できる伴走型コミュニティ「ItoshikI 子育てサロン」を運営し、「教育学で考える 子育ての教科書」を用いた授業を公開。Instagramでは「学校では教わらない お家で差がつく子育て知識」を発信中。これからも多様な仲間と共に、新しい教育の未来を共創していきます。

Instagram:mama先生(@itoshiki_kosodate)

Voicy:お家で差がつく子育て知識「学校では教わらない、子育ての教科書🌱」

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