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動員“65万人”なのに赤字…【モンスターバンド】狂乱の1999年、公式が答えた“ハエでも揚げ物でもない”曲名

  • 2026.10.26
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1999年8月、東京ビッグサイトで行われたL'Arc〜en〜Cielのライブより(C)SANKEI

2枚のアルバムを同じ日に店頭へ並べる。世紀末を控えた1999年、L'Arc〜en〜Cielはこの一手を打った。7月に同時発売された『ark』と『ray』だ。この年の彼らは怒濤の勢いでシングルを連発し、作品を重ねるごとに熱量を増していった。

そんな狂乱の1999年の秋、新たなシングルが加わる。英語のタイトルを目にして、一瞬首をかしげた人も多かったはずだ。だが、その小さな引っかかりこそが、この曲への最高に楽しい入り口だった。

L'Arc〜en〜Ciel『LOVE FLIES』(作詞:hyde/作曲:ken)ーー1999年10月27日発売

「ハエ」でも「揚げ物」でもない愛の行き先

直訳しようとすると少し迷うタイトルだ。「フライ」と聞けば揚げ物が浮かぶし、辞書を引けば虫の「ハエ」という意味もある。

だが、その疑問に公式は実に粋な答えを用意していた。特設サイトで、揚げ物でもなければハエでもなく、愛があなたのもとへ翔ばたいていくという意味だと、茶目っ気たっぷりに明かしたのだ。

ここで描かれる愛の向きは明確だ。遠い空へ消えるのではなく、寄り道せずにこちらへ飛んでくる。聴き手は最初から、愛を受け取る側に立っている。

曲の佇まいも、その言葉によく似ている。エッジの効いたロックの推進力で疾走しながら、奥にはken特有の哀愁あるメロディが息づき、胸の内側へ深く染み込んでくる。勢いよく近づいてきて、気づけば手のひらに収まっている。そんな鮮やかな届き方をするナンバーだ。

空き地を均した熱狂の先に

この秋のシングルへ辿り着くまでに、バンドは破格の挑戦を越えていた。『ark』『ray』を引っ提げた「1999 GRAND CROSS TOUR」は、彼らにとって初となる全公演野外ツアーだった。

全国6か所12公演で動員65万人。駐車場や空き地を地ならしして特設会場を仕立てる大がかりな手法により、収支は赤字になった。その豪快な決断に、この年の熱気が最も濃く表れている。

その大舞台を越えた4人が差し出したのが『LOVE FLIES』だ。『HEAVEN'S DRIVE』『Pieces』『Driver's High』に続く1999年4作目のシングルで、走り続けた年の息づかいが伝わってくる。

1枚の中にメンバーそれぞれの顔が見えるのも面白い。hyde作詞・ken作曲の表題曲が王道のバンドサウンドを鳴らす一方、カップリングにはyukihiroが『ark』収録の『真実と幻想と』を解体・再構築した『真実と幻想と -out of the reality mix-』が並ぶ。表でバンドの顔を見せ、裏では骨組みごと遊んでみせる。メガツアーを越えたバンドならではのタフさと余裕がのぞく。

屋上で受け止める窓からのハート

この曲はテレビを通じてファンの外側へも広がった。テレビ朝日系ドラマ『青い鳥症候群』の主題歌に起用され、キヤノン『Wonder BJ』のCMソングとしてもオンエア。ドラマとCMの双方でお茶の間に鳴り響いた。

そして当時の公式Webサイトが用意したのが「LOVE FLIES GAME」だった。屋上の女の子を動かし、窓から顔を出すメンバーが投げてくるハートを受け止める。ドクロマークのハートを掴むと10点減点される仕掛けだ。

タイトルに込めた「翔んでくる愛」が、ここでは指先で遊べる形になっている。飛んでくる愛を受け止め、うっかりドクロに慌てる。そんな意地悪な遊び心まで含めて、なんとも気が利いている。

空き地を均して65万人の前に立ったモンスターバンドが、画面の向こうからたった1人のためにハートを投げてくれる。どれほどスケールが大きくなっても、1人ひとりとの距離をひょいと縮めてみせる。そのユーモアと真摯さの同居にこそ、この曲を今も愛おしく聴き返したくなる理由がある。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

(文・目黒権之助)

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