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「今日ってヒーローショーの日?」ホテルで見かけたヒーロー姿の人。だが、フロントで知った事実とは

  • 2026.10.2

駐車場を横切った赤いマント

学生時代からの友達と2人で、車で一泊の旅行に出かけたときのことです。

昼すぎにホテルの駐車場へ車を止め、荷物を下ろしていると、目の前をさっと影が横切りました。

顔を上げると、特撮ヒーローがマントをひるがえして歩いていました。

つやのある仮面に、光りそうなベルト、ブーツの金具まで、子どものころテレビで見たとおりのでき栄えです。

ヒーローはそのまま、ホテルの自動ドアの向こうへ消えていきました。

「今日ってヒーローショーの日?」

「絶対そうだ。子ども向けのイベントがあるんだよ」

友達は、もう写真を撮る気まんまんでした。

僕も、あれだけ本格的なら出演者の人に違いないと思いました。

「ショーが始まる前に見に行こうぜ」

「チェックインしたら、まずロビーの案内を見よう。何時からか書いてあるはずだ」

2人とも、少年のような足どりでフロントへ向かいました。

ロビーで見たヒーローの背中

ロビーに入った瞬間、僕たちは立ち止まりました。

さっきのヒーローが、フロントの前でホテルマン3人に囲まれていたのです。

真ん中のホテルマンが、丁寧に頭を下げていました。

「お客様、恐れ入りますが、チェックインはふだんのお洋服にお着替えいただいてからでお願いできますでしょうか」

ヒーローは、宿泊客でした。

「…はい」

仮面の奥から、思ったより小さな声が聞こえました。

仮面をかぶったままでも、肩がしゅんと下がっているのがよく分かります。ヒーローは小さくうなずき、マントを引きずるようにして駐車場へ戻っていきました。

「イベント、なかったな」

「ロビーの案内、見るまでもなかったな」

僕たちは顔を見合わせ、口を押さえて笑いをこらえました。

受付の人は、何事もなかったような笑顔で僕たちの名前を確認してくれました。

それから30分後、部屋へ上がろうとエレベーターに乗ると、ふだん着の男性が大きなバッグを抱えて乗ってきました。

バッグのすき間から、見覚えのある赤いマントの端がのぞいていました。男性は僕たちに気づくと、照れくさそうに小さく会釈しました。

ドアが閉まったあと、友達が小声で言いました。

「あのクオリティ、ショーに出られるよ」

その旅行のあいだ、僕たちは何度もあの背中を思い出しては笑いました。しょんぼりしたヒーローは、ちょっとかわいかったのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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