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男性どうしで出産・子育て 「本当に愛おしい」傷ついた経験があるからこそ、今思うこと

  • 2026.10.3

ぼくたちの家族の形

きみちゃんとちかさんは、男性どうしのふうふです。
法律上も結婚していて、自身で出産した子どもがいます。

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性のあり方には、4つの指標があります。
・性自認:自分の性のあり方を、自分でどう思うか
・性的指向:どんな性別の人を好きになるか
・性表現:どんなふるまいや服装をしたいか
・性的特徴:生まれたときに割り当てられた性

ちかさんは、性自認は男性で、性的指向も男性なので、ゲイにあたります。性表現は男性ですが、日によって女性よりの日もあるといいます。性的特徴は男性です。

きみちゃんは、性自認は男性。 性的指向は性別に捉われず「好きになった人が好き」と話しますが、男性寄りだと感じています。性表現も男性です。性的特徴は、女性として生まれました。トランスジェンダーです。

現在の日本では同性どうしでの結婚はできませんが、2人は戸籍上は男女で、法律婚をすることを選びました。
きみちゃんは、ちかさんとの子どもを産むために性別適合手術を見送りました。

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左がじゅったんを抱っこするちかさん、右がみぃくんを抱っこするちかさん

きみちゃんとちかさんの間には、2人の子どもがいます。
3歳のみぃくんと、去年2月に生まれたばかりの、じゅったんです。

2022年に始めたWEBマガジン「Sitakke」の連載「忘れないよ、ありがとう」では、2人が家族になっていく姿、そして社会の姿を見つめてきました。
今回は、「男性どうしでの子育て」について、2人がトークイベントで語った想いについてお伝えします。

初めて人前で語る決意

2026年9月27日。
札幌のまちなかでは、性の多様性の尊重や差別の解消など、全ての人が暮らしやすい社会を目指すイベント、「サッポロレインボープライド」が開かれました。

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札幌で初めてパレードが開催されたのは、1996年のこと。
当時の名前は「レズ・ビ・ゲイプライドマーチ」で今とは異なっていましたが、「あらゆる差別に『NO』」を訴えるこのイベントは、ことしで30周年を迎えました。

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虹色に輝くシャボン玉を一斉に空へと飛ばす、イベントのフィナーレ「バブルリリース」。
きみちゃんとちかさんの家族の姿もありました。

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パレードの前日、札幌駅近くで、「子どもを育てるゲイ・バイ男性たち ~僕たちはもう、ここにいる~」と題したトークイベントが開かれていました。
主催する「NPO法人にじいろかぞく」は、子育てをしている、あるいは、したいと思っているLGBTQカップルを中心に、つながりをつくりあう団体です。

2人はスピーカーとしてイベントに参加しました。ほかにも子育て中の男性どうしのカップル3組がスピーカーをつとめ、それぞれ自分たちが子どもを育てると決めた経緯や、これまでの経験などについて話します。

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ちかさんときみちゃんが、スピーカーとして人前に立つのは初めてのことです。

会場には、当事者や支援者など約30人が集まりました。

男性として妊娠・出産する葛藤

きみちゃんは、性同一性障害との診断を受け、一度は性別適合手術を受けようと決めていました。
戸籍の性別を変えるため、子宮と卵巣もとる予定でしたが、ちかさんと出会い、考えが変わりました。

「子宮と卵巣をとってしまったら、2人の血のつながった子どもをもつ可能性はゼロになる」

戸籍は女性のまま、ちかさんと法律婚をして、自分たちの子どもを産む道を選びました。

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5年前、きみちゃんのおなかには、ちかさんとの間に初めての命が宿っていました。

性自認が男性であるきみちゃんにとって、妊娠・出産をすることには、大きな葛藤もありました。妊娠・出産は、体が女性であることを突きつけられるような経験でもあります。
助産師から「下から生むのはどう?」と聞かれたときは、俯きながらなかなか答えが出せないでいました。激しい葛藤に苛まれていました。

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それでも、深い愛情を持って、子どもに会える日を心待ちにしていました。
「希望にあふれた子に育ち、人を希望に導けるようになってほしい」という想いをこめ、名前は「羅希(らき)」と決めていました。

しかし、2021年12月28日。
きみちゃんはちかさんが立ち会う中で、羅希ちゃんを死産しました。

その前の日の検診で、羅希ちゃんの心臓が止まっていることがわかったのです。担当の医師によると、死産は1%ほどの確率で起こる決して珍しくないことで、原因がわからないことが多いといいます。

きみちゃんは、羅希ちゃんに手紙を書いていました。

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「羅希へ
ぼくたちの間にきてくれてありがとう。うまれてくるのをたくさんの人たちとともにまっていたんだよ。また天国で会おうね。大切で大好きな羅希ちゃん!忘れないよ!!ありがとう!!」

初めての妊娠・出産にあたって、2人を苦しめていたのは心の中の葛藤だけではありません。
インターネット上で、「ただの変態カップル」「申し訳ないけど気持ち悪い」など、心ない言葉を浴びました。それでもきみちゃんは、こう話していました。

「世間から、父親と母親っていう概念がどうとか、子どもがいじめられるとか、かわいそうって言われてた。そんなことない、そんなことさせない、そうじゃないっていうところを、ちかさんと見せていきたいと思っていた」

