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広末涼子のデビュー曲を手がけた【伝説の歌姫】の空白“9年”の間に生まれた一曲とは?

  • 2026.11.1
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2015年5月、第6回岩谷時子賞の授賞式に出席した竹内まりや(C)SANKEI

大切な人との別れを、泣き崩れるより、黙って胸の奥へしまっておきたい夜がある。励ましの言葉も、思い出をにぎやかに語り合う歌も、今の心には少し眩しすぎる。そんな気分のときにそっと手を伸ばしたいのが、この1曲だ。

竹内まりや『天使のため息』(作詞・作曲:竹内まりや)ーー1999年9月22日発売

竹内まりやといえば明るいヒット曲が真っ先に浮かぶ人もいるかもしれない。だが、その華やかな並びから少し離れた場所で、静かに大切にされてきたのがこのバラードだ。悲しみを大声で歌い上げず、穏やかな語り口のまま受け止めていく。聴く人はその淡さに、それぞれ自分の別れを重ねてきた。

無理に元気を出さなくていい日に、そっと再生してみてほしい。

嘆きの代わりにこぼれるひと呼吸

詞の語り手は、もう会えなくなった相手に向かって静かに歌いかける。前半は、二人で過ごした時間を春から冬へ、季節を順にたどりながら振り返っていく。

思い出を一度にあふれさせるのではなく、ひとつの季節を見届けてから次へ進む。その歩幅のゆるやかさが、聴き手の気持ちまで落ち着かせていく。

中盤に入ると、出会いも別れも最初から決まっていたのだという受け止めへ移り、永遠と信じた愛でさえ失われることがあるのかと問いかける。二人の思い出から大きな時間の流れへと視線が移り、個人の悲しみが普遍的な別れの物語へと静かに広がっていく。

終盤では、思い出が美しく姿を変えていくことや命の有限性が歌われ、結びに近いところで、題名につながる「天使のようなため息」という言葉が現れる。

別れの重さを嘆きで締めくくらず、「ため息」という小さな息にあずける。重いものを重いまま差し出さない手つきに、この詞の深い慈しみが宿る。

歌声もまた、この運びに寄り添う。声を震わせて泣かせにかかることはせず、言葉をひとつずつ手渡すように歌っていく。悲しみを押しつけない抑制された佇まいが、聴く人の胸に静かな余白を残す。

最初の一曲を手渡した相手の主演作で歌う

『天使のため息』は、映画『秘密』の主題歌になった。監督は滝田洋二郎、原作は東野圭吾、主演は広末涼子と小林薫が務めた。店頭のシングル盤と劇場の歌声は、ほぼ同じ週に届いたことになる。

広末涼子と竹内まりやの縁は、この2年前にさかのぼる。1997年、広末の鮮烈なデビュー曲『MajiでKoiする5秒前』を書いたのが竹内だった。

歌い手としての始まりを竹内に支えられた広末が、2年後には主演としてスクリーンの真ん中に立つ。その作品に、今度は竹内自身の歌声が添えられた。

広末はこの『秘密』で第23回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞。縁はその後も続き、2021年には竹内が書いた『キミの笑顔』を広末がNHK『みんなのうた』で歌った。20年以上にわたる二人の行き来の途中に、このバラードが大切な一点として置かれている。

アルバムより先に届いた別れの歌

竹内まりやのオリジナル・アルバムは、1992年の『Quiet Life』のあと、2001年の『Bon Appetit!』まで9年のあいだが空いた。『天使のため息』は、その空白の時期に1枚のシングルとして世に出た曲だ。

初めてアルバムに収められたのは2年後、空白を破った『Bon Appetit!』の14曲目。のちに2008年のベスト盤『Expressions』にも収録された。アルバムという帰る場所を持たないまま歩き出した曲は、『Bon Appetit!』でようやく自分の席を見つけ出した。

別れを急がずに受け止める歌が、自らの居場所へも急がずにたどり着いた。そのゆっくりとした歩みまで、どこまでもこの曲らしく映る。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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