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朝ドラで“医師役”→本物の医師と結婚…16年前、交際“約3か月”でプロポーズを受けた【元朝ドラヒロイン】

  • 2026.10.29
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2010年10月、明治神宮で挙式した戸田菜穂(C)SANKEI

16年前の2010年10月17日、東京・原宿の明治神宮。同い年の医師と婚姻届を提出したばかりの戸田菜穂は、白無垢姿で男性とともに姿を現した。神妙な面持ちだったが、居合わせた観光客から祝福されると、表情がやわらかなほほ笑みに変わった。

そして同じ日曜日の夜、WOWOWでは連続ドラマW『マークスの山』の第1話が幕を開けていた。マークスと名乗る青年の恋人を演じ、撮影を終えても役が体から離れていかないと戸田自身が語っていた作品である。

人生の新たな門出を迎えた日と、思い入れの強い役が世に出た日。そのふたつが、まさに同じ一日に重なっていた。当時36歳の戸田は、私生活の幸福と女優としての挑戦のどちらか一方を選ぶのではなく、両方を大切に抱きしめていたように見える。あの年の彼女の足跡を、あらためて振り返ってみたい。

初主演作の原作者も出席した披露宴

挙式の後、都内のホテルで開かれた披露宴には150人が出席した。その中には、作家・林真理子の姿もあった。

戸田は高校2年生だった1990年、ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを獲得して芸能界に入った。翌1991年にフジテレビで放送された初主演ドラマ『葡萄が目にしみる』の原作者こそが、林だった。

戸田はその2年後の1993年、NHK連続テレビ小説『ええにょぼ』でヒロインに抜擢される。この朝ドラが彼女の出世作となった。そして奇しくも、このときに演じた役は医師だった。

直筆メッセージにつづった「胸ふくらむ思い」

結婚へと至る報せが届いたのは、2010年の3月のことだった。戸田は、2月28日に都内の病院に勤務する医師と結納を交わしたことを、所属事務所を通じて発表した。マスコミ各社には、自筆の文章を送っている。

そこにつづられていたのは、これからは二人で人生を歩んでいくのだという思いだった。戸田はその思いを「春めいたような、未来に胸ふくらむ思い」と表した。その一節からは、静かな喜びに満ちた息づかいが伝わってくる。

出会いは前年の夏、共通の知人宅で開かれた食事会だった。9月に交際がスタートし、クリスマスイブにはプロポーズを受けるというトントン拍子の展開。かつて朝ドラのヒロインとして演じた医師と同じ職業の男性を、生涯の伴侶として選んだ巡り合わせには、ドラマのような縁を感じる。

怒涛の映画4本と濃い恋人役

婚約を発表した当時の戸田は、多忙を極める日々のただ中にいた。

春には日本テレビの松本清張ドラマ『霧の旗』で、市川海老蔵(現・市川團十郎)の不倫相手の役を演じた。4月公開の『ダーリンは外国人』を皮切りに、『春との旅』『必死剣 鳥刺し』など、実に4本もの出演映画が立て続けに公開を迎えた。

そんな怒涛の1年を象徴していたのが、夏に制作発表が行われた『マークスの山』だった。高良健吾が演じるマークスの恋人役を務めた戸田。制作発表会見で高良は、戸田が病院のベッドに横たわっているときは本当にきつかったと振り返った。戸田は、撮影が終わった後も役が体から離れていかないほど濃い役だったと話し、「女優冥利に尽きます」としみじみと語った。

しかし、彼女の魅力はシリアスな演技にとどまらない。同じ夏には、アニメ『最強武将伝 三国演義』で“絶世の美女”と呼ばれた小喬の声を担当。この仕事を機に初めて『三国志』を読むとすっかりはまり、好きな武将を聞かれると、歯切れよく孔明の名を挙げた。さらに結婚式を迎えた10月には、俳人の大高翔との共著『恋俳句レッスン 俳句は恋を育てる』を上梓している。

花嫁になるその月に、恋の俳句の本を世に送り出していた。映画、ドラマ、声優、そして書籍。好奇心とバイタリティにあふれた、実に鮮烈な1年だったと思う。

母になって演じる母親の役

結婚から1年足らずの2011年夏には第一子の妊娠を発表し、2012年に長女、2014年に次女を出産。二児の母となった。

母としての素顔が垣間見えたのは、2015年のNHKドラマ『ランチのアッコちゃん』の完成試写会でのことだ。思い出の弁当を尋ねられた戸田が挙げたのは、小学校の運動会で父が焼いてくれたお肉のお弁当を、家族みんなで食べた思い出だった。そのころの戸田は、これから娘のお弁当作りが始まるので、かわいいグッズやお弁当箱を買って楽しんでいるところだった。

そして今、戸田はスクリーンの中で母親の顔を見せている。

2026年10月9日には、谷口ジローの漫画を原作にした映画『遥かな町へ』が公開された。48歳の主人公が14歳の身体に戻り、故郷の家族と向き合う物語で、戸田は若き日の主人公の母を演じた。公開決定に寄せたコメントには、「運命など考える余地もなく必死に生きた女性が確かにいた」という言葉がある。戸田はそのことだけを大切に、この母を演じた。

さらに2026年11月20日公開予定の映画『ないものねだりの君に光の花束を』でも、主人公の成長を見守る母を演じる。自身が演じた母親について、大人だけれど娘から教わることもあったとコメントし、「人生、いつまでも成長は続きます」と言葉を添えた。

かつて結納の春に、未来に胸ふくらむ思いを自筆でつづった女性は、母となった今、演じた母親の役に寄せて、成長はまだ続くと書いている。あの日、明治神宮で観光客の祝福にほほ笑んだ花嫁の視線は、今もしなやかに前を向いていると思う。


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