「いまがとても幸せ」と言えるまで

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2023年1月、きみちゃんは、みぃくんを出産しました。
そのとき2人は、みぃくんを「ぼくたちの2人目の子ども」と紹介していました。

そして去年2月には、じゅったんを出産しました。

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じゅったんの出産から4か月後の取材で、きみちゃんは「いまがとても幸せ」と話していました。

心ない批判に傷つき、大切な家族を失い、悲しみに暮れていた日々。それでも2人は、羅希ちゃんへの想いを胸に、自分たちらしい家族の形を大切に、毎日を過ごしてきました。

男性が子育てしづらい社会

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記者に甘える、みぃくん

ことし9月26日。人懐っこいみぃくんは、取材班にも「抱っこしてー」と甘えます。撮影用の大きなカメラや、壁についた内線電話など、目につくものに興味津々。「これは何?」「どうしてキラキラしているの?」など、次々と質問します。

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イベントの前半は、4組の家族が自分たちの経験を話しました。

ちかさんは、これまでの報道を見た視聴者から寄せられた一部のコメントに、傷ついた経験を話しました。
「『2人の間に生まれてこなくてよかった』という意見もあって、でも『幸せにしてあげたい』と、より思うようになりました。今はどちらも元気に育ってくれて、難しいこともあるけれど、家族で仲良く暮らしています」

また、おむつの交換台が男性用トイレにはない施設がまだあることなど、男性が子育てしやすい社会インフラが整っていないことについて問題提起しました。

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きみちゃんは、自分たちについて周囲に知ってもらうための工夫について話しました。

みぃくんとじゅったんは、2人のことを、「ママ」「パパ」ではなく「ちか」「きみ」と、性別に捉われない方法で呼びます。
保育園の職員らに対しても、2人は「私たちは名前で呼び合っていて、男性どうしとして生活しています」と伝えたといいます。

「保育園も保護者も、自然に接してくれています。子どもたちには『男性どうしの両親』の家族を取り上げた絵本を読ませたり、年齢に合った理解ができるように伝えています。彼らなりに理解をしてくれていると思います。小学校、中学校と上がるにつれた不安もあるけれど、ジェンダーの固定概念に捉われずに育ってほしいと思います」

覚悟すべきことは

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イベントの後半は、他の家族と一緒に前に並んでトークセッションが行われました。みぃくんもじゅったんも一緒に前に座りましたが、見慣れないマイクに興味津々。元気いっぱいな姿に、参加者は笑顔で包まれました。

「実子を迎えるにあたって、覚悟すべきことは何か」という会場からの質問には、きみちゃんが答えました。

「ゲイカップルとして生活しているけれど、実子を迎えるとなると私自身が妊娠をしなくてはならない。その経験に耐えうる気持ちが自分の中にあるか、を考えていました。生まれてからは予想していたよりもしんどい気持ちになることは少なくて、本当に愛おしく思っています」

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きみちゃんの表情はとても柔らかで、充実感にあふれているように見えました。

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ちかさんは当初から、取材を受ける理由について、「自分たちを知ることで当事者を勇気づけたい」と話してくれていました。今回のイベントの終了後には、「どんな人たちも家族になれることを伝えたかったし、男性どうしとして子どもを育てる上で難しいことについて声を上げたかったから、伝える機会になって良かった」と振り返りました。

きみちゃんは、「思ったより緊張せずに話せた」と安堵の表情。「同じ悩みを持っている人に、「自分と同じ苦労がある人がいたんだ」とわかってもらったり、自分たちなりの家族のカタチを伝えられたと思う」と話してくれました。

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今回のイベントには、「子どもを生み育てたい」という思いを共有する女性カップル(レズビアンなど)と協力する「コレボレーションファミリー」というカタチをとるカップルや、養育里親制度を使って2人の子どもを育てているカップルが参加していました。

2人と同じように、「子どもがかわいそうだから」という理由で周囲から子どもを持つことを反対された経験や、子どもが生まれてからは想像していたよりも親や保育士などが応援してくれることなどを話していました。

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この社会の中で、同性どうしのカップルがいることや、多様な性のあり方があることなどには、少しずつ認識は広がっていると思います。でも、まだどこか「自分の家族や身近にはいない」と他人事のように思ってしまっている人も少なくないのではないでしょうか。

子育てをめぐっては、まだまだ批判の声も多くあります。今回参加したカップルも「子どもたちが生きやすい社会にするにはどうしたらいいか」という意見よりも、「苦労するからやめたほうがいい」という意見を投げかけられる機会が多いと話していて、インターネット上でもそうした意見が目に入ります。

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「家族をつくりたい」「自分たちの子どもを育てたい」という思いは、どんな人も抱きうるもので、一方的に他の誰かによって抑え込まれてはいけないもの。
ちかさんときみちゃん、みぃくんとじゅったんの姿が、私たちに問いかけています。

2人の結婚前から、初めての妊娠・出産、そして家族の姿を追った取材は、連載「忘れないよ、ありがとう」でくわしくお伝えしています。

文:HBC・泉優紀子
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2026年9月)の情報に基づきます

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