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宅建士「ダメですよ」忠告をよそに実家を約8年放置した大家→警察沙汰になった結果、背負った“想定外の出費”

  • 2026.10.28
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。賃貸の現場に25年携わっている宅建士のひろです。

「空き家は、とりあえず置いておけばいい」

親が亡くなって実家が空いた。売るのも面倒、片づけるのもお金がかかる。そう考えて空き家をそのままにしている方は多いのではないでしょうか。

しかし、何もしない時間が、思いもよらない形で家の価値を下げていくことがあります。今回は、相続した実家を約8年間放置した、取引先の大家さんに起きた出来事をお伝えします。

何の変哲もない一軒家が、少しずつ"趣"を帯びていく

取引のある大家さんのご実家の話です。築50年ほどの2階建ての一軒家。どこにでもある、何の変哲もない家でした。

親御さんが亡くなってから、大家さんは売るでも片づけるでもなく、家はそのまま置かれていました。結果として放置は続き、解決まで約8年にもおよびました。

人の手が入らない家はすぐに姿を変えます。4年目ごろから、目に見えて草に覆われていきました。クズやヤブガラシといったつる草がはびこり、外壁は草まみれ。郵便受けからあふれた郵便物は飛び散り、家はどこか朽ちたような、"趣のある"雰囲気をまとっていきました。

私は早い段階から、大家さんにこう伝えていました。

「このままにしておいたら、ダメですよ」

けれど、「ちょっと落ち着いてから」「次の休みに行くつもりだ」「その件は、もう考えているんだよ」という言葉が返ってきました。お金がかかるのも、面倒なのも、親の家を手放す気持ちの整理がつかないのも、よく分かります。気持ちは分かるからこそ、私もそれ以上は強く言えませんでした。

家財道具が見える家に、うわさがつき始めた

この家には、親御さんが使っていた家電や家財道具(残置物)が、たくさん残っていました。完全な空き家ではなくただ人が住んでいないだけ。窓からのぞけば生活の跡が見えてしまう状態です。

近所の人は事情を知っています。けれど、事情を知らない人が見たらどうでしょう。正直なところ、事情を知っている私が外から眺めても、「これは何かあったぞ」と思うほどの外観でした。

やがて、「あの家で事件や事故があったらしい」といううわさが、尾ひれをつけてネットなどで広がり始めました。そのような情報が集まるサイトなどにも載ってしまいましたが、もちろん事実ではありません。それでも、荒れた"趣のある"家の見た目が、うわさに信ぴょう性を与えてしまったのです。

夜になると人が来て、最後は警察沙汰に

怖いもの見たさの人が、夜に訪れるようになりました。そして少しずつ、窓が割られ、裏口から入られ、家は荒らされていきました。いずれもしてはいけないことです。

最後は、家の中で騒いでいた人たちを近所の方が通報し、警察が来る騒ぎになりました。

そこでようやく相談に来た大家さんは、こう漏らしました。

「ずっと気持ちの整理がつかなかったよ…」
「しかし、こんなことになるくらいなら、最初から話を聞いておけばよかった」

割れた窓ガラス、落書き、荒らされた室内。修繕では追いつかない状態で、最終的には家を解体し、更地にして売り出すことになりました。残置物が多かったこともあり、解体・撤去の費用は280万円ほどかかりました。

本来なら必要のなかった持ち出しです。もし、最初からゆくゆく解体するつもりであっても、管理ができていれば、ここまで荒れ果てた実家を見る必要はなかったかもしれません。

さらに、ネットには解体済みとなっても「過去に何かあったらしい」という、事実と異なる話が残ってしまいました。近所の方からもいい顔はされず、買い手も警戒する。売りにくさまで背負うことになったのです。

知っておきたい、空き家をめぐる3つのこと

空き家の放置は、気持ちの問題だけでなく、制度の面でも持ち主の負担になりやすくなっています。

1. 相続登記が義務になりました。
2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記(名義変更の手続き)をすることが義務になりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料(行政上の制裁金)の対象になることがあります。2024年4月より前に相続した不動産も対象で、2027年3月31日までに手続きが必要です。

2. 管理が不十分な空き家は、固定資産税が上がることがあります。
2023年に改正された空家等対策特別措置法により、そのまま放置すると「特定空家」(倒壊の危険などで、周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家)になるおそれのある空き家は、「管理不全空家」として、市区町村から指導を受けるようになりました。指導に従わず、勧告を受けると、住宅の敷地にかかる固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなり、税額が大きく上がることがあります。

3. 売却時の税の特例には、条件と期限があります。
相続した空き家を売るとき、一定の条件を満たすと、売って得た利益(譲渡所得)から最高3,000万円を控除できる特例があります。主な条件は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなどです。この特例を使える売却は、2027年12月31日までです(相続人が3人以上の場合の控除は、1人あたり2,000万円まで)。

ただし、この大家さんの場合は、相続から8年ほどがたっていて、期限をすでに過ぎていたため、この特例は使えない状況でした。放置を続けたままでも使える制度ではなく、期限があるからこそ早めに動くことが大切です。

いずれも、細かい条件は自治体や税務署、専門家に確認してください。

「管理されている空き家だ」と分からせる

空き家をどうするかは、できるだけ早く決めてください。売る、貸す、解体する、持ち続ける。どれを選ぶにしても、決めないまま過ぎた時間がいちばん高くつきます。

もちろん、固定資産税などの事情で、建物を残しておかなければならない方も多いと思います。だからこそ、面倒くさがらずに一度これからのことを見直してほしいのです。

そのまま置いておくなら、次のことをしてください。

  1. 管理会社に頼むか、ご自身で定期的に手入れをして人の気配を残す
  2. 草を刈る、郵便物を回収する、窓まわりを確かめる
  3. 家財道具が残っているなら、早めに整理を始める
  4. 自分だけで難しいときは、市区町村の空き家相談窓口に相談する

とにかく「あそこは管理されている空き家だ」と分かる状態にしておくことです。

心霊スポットにならなくても、知らない人が入り込んで住み着いてしまうこともあります。親の家をどうするかは、正解のないつらい決断です。それでも、定期的な見回りが、家とお金と、ご近所との関係を守ることにつながります。

参考:
空き家対策 特設サイト(国土交通省)
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
相続登記の申請義務化について(法務省)


ライター:ひろ宅建士ライター

賃貸仲介で15年、独立後は賃貸管理会社を経営して10年。通算25年にわたり、不動産の現場に携わる宅建士。仲介時代は店舗責任者として、部門全国1位の表彰を受けた。管理会社の経営者として、入居者対応、退去立ち会い、原状回復、空室・空き家の管理など、大家さんと入居者の双方の悩みに向き合ってきた。現場で見てきた「正論だけでは割り切れない場面」をふまえ、わかりやすく、現場に根ざした不動産情報を届けることがモットー。


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