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送った直後に後悔した。「俺を優先しろ」の前に消した、本当の一言

  • 2026.10.6
ハウコレ

画面の中で、彼女の頭がゆっくり落ちていきました。打ち込みかけていた言葉を全部消して、代わりに送ったのは、自分でも信じられない1行でした。

まかないの残りを保冷バッグに詰めながら、自分が送ったメッセージを何度も読み返していました。「仕事より俺を優先しろ」。閉店後の厨房で、この1行を書いた人間が自分だとは思いたくありませんでした。

消した文章と、残った1行

通話の前に、俺はひとつの文章を用意していました。「一緒に住まないか」。展示会が終わる頃に鍵を渡せるように、不動産屋の内見予約まで取ってあった。画面の彼女は、資料を片手にうなずきながら、途中から返事が短くなり、やがて頭がゆっくり落ちていきました。手に持ったままの資料。開いたままのパソコン。それを見て、用意した文章を打ち込みかけて、全部消しました。寝落ちしそうな相手に同棲の話をしても、聞こえない。代わりに残ったのが、あの1行です。送った直後、既読がつかないことに、正直ほっとしていました。

返事のない既読

目が覚めたらしい彼女から届いた返信は「今週は展示会の準備で無理。終わったらちゃんと話そう」。ちゃんと話そう、の一言が、俺には別れ話の予告に読めました。謝る文面を打っては消し、そのうち既読だけ残して閉じてしまいました。言い訳を書けば書くほど、優先しろと言った事実が濃くなる気がしたからです。できることは、店の仕込みの延長で、おにぎりを握ることだけ。「ドアノブに袋かけといた」とだけ送って、返事を見ないまま帰りの電車に乗りました。「ありがとう。でも今は本当に余裕がないの」。その文面を見たのは、翌日のまかないの時間です。

展示会が終わった日

届いたのは、片づけの済んだブースの写真が1枚。「お疲れさま」と返して、それ以上は書けませんでした。書きたいことは、あの通話の前から変わっていない。ただ、その順番を間違えたのは自分で、もう一度画面越しに言う気にはなれませんでした。厨房の端で、伝票の裏に下書きをしました。同棲の話は書かない。まず謝る。それから、本当に言いたかった言葉を、短く。何度か書き直して、最後に残ったのは3行だけ。それを保冷バッグの1番上にのせて、彼女の部屋の前まで走りました。

そして...

「俺を優先しろって言い方は間違えた。プライベートを優先しろって言いたかった。まずは寝て」。俺を優先しろ、は、俺のそばで休めという意味だった。それを最初からそう書けなかった弱さが、この1週間の全部です。「明日、店が終わったら会える?」の通知が出た瞬間、既読をつけるより先に通話ボタンを押していました。内見の予約は、まだキャンセルしていません。次は、寝落ちする前に言うつもりです。

(20代男性・調理師)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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